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第二章
王宮への馬車にて
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その日は王妃様から呼ばれて王宮に行くことになっていた。。
朝、庭師見習いのジェラトーニがシエルの出勤の時間に合わせて馬車をポーチに横付けにしてくれていた。ジェラトーニの父親は我が家の庭師で、貴族の屋敷の中では比較的小振りな我が家の建物に対してやたら広い庭を完璧に手入れしてくれる庭師だ。息子のジェラトーニは本当は庭師見習いとして父親の仕事を手伝うところなのだけど、父親がまだまだ元気なので、屋敷の侍女達から色々な用事を頼まれて便利屋と化している。馭者の役目もその一つで門番兼護衛のハインツと交互で担当している。
その門番兼、護衛兼、御者のハインツが私に手を貸してくれて馬車に乗り込むと、何故かシエルの部下であるリカルドが既に馬車に乗っていた。
?変だわ。今日は魔法省からの迎えの馬車ではなく、我が家の馬車に乗ったはずだけど。と言うのも、以前リカルドが魔法省所有の馬車でシエルを迎えに来たことがあったからそう思ったのだけど。
「リリアナ、おはよう!」
リカルドがいつもの爽やかな笑顔で挨拶をくれる。
「おはよう、リカルド。でもなぜここに居るの?」
リカルドの向かいに腰かけると疑問を口にした。
シエルに朝から用事だったのかしら?だとしても、どうして馬車に乗っているのかしら。
「それは、もちろんリリアナに逢いたかったからに決まっているよ!」
本当に......。リカルドは笑顔で適当なことを言うのにかけては天下一品だわ。
「リカルド、私にはそんな白々しい挨拶はしなくて良いのよ?そういった言葉はリカルド憧れているお嬢様方に言ってあげれば良いのよ?」
実際、私も社交界にデビューして知ったのだが、明るくて優しくてハンサムで将来有望、しかも貴族出身の魔法使いであるリカルドは女性にかなり人気がある。
シエルがその美貌と魔力で、老若男女全方向に尊敬と憧れとそして恐れを持って迎えられるのに対して、魔法省で一番の若手でシエルの一番の部下であるリカルドは本気で結婚を望む女性達から人気らしい。
ちなみにこれは家令のパトリックからの情報だ。
「本当に心の底からそう思っているのにリリアナはどうして信じてくれないんだろう?僕は悲しいよ。」
リカルドは全く悲しくなさそうな笑顔でそう言った。
それはきっと、そう言うセリフを爽やかな笑顔で吐くからじゃないかしら?
「なぜお前がここに居る?」
私とリカルドがいつもの掛け合いのようなやり取りをしていると、遅れてやって来たシエルが馬車に乗り込み私の横に座ると凍えるような表情と声で言った。
きっと舞踏会で遠くからシエルを見て憧れている令嬢達がシエルのこの表情を見たら泣いてしまうかもしれない。それとも、こんなクールな表情も素敵となるのかしら?
少なくともいつも一緒に仕事をしていて慣れているリカルドには全く効き目は無かったようで、私に言ったようにあっけらかんと答える。
「もちろん、リリアナに逢いたかったからに決まってますよ!」
「今すぐこの馬車から降りろ...。」
シエルの口から地を這うような声が響く。
「もう、動いているから無理ですよ~。」
確かに、シエルの指示がないのに馬車は動き出していた。
「お忙しい大魔法使い様の為に、ジェラトーニに直ぐ出発するように伝えておきましたから。」
リカルドはまるでどうぞ誉めてくださいとでも言うように胸を張る。
なるほど、シエルが馬車に乗ったらきっと降りるように言われると思って、ジェラトーニにすぐに馬車を出すように手を回しておいたのね。さすがリカルド!ずる賢いわ!
「リリアナ、最後のところ声に出ているからね?」
リカルドが笑顔で言う。
「あら、ごめんなさい。リカルドの手際につい感心してしまって。」
「いや~実は昨日、街で飲み過ぎて起きたらこの近くの友人の家だったんですよ。朝帰りすると親が煩いのでさっきまでここで仮眠を取りつつ大魔法使い様が出勤するのを待っていたんですが、リリアナとも会えてラッキーですね!」
仮眠まで取っていたとは。リカルドってば、シエルを怒らせる天才だわ!
