長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

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葬儀

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 富山男爵邸には、文字通り人が溢れていた。しかし、人数に比して、ざわめきは少ない。

 花に例えるなら蕾の少女が、突然命を落とした。本人は勿論、遺族の心中を思えば、口数も自ずと少なくなるものだ。

 弔問客は、いかにも仕事の付き合いと思われる中高年の男が多く、園子の友人と思われる少女の姿は、二人しか見当たらなかった。

 記帳し、屋敷内に入る。やはり少女の姿は見えない。

 襖を外し、大広間と化した日本屋敷は色とりどりの美しい花で飾られ、人が多くいてさえ、寂しさを隠せなかった。

 並んで二十分。ようやく焼香の番が巡って来た。棺の中を覗く、唯一の機会。

 香を抓んで焼香を済ませ顔を上げると、しっかりと蓋を打ち付けられた、真新しい棺が目に入った。棺の中は絶対に見せぬつもりらしい。

 怪しい。

 そう考えているのは山上も同じらしく隼人と目を合わせると、ぐるりと顔を巡らせた。富山を探しているのだろう。

 倣って、隼人も富山を探す。喪主のはずなのに、姿が見えない。

「長瀬君、あそこだ」

 焼香を次の人に譲りながら、山上が視線で知らせた先は、窓の外だった。

 窓の向こう、美しい日本庭園で、男が松の木に凭れている。虚ろな目はどこを見ているのかも分からない。泣き腫らしたらしく、目の周りは赤く腫れている。

 涙を誘う光景であった。最愛の娘を亡くした悲劇の父親。涙が涸れた今、現実の全てを拒絶し、感情を遮断しているのだろう。

 少し離れた場所で、庶子らしい男子が見守っている。奥方は、やはり赤い目でありながらも、気丈に喪主の代理を務めている。

 疑いようがない。確かに娘は死んだのだろう。

 しかし、園子だとの証拠はない。開かれぬよう、蓋の閉められた棺。同じ顔、同じ体格の姉妹でも、何かしら雰囲気の違いなどあるはずだ。

 とはいえ、まさか棺の蓋を外すわけにもいかず、確認の方法はただ一つ、生きている娘と会うこと。しかし、それらしき姿はない。

 警察の、見知った顔を三人ほど確認したが、邪魔にならぬよう、敢えて知らぬ振りをした。

「あれ? 長瀬さん」

 背後からかけられた声に、苛立ちを感じつつ振り向く。八田育夫が場所に不似合いな笑顔で立っていた。

「富山男爵と付き合いがあったんですか?」

「父の友人だよ」
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