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赤児
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「で、若い男の正体は?」
「富山の息子だ」
勇一郎は食卓で、緑茶を啜りながら、事もなげに言った。
「息子? 息子は二歳だって……」
「実は、結婚前に手を付けた女中との間に男の子が一人いてな、金で解決したらしいが、二年前、母親を亡くした息子が突然現れた。
っうか、息子とはずっと会っていて、ひとりになったのを機に、引き取ったんだ。
今の嫁にしたって、二十年も前の事で、嫉妬する理由も無い。跡取りは自分の息子だと約束いてくれれば、問題はないだろう。姉妹には、兄だと教えていたらしい」
「なるほど、兄だから若い男ではあっても男として数えなかったのか。
いかし、十五歳になっていきなり、初対面の男を兄だと言われて、納得できるだろうか?
まぁ、そっちはいいとして今日の騒ぎはなんだったんだ? 園子さんが死んだと男爵は言っていたが」
「死んだ?」
「そう言われた。急に苦しみだしたって。
しかし、男爵の言い方だと、死んだ後で医者を呼んだことになる。その上、医者より先に女を呼んでいた」
「良いところに目ぇつけたな。あの女は産婆だ。それも、子堕ろしを得意としている」
「こおろしとは?」
意味が分からず質問するが、大人三人は、顔を見合わせてしまった。
「それは、だな」
言い辛そうながら口を開いたのは、山上だった。教師らしく生真面目な表情で真っ直ぐ、圭を見る。
「腹の中の子を、人工的に外に出すことだ」
山上の言葉は、圭の頭の中にすんなりとは入らなかった。あまりにも残酷で、考えるのを拒絶したのかも知れない。
「そんなことをしたら、赤ちゃんが死んでしまうのではありませんか?」
「望まない子供は、生まれると困るんだ」
「そんな……」
考えもしなかった。生まれては困る命があるなど。
妊娠が分かると、おめでとう。と言う。ありがとうと返す。誰も彼もが幸せに微笑んでいると考えていた。
「圭ちゃんにはまだ、難しいだろうが、それが現実なんだ。未婚だったり、良人とは違う男の子供だったり、貧しくって養えないって理由で仕方なく堕ろすこともある。
子供に罪は無い。子を諦めなければならない母親も、全てに罪があるわけじゃない。
どちらかと言えば、罪が重いのは男の方だな」
「富山の息子だ」
勇一郎は食卓で、緑茶を啜りながら、事もなげに言った。
「息子? 息子は二歳だって……」
「実は、結婚前に手を付けた女中との間に男の子が一人いてな、金で解決したらしいが、二年前、母親を亡くした息子が突然現れた。
っうか、息子とはずっと会っていて、ひとりになったのを機に、引き取ったんだ。
今の嫁にしたって、二十年も前の事で、嫉妬する理由も無い。跡取りは自分の息子だと約束いてくれれば、問題はないだろう。姉妹には、兄だと教えていたらしい」
「なるほど、兄だから若い男ではあっても男として数えなかったのか。
いかし、十五歳になっていきなり、初対面の男を兄だと言われて、納得できるだろうか?
まぁ、そっちはいいとして今日の騒ぎはなんだったんだ? 園子さんが死んだと男爵は言っていたが」
「死んだ?」
「そう言われた。急に苦しみだしたって。
しかし、男爵の言い方だと、死んだ後で医者を呼んだことになる。その上、医者より先に女を呼んでいた」
「良いところに目ぇつけたな。あの女は産婆だ。それも、子堕ろしを得意としている」
「こおろしとは?」
意味が分からず質問するが、大人三人は、顔を見合わせてしまった。
「それは、だな」
言い辛そうながら口を開いたのは、山上だった。教師らしく生真面目な表情で真っ直ぐ、圭を見る。
「腹の中の子を、人工的に外に出すことだ」
山上の言葉は、圭の頭の中にすんなりとは入らなかった。あまりにも残酷で、考えるのを拒絶したのかも知れない。
「そんなことをしたら、赤ちゃんが死んでしまうのではありませんか?」
「望まない子供は、生まれると困るんだ」
「そんな……」
考えもしなかった。生まれては困る命があるなど。
妊娠が分かると、おめでとう。と言う。ありがとうと返す。誰も彼もが幸せに微笑んでいると考えていた。
「圭ちゃんにはまだ、難しいだろうが、それが現実なんだ。未婚だったり、良人とは違う男の子供だったり、貧しくって養えないって理由で仕方なく堕ろすこともある。
子供に罪は無い。子を諦めなければならない母親も、全てに罪があるわけじゃない。
どちらかと言えば、罪が重いのは男の方だな」
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