7 / 184
少女
しおりを挟む
二人が家に戻ると、台所には明かりが灯っていた。親友の新聞記者、中里勇一郎が来ているのだろう。
玄関の扉を開く。魚の煮物の匂いが漂って来、急に空腹を覚えた。
「よ。良い魚が手に入ったからさ」
よりにもよって……。と、圭が小さく呟いた。
「荷物、届いてるぜ。富山男爵から」
「早いな」
触れた感じでは、制服であろう。圭が興味を示しているが、勇一郎の前で開こうものなら、どんな騒ぎになることやら。
幸いなのは、勇一郎が引っ切りなしに欠伸をしていることか。
美味い魚を食べさせてやろう。との親切心で動いているだけで、本当は眠くて仕方が無いのだろう。
案の定、食事が終わるとすぐに湯を使い、勇一郎が勝手に使っている三畳間に消えていった。
圭はあからさまに安心した表情を見せ、荷物を手にする。
「応接間に行こうか」
風呂敷に包まれた荷物は厚みがあり、それなりに種類と数があると推測できた。物を広げるならば、応接間の方が適している。
応接間に移り、低い机の上で風呂敷を解いた。
白いブラウスと少し暗めの茶色のワンピース。白い靴下と茶色い革靴。ベルトには校章らしい模様のバックルがついている、清楚な制服である。
「着てみます」
五分程眺めた後、覚悟した様に圭は口を開いた。
「じゃあ、出て行こうか」
恥ずかしそうに頷くのを見て、隼人は応接間を出た。
中からは時々、家具の動く音が聞こえる。恐らく不器用な圭が、着替え中よろめいて、椅子に寄り掛かっているのだろう。
静かになってもなかなか呼ばれなかったが、やがて、真剣な表情の圭が姿を見せたので、応接間に戻った。
「へぇ」
感心してしまうほど、似合っていた。かつらの色は茶色味がかっており、真っ黒な髪の圭の印象を変えた。
「不自然ではありませんか?」
「全然」
どこからどう見ても、清楚なお嬢様だった。
隼人の言葉が不満だったらしい圭は、膨れ面ながら生真面目に、歩き方などを研究している。男にしては狭いが、女にしては広すぎる歩幅を気にしつつ、応接室を五往復した辺りで満足気な表情を見せた。
「五年生。十七歳ですか。二歳違いなのですね。授業はついていけるでしょうか」
言いながら圭は、風呂敷の中に埋もれたままの箱の蓋を開いた。
「あ」
緊張が、部屋に張り詰めた。
箱の中身は断ち鋏、糸切り鋏、縫い針、糸等の裁縫道具。
玄関の扉を開く。魚の煮物の匂いが漂って来、急に空腹を覚えた。
「よ。良い魚が手に入ったからさ」
よりにもよって……。と、圭が小さく呟いた。
「荷物、届いてるぜ。富山男爵から」
「早いな」
触れた感じでは、制服であろう。圭が興味を示しているが、勇一郎の前で開こうものなら、どんな騒ぎになることやら。
幸いなのは、勇一郎が引っ切りなしに欠伸をしていることか。
美味い魚を食べさせてやろう。との親切心で動いているだけで、本当は眠くて仕方が無いのだろう。
案の定、食事が終わるとすぐに湯を使い、勇一郎が勝手に使っている三畳間に消えていった。
圭はあからさまに安心した表情を見せ、荷物を手にする。
「応接間に行こうか」
風呂敷に包まれた荷物は厚みがあり、それなりに種類と数があると推測できた。物を広げるならば、応接間の方が適している。
応接間に移り、低い机の上で風呂敷を解いた。
白いブラウスと少し暗めの茶色のワンピース。白い靴下と茶色い革靴。ベルトには校章らしい模様のバックルがついている、清楚な制服である。
「着てみます」
五分程眺めた後、覚悟した様に圭は口を開いた。
「じゃあ、出て行こうか」
恥ずかしそうに頷くのを見て、隼人は応接間を出た。
中からは時々、家具の動く音が聞こえる。恐らく不器用な圭が、着替え中よろめいて、椅子に寄り掛かっているのだろう。
静かになってもなかなか呼ばれなかったが、やがて、真剣な表情の圭が姿を見せたので、応接間に戻った。
「へぇ」
感心してしまうほど、似合っていた。かつらの色は茶色味がかっており、真っ黒な髪の圭の印象を変えた。
「不自然ではありませんか?」
「全然」
どこからどう見ても、清楚なお嬢様だった。
隼人の言葉が不満だったらしい圭は、膨れ面ながら生真面目に、歩き方などを研究している。男にしては狭いが、女にしては広すぎる歩幅を気にしつつ、応接室を五往復した辺りで満足気な表情を見せた。
「五年生。十七歳ですか。二歳違いなのですね。授業はついていけるでしょうか」
言いながら圭は、風呂敷の中に埋もれたままの箱の蓋を開いた。
「あ」
緊張が、部屋に張り詰めた。
箱の中身は断ち鋏、糸切り鋏、縫い針、糸等の裁縫道具。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる