長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

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二形 三

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 隼人と勇一郎は、如月会にいた。

 高い塀に囲まれた敷地は、ある実業家からの借り物だそうで、広い日本邸宅を事務所と教室に、レンガ造りの建物は住居として利用しているとの説明だった。

 大人は女性のみで、ほとんどが固い表情をしているのが印象的である。

「子供がいるのに、静かだと思われませんか?」

 責任者の如月一子いつこが茶を勧めながら、静かな声で問うた。

「はい。自分も気になっていました。

 ここは、人が多いのに静かで、そのくせ活気に満ちた、不思議な空間ですね」

 勇一郎も静かに、生真面目に答える。

「母親の影響ですわ。

 ここにいる者は皆、夫や父親から受けた、体や心への暴力に苦しむ人ばかり。女ひとりで身を立てようと、必死に勉強しています。

 母親の緊張を傍で感じ取り、子供は感情を抑えて、遊びもせず……」

 ひとつ小さな溜息を吐いて、窓の外に視線を向けた。

 硝子の向こうには、無表情の女の子が、庭を掃き清めている。六、七歳に見える少女に、箒は長すぎる。

「自主的にお手伝いをするのは良いことです。

 しかし、子供らしさを失ったまま大人になったなら、それは心が健康だとは言えないと思います」

 一子の手が、胸の十字架を包む。

 資産家の娘であった母親が創立者で、三年前に受け継いだという一子。粗末な着物を着、化粧っ気のない顔。年齢よりも上に、いや、老けて見えるという表現がしっくりくる。

 しかし、優しい声音や真っすぐ二人に向けられた視線の強さ、品の良い仕草は、自然、一子に対する尊敬の感情をもたらした。

 如月会は元々、婦人の趣味の会だった。

 一子の母親は資産家の娘であったが、キリスト教に入信し、ボランティア活動によって初めて、虐げられた婦人の姿に気づいたのだと、何かに書いてあった。

 ボランティア活動の拠点であった如月会はいつしか駆け込み寺となり、救いの場になっていた。

「ここでは、キリスト教の教えを?」

「私はクリスチャンですが、他の方に勧めたりはしません。

 教えに共感した方は改宗をなさいますが、ほとんどの方は元々、各々の信じる神様仏様を拝んでいます。願いが同じであるなら、信仰の対象が違うなど、どうでも良いことです」
 
「願い?」

 隼人の呟きを、一子は聞き逃さず、

「平穏で幸せな日常。ですわ」

 口元に笑みを湛え、静かな口調で答えた。

「ひとつ、質問が」

「どうぞ」
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