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愛情
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富山家では、今日、葬儀が行われる。
圭もお別れをしたいと申し出てきたが、富山の感情を乱してはなるまいと、家にいるよう説得している最中に、昨夜、遊郭へ取材に行っていた勇一郎が白粉の匂いをさせながら帰って来た。
てっきり葬儀に間に合わせたのかと思いきや、すぐ寝ると言う。
「圭ちゃん済まないけど、これ清書しといてくれよ」
と、相変わらずミミズがのたくったような原稿を押し付けて布団に潜り込んだ。勇一郎もまた、圭を富山家に行かせたくはなかったのだろう。
山上は富山も顔を知らないだろうから、希望通り連れて行くことにした。
なぜ私が。とぼやきながらも、圭は生真面目さを発揮して、清書すべく、机に向かった。
「富山男爵の噂は、色々耳に入る。身分と金の亡者ってのが、九割九分」
「残りの一分は?」
「家族思い」
運転中の良さは、周りを気にせず話ができることである。
「あの女学校はお堅いだけあって、それなりの家柄の娘が集まっている。そういう女学校では大抵、成金ってのは嫌われるんだ。どんなに美しかろうと、優秀だろうと、成金ってだけで白い目で見られる。
しかし、富山園子は女学校内で一二を争う人気者だった。父親が男爵だってのも、理由ではあったと思う。けど、理由はそれだけじゃなかった。
随分と寄付をしていたらしいよ、女学校に。それも、金だけじゃなく、楽器だとか、絵画、運動部で必要な道具なんかもね。
傍に気の利く人間がいるのだろうね、文化的ってのは、尊敬の対象になる」
「つまりは、娘の為に、頑張っていたわけだね?」
「そうなのだろうと思う。
富山家を訪れた生徒から聞いたことがあるが、屋敷や庭の美しさに驚かせられたとか、男爵がとても紳士的で、優しかったと」
「忙しい人だ。娘の友達が来る時間に合わせて、家にいたのだろうな。娘に肩身の狭い思いをさせぬよう、気を遣って。
優しい人だ。それに、偏見を持たない。
俺のことも、幼い頃から知っているとは言え、あの人から不愉快な気持ちにさせられたことはないよ」
「他の人からは、あるのだね」
隼人は肩を竦めて、肯定した。
「そんな人間とは、関わり合わぬことだよ。
ねぇ長瀬君、富山園子は本当に死んだのだろうか」
「葬式は偽装だと?」
「家族を守る為だとしたら?」
圭もお別れをしたいと申し出てきたが、富山の感情を乱してはなるまいと、家にいるよう説得している最中に、昨夜、遊郭へ取材に行っていた勇一郎が白粉の匂いをさせながら帰って来た。
てっきり葬儀に間に合わせたのかと思いきや、すぐ寝ると言う。
「圭ちゃん済まないけど、これ清書しといてくれよ」
と、相変わらずミミズがのたくったような原稿を押し付けて布団に潜り込んだ。勇一郎もまた、圭を富山家に行かせたくはなかったのだろう。
山上は富山も顔を知らないだろうから、希望通り連れて行くことにした。
なぜ私が。とぼやきながらも、圭は生真面目さを発揮して、清書すべく、机に向かった。
「富山男爵の噂は、色々耳に入る。身分と金の亡者ってのが、九割九分」
「残りの一分は?」
「家族思い」
運転中の良さは、周りを気にせず話ができることである。
「あの女学校はお堅いだけあって、それなりの家柄の娘が集まっている。そういう女学校では大抵、成金ってのは嫌われるんだ。どんなに美しかろうと、優秀だろうと、成金ってだけで白い目で見られる。
しかし、富山園子は女学校内で一二を争う人気者だった。父親が男爵だってのも、理由ではあったと思う。けど、理由はそれだけじゃなかった。
随分と寄付をしていたらしいよ、女学校に。それも、金だけじゃなく、楽器だとか、絵画、運動部で必要な道具なんかもね。
傍に気の利く人間がいるのだろうね、文化的ってのは、尊敬の対象になる」
「つまりは、娘の為に、頑張っていたわけだね?」
「そうなのだろうと思う。
富山家を訪れた生徒から聞いたことがあるが、屋敷や庭の美しさに驚かせられたとか、男爵がとても紳士的で、優しかったと」
「忙しい人だ。娘の友達が来る時間に合わせて、家にいたのだろうな。娘に肩身の狭い思いをさせぬよう、気を遣って。
優しい人だ。それに、偏見を持たない。
俺のことも、幼い頃から知っているとは言え、あの人から不愉快な気持ちにさせられたことはないよ」
「他の人からは、あるのだね」
隼人は肩を竦めて、肯定した。
「そんな人間とは、関わり合わぬことだよ。
ねぇ長瀬君、富山園子は本当に死んだのだろうか」
「葬式は偽装だと?」
「家族を守る為だとしたら?」
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