長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

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娼館 ニ

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 「時々はいると言いましたが、いなくなることも? 解放されるのですか?」

「ここはな、なんも知らん未通娘おぼこだけを置いてんだ。慣れちまったら、それ用の館がある。

 お前もな、二十人くらい相手にしたら、さて、どこに送ってやるかな。美人だから、金持ち相手か」

 男は耳を澄ませるような仕草をすると、ノブに手を掛けた。

「男相手に慣れてる奴だと良いな。慣れてないと二三日、起き上がれなくなるぞ」

 男が出て行ったのを見届け、窓に飛びついたのだが。

「駄目だ」

 二階の窓。真下には煉瓦が無造作に置かれ、勇気を出して飛び降りたとしても、着地の際、大怪我間違い無しである。

 残る逃げ道はただ一つ。扉しかない。

 扉が開き、男が入って来た。手にしていた鍵を穴に差し込み、カチリと音をたてた。意外にも、まともそうな男だった。灰色の背広とズボン、襟帯。お堅い勤めの男に見える。

 どこかで見たような?

「私はここに、攫われて来ました」

 男は無言のまま、厳しい表情で向かって来る。

「あの」

 男は手を伸ばすと、圭の顎を捉え、仰向かせた。恐怖が頂点に達し、思わず、男の頬を力一杯叩いてしまった。

「許可もなく触れるなど、無作法な」

 声が震える。どうにか落ち着くべく努力するが、震えは止まらない。

「男のくせに女学校の制服を着ている奴に、作法など説かれたくないね」

 言葉の割に、声は優しかった。

「それは、そうですが」

 ぷっ。と、男が吹き出した。

「長瀬華子、正体を現してもらおうか」

 男は背広を脱ぐと、圭に渡し、着るように指示した。

「ありがとうございます。

 あ、思い出しました。女学校で昨日、私を見ていた」

山上英和やまがみひでかず。英語の臨時講師だ」

「先生が、どうしてこんな所に?」

「誤解しないでくれよ。あの女学校、ここ最近女学生が行方不明になっていてね、勝手に捜査しているんだ。

 ここのことは、ある筋から聞いていて、もう少し調べるはずだったんだが、今日、君が消えたと聞いてね」

 圭を見ていたのは、心配してくれていたのだと理解し、安堵の溜息が出る。

「座ろうか。

 ところで君の名前は?」

「麻上圭です。あの、女学校に入ったのは事情がありまして、その」

 圭は椅子に、山上は寝台に座る。
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