長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

文字の大きさ
148 / 184

部屋

しおりを挟む
 今日は、ホテルは貸し切りになっている。が、一部屋我儘を言って借りていた。

 とはいえ、他の客のように泊まるわけではなく、パーティーの間だけだと伝えたら、安原家の為に用意されている部屋を貸してくれることになった。

 どうして親族でもない、さほど親しくもない圭に対して親切にしてくれるのかは疑問なのだが、ありがたく貸して貰った。

 三階の広い特別室に、三人で入る。

 本来なら今日、最も華やかな人達の為の部屋でありながら、その正反対の人間が今、足を踏み入れていた。

 縞柄の絹を張り付けたソファが存在するが、座らずにいる。できる限りこの、幸せの場所を乱したくはなかった。

 入り口付近で三人、立ったままでいた。

「どうして私に気づいたのかしら? 目立たないよう大人しくしておりましたのに」

 帽子を脱ぐと、艶やかな髪がパサリと落ちた。

「制服が体に合っていませんでした。それが気になったのです」

 近くでじっくり見ると、ズボンの裾は内側に折り込んでいるし、袖は引っ張り上げていたのだろう、指先しか見えていない。

 体の細さで違和感を覚えていたと思っていたのだが、全体的に見ると、違和感しかない。

 それでも、椅子に座って動きを抑えていたからこそ、圭以外の人間に気づかれなかったのだろう。

「仕方ありませんわ。私の制服ではありませんもの。

 どうして誰も倒れなかったの? 平気な顔で寒天を食べているなんて、おかしいわ」

「すまねぇ、俺達がすり替えた」

 百合子は勇一郎に顔を向けるとほほ笑んだ。

「お久しぶりですわね、中里様。こんな再会など考えもしませんでしたけれど……」

「俺もだよ」

 扉を叩く音が聞こえた。隼人がやって来たのだろう。

 勇一郎が扉を開く。途端に、あっ。と、小さな驚きの声がした。

 視線を向けると、トミと隼人、山上の後ろに、元帥が立っていた。笑ってこそいないが、穏やかな表情で、現状を理解しているようには思われなかった。

「お邪魔をさせて頂くよ」

 お邪魔も何も、ここは安原家の部屋である。圭と勇一郎は丁寧に頭を下げると、元帥を見上げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...