長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

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少女

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 二人が家に戻ると、台所には明かりが灯っていた。親友の新聞記者、中里勇一郎が来ているのだろう。

 玄関の扉を開く。魚の煮物の匂いが漂って来、急に空腹を覚えた。

「よ。良い魚が手に入ったからさ」

 よりにもよって……。と、圭が小さく呟いた。

「荷物、届いてるぜ。富山男爵から」

「早いな」

 触れた感じでは、制服であろう。圭が興味を示しているが、勇一郎の前で開こうものなら、どんな騒ぎになることやら。

 幸いなのは、勇一郎が引っ切りなしに欠伸をしていることか。

 美味い魚を食べさせてやろう。との親切心で動いているだけで、本当は眠くて仕方が無いのだろう。

 案の定、食事が終わるとすぐに湯を使い、勇一郎が勝手に使っている三畳間に消えていった。

 圭はあからさまに安心した表情を見せ、荷物を手にする。

「応接間に行こうか」

 風呂敷に包まれた荷物は厚みがあり、それなりに種類と数があると推測できた。物を広げるならば、応接間の方が適している。

 応接間に移り、低い机の上で風呂敷を解いた。

 白いブラウスと少し暗めの茶色のワンピース。白い靴下と茶色い革靴。ベルトには校章らしい模様のバックルがついている、清楚な制服である。

「着てみます」

 五分程眺めた後、覚悟した様に圭は口を開いた。

「じゃあ、出て行こうか」

 恥ずかしそうに頷くのを見て、隼人は応接間を出た。

 中からは時々、家具の動く音が聞こえる。恐らく不器用な圭が、着替え中よろめいて、椅子に寄り掛かっているのだろう。

 静かになってもなかなか呼ばれなかったが、やがて、真剣な表情の圭が姿を見せたので、応接間に戻った。

「へぇ」

 感心してしまうほど、似合っていた。かつらの色は茶色味がかっており、真っ黒な髪の圭の印象を変えた。

「不自然ではありませんか?」

「全然」

 どこからどう見ても、清楚なお嬢様だった。

 隼人の言葉が不満だったらしい圭は、膨れ面ながら生真面目に、歩き方などを研究している。男にしては狭いが、女にしては広すぎる歩幅を気にしつつ、応接室を五往復した辺りで満足気な表情を見せた。

「五年生。十七歳ですか。二歳違いなのですね。授業はついていけるでしょうか」

 言いながら圭は、風呂敷の中に埋もれたままの箱の蓋を開いた。

「あ」

 緊張が、部屋に張り詰めた。

 箱の中身は断ち鋏、糸切り鋏、縫い針、糸等の裁縫道具。
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