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寒天
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「ごめんごめん。
垣崎さんのことはわかっているだろう? 彼女がお世話になっている所に向かっているんだ」
「麻上さんですわよね?
申し訳ありません、根付は私が村越さんから盗みましたの。彼を困らせるつもりだったのですけれど」
「貴女は悪くありません。悪いのは村越さんです」
二人の発する、村越さん。という言葉は、なんとなく似ていた。どこか突き放したようで、呆れたようで。同じような感情を持っているのだろうな。と、思わせられる。
圭は、隼人を一瞥すると、口を閉じた。
無駄だとわかっている。静子の元に根付があるはずがないのだから。それでも圭が何も言わないのは、遊女の殺害現場にあったことを静子に知らせまいとしたのだろう。
隼人は胸を撫で下ろした。圭がうっかりと言わないかと内心ひやひやしていたのだ。こういう所が、圭は探偵助手として優れていた。
静子の案内で、睦月会に到着した。如月会に比べると小さいが、個人宅にしては大きいと思われる敷地にそれはあった。
高い木の塀に囲われて中は見えぬが、塀は遙か先まで延びている。
ほとんど人も通らぬ道に車を停めて、そこで待つことにした。男は入らない方が良いと、学習したからである。
車の中で圭に詳しい話をしている最中に、静子が現れた。てっきり根付が見つからないと言いに来たのかと思いきや、中に入るよう促された。
「しかし、お邪魔じゃないのかな?」
「田中様が、外でお待たせするのは失礼だと」
本音を言えば、中には入ってみたかったので、表向きは遠慮がちに、しかし、素直に礼を言って車を降りた。
中に入ると、ずいぶんと古いが大きな建物の入り口が目の前にあった。
廃墟一歩手前の建物は、旅館だったのではないかと思われる造りで、広い玄関の向こうには幾つもの引き戸が並んでいる。
二人は玄関を入ってすぐの六畳ほどの部屋に入るよう促された。静子以外の人間にはひとりも会わないまま。
人の気配が感じられなかった。下駄箱には草履や下駄、靴が整然と片付けられているのに、その主の気配は感じられない。
「随分と静かですね」
「こちらは生活の場所ですから。今は皆さん、勉強の為に出ておりますの。子供達は学校に行っておりますし。
お座り下さい」
そう言うと静子は、部屋を出て行った。
垣崎さんのことはわかっているだろう? 彼女がお世話になっている所に向かっているんだ」
「麻上さんですわよね?
申し訳ありません、根付は私が村越さんから盗みましたの。彼を困らせるつもりだったのですけれど」
「貴女は悪くありません。悪いのは村越さんです」
二人の発する、村越さん。という言葉は、なんとなく似ていた。どこか突き放したようで、呆れたようで。同じような感情を持っているのだろうな。と、思わせられる。
圭は、隼人を一瞥すると、口を閉じた。
無駄だとわかっている。静子の元に根付があるはずがないのだから。それでも圭が何も言わないのは、遊女の殺害現場にあったことを静子に知らせまいとしたのだろう。
隼人は胸を撫で下ろした。圭がうっかりと言わないかと内心ひやひやしていたのだ。こういう所が、圭は探偵助手として優れていた。
静子の案内で、睦月会に到着した。如月会に比べると小さいが、個人宅にしては大きいと思われる敷地にそれはあった。
高い木の塀に囲われて中は見えぬが、塀は遙か先まで延びている。
ほとんど人も通らぬ道に車を停めて、そこで待つことにした。男は入らない方が良いと、学習したからである。
車の中で圭に詳しい話をしている最中に、静子が現れた。てっきり根付が見つからないと言いに来たのかと思いきや、中に入るよう促された。
「しかし、お邪魔じゃないのかな?」
「田中様が、外でお待たせするのは失礼だと」
本音を言えば、中には入ってみたかったので、表向きは遠慮がちに、しかし、素直に礼を言って車を降りた。
中に入ると、ずいぶんと古いが大きな建物の入り口が目の前にあった。
廃墟一歩手前の建物は、旅館だったのではないかと思われる造りで、広い玄関の向こうには幾つもの引き戸が並んでいる。
二人は玄関を入ってすぐの六畳ほどの部屋に入るよう促された。静子以外の人間にはひとりも会わないまま。
人の気配が感じられなかった。下駄箱には草履や下駄、靴が整然と片付けられているのに、その主の気配は感じられない。
「随分と静かですね」
「こちらは生活の場所ですから。今は皆さん、勉強の為に出ておりますの。子供達は学校に行っておりますし。
お座り下さい」
そう言うと静子は、部屋を出て行った。
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