案の定、隣のシエルを見ると額に青筋が立って今にもリカルドを怒鳴り付けそうだった。
「そ、そう。私は王妃様に呼ばれて、シエルに一緒に馬車に乗せてもらったの。ねえ?シエル?」
仕方ないいつもリカルドにはシエルがお世話になっているし、ここは私がシエルのご機嫌を取ることにしよう。さりげなくシエルの腕に手を添えて笑顔でシエルの顔を覗き込んだ。
シエルは少し驚いたように私を見たけど、額の青筋は消えていつもの無表情に戻った。
「別に王妃の暇潰しにいつも付き合う必要はないと私は思うがね。旅行の準備で忙しいのに。」
王妃様への不満の言葉はいつもの通りだけど、とりあえず怒りは収まったようだ。
「でも、私は忙しくないのよ?マリー達が張り切って全部やってくれているから。」
実際、旅行の準備で私のやることといえば衣裳の試着くらいなのだから。
「旅行の出発、あと数日ですね。」
「ええ、楽しみだわ。リカルドにもお土産を買ってくるわね。何が良いかしら?」
「リリアナが選んでくれたものなら何でも嬉しいですよ!」
「…リカルド。」
だから、そう言うことは。
私は思わず小さくため息をついた。
朝、庭師見習いのジェラトーニがシエルの出勤の時間に合わせて馬車をポーチに横付けにしてくれていた。ジェラトーニの父親は我が家の庭師で、貴族の屋敷の中では比較的小振りな我が家の建物に対してやたら広い庭を完璧に手入れしてくれる庭師だ。息子のジェラトーニは本当は庭師見習いとして父親の仕事を手伝うところなのだけど、父親がまだまだ元気なので、屋敷の侍女達から色々な用事を頼まれて便利屋と化している。馭者の役目もその一つで門番兼護衛のハインツと交互で担当している。
その門番兼、護衛兼、御者のハインツが私に手を貸してくれて馬車に乗り込むと、何故かシエルの部下であるリカルドが既に馬車に乗っていた。
?変だわ。今日は魔法省からの迎えの馬車ではなく、我が家の馬車に乗ったはずだけど。と言うのも、以前リカルドが魔法省所有の馬車でシエルを迎えに来たことがあったからそう思ったのだけど。
「リリアナ、おはよう!」
リカルドがいつもの爽やかな笑顔で挨拶をくれる。
「おはよう、リカルド。でもなぜここに居るの?」
リカルドの向かいに腰かけると疑問を口にした。
シエルに朝から用事だったのかしら?だとしても、どうして馬車に乗っているのかしら。
「それは、もちろんリリアナに逢いたかったからに決まっているよ!」
本当に......。リカルドは笑顔で適当なことを言うのにかけては天下一品だわ。
「リカルド、私にはそんな白々しい挨拶はしなくて良いのよ?そういった言葉はリカルド憧れているお嬢様方に言ってあげれば良いのよ?」
実際、私も社交界にデビューして知ったのだが、明るくて優しくてハンサムで将来有望、しかも貴族出身の魔法使いであるリカルドは女性にかなり人気がある。
シエルがその美貌と魔力で、老若男女全方向に尊敬と憧れとそして恐れを持って迎えられるのに対して、魔法省で一番の若手でシエルの一番の部下であるリカルドは本気で結婚を望む女性達から人気らしい。
ちなみにこれは家令のパトリックからの情報だ。
「本当に心の底からそう思っているのにリリアナはどうして信じてくれないんだろう?僕は悲しいよ。」
リカルドは全く悲しくなさそうな笑顔でそう言った。
それはきっと、そう言うセリフを爽やかな笑顔で吐くからじゃないかしら?
「なぜお前がここに居る?」
私とリカルドがいつもの掛け合いのようなやり取りをしていると、遅れてやって来たシエルが馬車に乗り込み私の横に座ると凍えるような表情と声で言った。
きっと舞踏会で遠くからシエルを見て憧れている令嬢達がシエルのこの表情を見たら泣いてしまうかもしれない。それとも、こんなクールな表情も素敵となるのかしら?
少なくともいつも一緒に仕事をしていて慣れているリカルドには全く効き目は無かったようで、私に言ったようにあっけらかんと答える。
「もちろん、リリアナに逢いたかったからに決まってますよ!」
「今すぐこの馬車から降りろ...。」
シエルの口から地を這うような声が響く。
「もう、動いているから無理ですよ~。」
確かに、シエルの指示がないのに馬車は動き出していた。
「お忙しい大魔法使い様の為に、ジェラトーニに直ぐ出発するように伝えておきましたから。」
リカルドはまるでどうぞ誉めてくださいとでも言うように胸を張る。
なるほど、シエルが馬車に乗ったらきっと降りるように言われると思って、ジェラトーニにすぐに馬車を出すように手を回しておいたのね。さすがリカルド!ずる賢いわ!
「リリアナ、最後のところ声に出ているからね?」
リカルドが笑顔で言う。
「あら、ごめんなさい。リカルドの手際につい感心してしまって。」
「いや~実は昨日、街で飲み過ぎて起きたらこの近くの友人の家だったんですよ。朝帰りすると親が煩いのでさっきまでここで仮眠を取りつつ大魔法使い様が出勤するのを待っていたんですが、リリアナとも会えてラッキーですね!」
仮眠まで取っていたとは。リカルドってば、シエルを怒らせる天才だわ!
案の定、隣のシエルを見ると額に青筋が立って今にもリカルドを怒鳴り付けそうだった。
「そ、そう。私は王妃様に呼ばれて、シエルに一緒に馬車に乗せてもらったの。ねえ?シエル?」
仕方ないいつもリカルドにはシエルがお世話になっているし、ここは私がシエルのご機嫌を取ることにしよう。さりげなくシエルの腕に手を添えて笑顔でシエルの顔を覗き込んだ。
シエルは少し驚いたように私を見たけど、額の青筋は消えていつもの無表情に戻った。
「別に王妃の暇潰しにいつも付き合う必要はないと私は思うがね。旅行の準備で忙しいのに。」
王妃様への不満の言葉はいつもの通りだけど、とりあえず怒りは収まったようだ。
「でも、私は忙しくないのよ?マリー達が張り切って全部やってくれているから。」
実際、旅行の準備で私のやることといえば衣裳の試着くらいなのだから。
「旅行の出発、あと数日ですね。」
「ええ、楽しみだわ。リカルドにもお土産を買ってくるわね。何が良いかしら?」
「リリアナが選んでくれたものなら何でも嬉しいですよ!」
「…リカルド。」
だから、そう言うことは。
私は思わず小さくため息をついた。
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