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女中 九
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「いいえ、副社長が、咲江夫人を見初めたのです。
親戚筋には、長男が先だと叱られたのですが、社長のとりなしで、世帯を持ったのだそうです」
「世間一般から考えれば、そうだろうね」
「それはご自分が結婚しないのは、末っ子だからと言い訳していると、考えてもいいのでしょうか?」
余計なことは言わなくていい。と、嗜める。
「周りが気を揉むのを気にもせず、社長は長い間独り身でした。口さがのない者は、僕が傍にいるから、婦人が嫌がって近寄らないのだと。
自己弁護ではありませんけれど、社長にはなにか、心に仕舞い込んでいる秘密があったのだと思います。ふと、時間にわずかでも空白があると、思い悩む様子を見せていたのです」
「見せていた? つまり、今は見せていない?」
「そうです。そして、悩まなくなった途端に、結婚を考え始めたのです。
周りは、伯爵家の娘だから。と思っているようですが、真実は単に、結婚を決心した時に来た話だからに過ぎません。誰でも良かったのです。早く身を固めろと、言われるのにうんざりしていましたから」
冷たい声で話す。軽蔑にも感じられる。
有朋には珍しい態度ではないが、義礼は対象ではないと思っていたので、意外に思えた。
「彬子夫人が嫁していらしたのは、十一年前だったね」
「はい。お互いの意向もあり、結婚式は行われませんでした」
「相馬さんは、咲江夫人との、色っぽいお話はないのですか?」
意地悪では無いのだろうが、圭の声はやや挑発的だった。
「ありえませんね。僕は社長側の人間です。咲江夫人からしてみれば、気に食わぬ相手に違いありません。
ご存知ないでしょうが、外に、お付合いしている相手がいるようですし」
衝撃的な事実だったかもしれないが、どの事件にも関しても、咲江夫人と愛人は関係ないので、どうでもいい情報か。
「随分と事情に詳しいのですね。
婦人ならばお話好きな方が多いので、あれこれご存知でしょうけれど、男性の、しかも人に興味を示さぬ、と言われる相馬さんが、意外ですね」
「誤解しないで下さい。噂話を探し回っているのではありませんよ。ただ、隠すのが下手な人が多いので。
目や耳に入ると、無視していられるほど、僕は真面目ではありませんよ」
親戚筋には、長男が先だと叱られたのですが、社長のとりなしで、世帯を持ったのだそうです」
「世間一般から考えれば、そうだろうね」
「それはご自分が結婚しないのは、末っ子だからと言い訳していると、考えてもいいのでしょうか?」
余計なことは言わなくていい。と、嗜める。
「周りが気を揉むのを気にもせず、社長は長い間独り身でした。口さがのない者は、僕が傍にいるから、婦人が嫌がって近寄らないのだと。
自己弁護ではありませんけれど、社長にはなにか、心に仕舞い込んでいる秘密があったのだと思います。ふと、時間にわずかでも空白があると、思い悩む様子を見せていたのです」
「見せていた? つまり、今は見せていない?」
「そうです。そして、悩まなくなった途端に、結婚を考え始めたのです。
周りは、伯爵家の娘だから。と思っているようですが、真実は単に、結婚を決心した時に来た話だからに過ぎません。誰でも良かったのです。早く身を固めろと、言われるのにうんざりしていましたから」
冷たい声で話す。軽蔑にも感じられる。
有朋には珍しい態度ではないが、義礼は対象ではないと思っていたので、意外に思えた。
「彬子夫人が嫁していらしたのは、十一年前だったね」
「はい。お互いの意向もあり、結婚式は行われませんでした」
「相馬さんは、咲江夫人との、色っぽいお話はないのですか?」
意地悪では無いのだろうが、圭の声はやや挑発的だった。
「ありえませんね。僕は社長側の人間です。咲江夫人からしてみれば、気に食わぬ相手に違いありません。
ご存知ないでしょうが、外に、お付合いしている相手がいるようですし」
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