長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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女中 七

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 「映子さんがあまりに傲慢なので、少し懲らしめてやろうと考えただけで、本音ではありませんよ。でも、副社長が仰るには、以来、物を投げ付ける等の行為が始まったらしく、恨まれています」

 なるほど、嫁入り前の若い娘が、ヒステリーを起こして、物を投げるなどの乱暴を働くようになったなら、父親としては、元凶となった有朋を憎むのも、無理はあるまい。

 しかし、映子はまだ二十歳。若さを妬む年齢ではない。

「いいえ、よくご覧になればわかります。十五六の子の髪の艶など、二十歳は敵いませんよ」

 どれどれ。と、圭を見る。意識して見ると、漆黒の髪は艷やかで、まるで絹のよう。年齢を気にし始めたならば、嫉妬の対象になるだろう。

「反省などしてませんけど、ちょっと言い過ぎたかもしれませんね」

「彼女は君が好きなのか?」

 有朋は、堪えきらぬとばかりに、笑い出した。

「違いますよ。さっき言ってたでしょう? 彼女が好きなのは、彼ですよ」

 視線で、圭を指した。

「けど、君の言葉を気にしているのだろう?」

「この世の人間、すべてが自分に平伏すべきだと、思っているような人ですからね」

 人がひとり亡くなったばかりなのにも関わらず、不謹慎にも笑みを絶やさない有朋を、不快に思っているのか、圭の目つきはきつい。

「新聞で知ったのですが、こちらの女中さんが殺されたそうですね」

「えぇ、あの時はとんでもない騒ぎになりました」

 有朋は、この事件に興味はないのだと思った。

 勇一郎は、被害者と高林の関係を書いた記事など無かった。と、言った。興味のある事件は、全ての新聞、雑誌に目を通しているから、信用度は高い。

 身近で起きた奇妙な事件に、有朋が興味を示さぬのに、違和感を覚えた。

「まだ、犯人は捕まっておりませんが、それらしい人物をご存知ありませんか?」

「亡くなった人を悪く言うのは気が引けますが、あの人は随分と、貞操観念の薄い人でしたから、男といざこざを起こしたのではありませんか?

 この屋敷の男の中にも、色良い返事を受けた者もいるようですし」

「君も言い寄られていたくちだろう?」

 有朋は、小馬鹿にしたような表情を見せた。

「男と見れば、見境のない人でしたからね」

「すごい美人だったそうじゃないか。君はなんとも思わなかったのかい?」

「興味ありませんね」
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