長瀬萬請負 其の二 祈れる乙女達

岡倉弘毅

文字の大きさ
64 / 150

二形

しおりを挟む
 バッグを包んでいた風呂敷を手に、屋敷町を歩く。どこもかしこも高い塀に囲まれており、景色としてはつまらない。
 
 華族と聞いて、思い浮かべるのはこういう光景なのだろうな。と思う。華族に相応しい生活とはどういうものなのか。一般では、華族とは文字通り華やかで煌びやかな生活を送っていると思っているのだろう。
 
 着飾ってパァティイで踊り、美味しいご馳走を頂く。沢山の使用人にかしずかれ、生活に追われる必要も無く、ゆったりとした時間を過ごしている。

 そんなところだろうか。

 麻上男爵家は、主が勤め人であったから、会社員の家庭と変わらぬ生活だった。家柄華族とは言え、語学に興味があったため、学習院ではない中学に進んだ。

 家庭は、家族三人の他に、婆やがいた。家事は美沙子と婆やの二人で行っていたのだ。

 両親共に、既に両親は亡く、不動産も住んでいた家しかなく、財産も大して持っていなかった。堅実な生活をしていたのだ。世間一般の考える華族とはかけ離れた生活に違いなかった。

それでも、両親とも堅実な家庭で育った同士で、問題はなかった。

 社交界とも殆ど関わりはしなかったが、将来の為と、相応しい恰好、髪型の作り方を教えて貰った。

 傍からはどう見えていたかは分からないが、幸せな家庭だったと、圭は懐かしく思い出す。

 心の中で、両親や祖父母を思い出している時、背後から、おい。と、品の無い声が聞こえた。正直振り向きたくは無いが、無視したとしても諦めはすまい。

 無駄な努力は止めて、徐に振り向いた。

「なんのご用でしょうか?」

 八田育夫がいた。人気の無い屋敷町。八田伯爵家は近所では無いはずだ。

 少し離れた場所に、車が見えた。

 圭が安原元帥と会うのを知っているはずはないから、家を出る所からつけていたのだろう。

「なにを企んでいるんだ?」

 言いたいことが理解できず、小首を傾げる。

「お前等、百合子と手を組んで、俺を陥れようとしてるんだろう」

 お前等。とは恐らく、隼人と圭を指しているのだろう。

「どうして私達が貴方を陥れる必要があるのでしょう?」

 隼人と百合子に嫌われている自覚はあるらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...