僕はまだ料理人ではないけれど異世界でお食事処を開きます。

佐間瀬 友

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32話 怪しい光②

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夕飯の片付けが終わって夜が更けるのを待つと僕は片手鍋を手に裏口に向かった。
「落とさないでくれよ~?」
人型を取ったカネルが僕が持つ鍋のふちに手を掛けて覗いている。
鍋の中にコンロに敷いてあった灰を入れてカネルを連れて来たのだ。

少なくともひとりよりは心強い。僕はそろそろと裏口の扉を開けると家の外壁に沿って進んだ。いつもこの辺りで一番遅くまで明かりがついているのはバルトさんの宿だけど、さっき窓の明かりが消えたのが見えた。周りを見渡しても街灯があるわけでもない集落は真っ暗だ。

カネルの小さな明かりで足元を照らして少しずつ進む。エマのお母さんが怪しい明りを見たというのはこの家の裏庭だと言っていた。

裏庭にはつい先日、大根の種を蒔いた小さな家庭菜園があるくらいなのだが。

「あ!」
辺りは空に星明かりがあるだけだったのだが、確かに大根の種を蒔いた辺り一帯がボヤ~と光っている。
「うぇっ!何だよあれ?」
カネルが鍋から小さな頭だけびくびくした声を上げた。
「蛍?」
ほのかに幾つもの光が浮かび上がっている。こんな光は僕の知識の中では蛍くらいしか出てこない。
「なにそれ?」
「いや、僕の国にいるお尻が光る虫なんだけど...。」
でも、虫ならもう少し動きがあってもおかしくないか?
「お尻が光る虫~?なんだよそれ。俺は聞いたことないぞ、そんなの。」
「う~ん、違うのかな?ちょっと、近くまで行ってみようか。」
正直、怖かったけど火の玉のように飛び交う訳でもなく地面が光っているだけのようだ。
「え~、何か気味悪くないか?変な虫だったら俺やだよぉ。」
「そお?虫ぐらいなら僕は大丈夫だけど。」
悪霊とか悪い精霊とかよりは全然ましだ。

カネルは嫌がるけど鍋を持っているのは僕だ。それに、さすがにカネルの明かりがないと足元も見えやしない。鍋片手にそろそろと土を盛ったところまで近づいていく。
明かりは畑全体に散らばっていてピクリとも動く気配はない。

僕は近づくと明かりのひとつに鍋を近づけた。
「?」なんだ?
「貝?」そのひとつを拾うとカネルの前に持ってくる。釣りに行った時に川の砂地で取ってきたアサリに似た貝の貝殻だった。その貝殻が光っていた。
「かい?」鍋に潜り込んでいたカネルが顔を出す。今までぼんやり光っていた貝殻が光らない普通の貝殻になる。
「あれ?光らなくなった。」
不思議に思ってその貝を足元に放り他の明かりを拾おうとしたが、ポイっと放ったとたんまたぼんやり光りだした。
どうやら、暗い中でしか光らないらしい。カネルに近づけるとカネルの明るさの方が勝って光らなくなったようだ。
「なんで、貝が裏庭にあるんだ?」
明かりの正体が分かってほっとしたカネルがいつもの元気を取り戻して聞いて来る。
「貝をパスタに入れて食べた後、貝殻だけ畑に蒔いたんだよ。肥料になるかと思って。」
「そうなのか。貝って光るのか?」
「さあ?聞いたことないけど。」
確かに光っている。畑に蒔いた貝殻がひとつひとつぼんやりと光っていてちょっと幻想的な感じになっていた。
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