54 / 184
距離
しおりを挟む
これ以上、婚約に関して話を進めるのは酷だろうと、話題を逸らすことにした。
「どうやら学校を抜け出して来たみたいだけど、放課後まで待てなかったってことは、気になるなにかがあるって事なのだろう?
もしかして、圭君が無くした根付けを、君が持っていたのかい?」
圭君、と言った途端に睨まれた。圭への感情は失っていないらしい。だとすればさっきの溜息は、さぞかし傷ついただろうな。と、思わせられた。
「拾ったんだ。
その、最後に会った時に、麻上が去って行った後、落ちてるのに気付いて」
圭が小さく、あ。と、驚いたような声を発した。
「あの日、待っている間に、小銭入れを出しました。帰りに本を買いに行くつもりだったのに、お金を入れ忘れていて。いくら持っているかを確認したのを忘れていました」
圭は隼人に顔を向けて、まるで他に人がいないかのように話し掛ける。
宗一郎の苛立った様子が分かったが、圭が感情を受け入れるつもりが無い以上、それをしっかりと態度に表すのは必要かと考える。
「そうか。
つまりは、村越君は根付けを拾ったものの、返す機会がないまま、圭君は退学してしまった。ってことだね」
「その後は、気にはなりつつも、まぁ、生活に必要な物でも無く、金銭でもないからには、慌てて返す必要も無いだろうから、なんとなく時間が過ぎて、今朝、どういうわけか新聞に根付けの事が書かれていた。と」
不満そうな表情で、宗一郎は頷いた。
「いつか返そうと思って、いつも持ち歩いていたんだ。だから和紙に包んで、学生鞄にしまっていて」
「それを知っている人は?」
あからさまに宗一郎が動揺した。
「元許嫁者だね」
「なぜ」
「君が動揺したからだよ」
「動揺したからって、彼女とは……」
「動揺するからには、それなりに相手に対して君が、好意的な感情、或いは、罪悪感を持っていると考えられる。
男友達なら、さほど動揺しないだろう。圭君の物だと知りながら、勝手に持って行ったなら、君は怒りを持つと考えられる。
両親だとすれば、こっそり盗むとは思えない。面と向かって、それをよこせと要求するはずだ。
しかし元許嫁者であれば、君は庇いたいと思うだろう。なにしろ引け目があるからね」
「どうやら学校を抜け出して来たみたいだけど、放課後まで待てなかったってことは、気になるなにかがあるって事なのだろう?
もしかして、圭君が無くした根付けを、君が持っていたのかい?」
圭君、と言った途端に睨まれた。圭への感情は失っていないらしい。だとすればさっきの溜息は、さぞかし傷ついただろうな。と、思わせられた。
「拾ったんだ。
その、最後に会った時に、麻上が去って行った後、落ちてるのに気付いて」
圭が小さく、あ。と、驚いたような声を発した。
「あの日、待っている間に、小銭入れを出しました。帰りに本を買いに行くつもりだったのに、お金を入れ忘れていて。いくら持っているかを確認したのを忘れていました」
圭は隼人に顔を向けて、まるで他に人がいないかのように話し掛ける。
宗一郎の苛立った様子が分かったが、圭が感情を受け入れるつもりが無い以上、それをしっかりと態度に表すのは必要かと考える。
「そうか。
つまりは、村越君は根付けを拾ったものの、返す機会がないまま、圭君は退学してしまった。ってことだね」
「その後は、気にはなりつつも、まぁ、生活に必要な物でも無く、金銭でもないからには、慌てて返す必要も無いだろうから、なんとなく時間が過ぎて、今朝、どういうわけか新聞に根付けの事が書かれていた。と」
不満そうな表情で、宗一郎は頷いた。
「いつか返そうと思って、いつも持ち歩いていたんだ。だから和紙に包んで、学生鞄にしまっていて」
「それを知っている人は?」
あからさまに宗一郎が動揺した。
「元許嫁者だね」
「なぜ」
「君が動揺したからだよ」
「動揺したからって、彼女とは……」
「動揺するからには、それなりに相手に対して君が、好意的な感情、或いは、罪悪感を持っていると考えられる。
男友達なら、さほど動揺しないだろう。圭君の物だと知りながら、勝手に持って行ったなら、君は怒りを持つと考えられる。
両親だとすれば、こっそり盗むとは思えない。面と向かって、それをよこせと要求するはずだ。
しかし元許嫁者であれば、君は庇いたいと思うだろう。なにしろ引け目があるからね」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる