長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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女中 十

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 「男性はいかがでしょう?外にどなたか囲っている様子など、ございませんか?」

 年齢にそぐわぬ質問を、圭は連発する。見た目が子供子供しているだけに、戸惑わせられる。

「ありません。

 社長は、他の女性どころか、彬子夫人にも興味はないようですし、副社長は咲江夫人にしか興味はないようですし」

 高林家の婦人は発展家が多く、男は不器用であるらしい。

「君はあれから、なにか思い出したことはある?」

 有朋は、いいえ。と、警戒したような態度で答えた。 

「そろそろ下りましょうか」

 返事を待たずに、有朋は立ち上がった。

「あ、そうだ。貴方の好みそうな本があるのですよ。明日は、台風らしいですし、外には出られますまい。読書には良い一日になるでしょう」

 文机の抽斗ひきだしから、油紙を取り出すと、本を二冊包んだ。

「どうぞ」

 有朋の言う通り、明日は自宅にこもらなければならないだろう。気遣いを素直にありがたく思い、本を受け取った。

 新聞紙の上に置いてあった、濡れた服を持って、一階に下りる。

 義礼は起きただろうか。

 彬子に問うと、起きてはいるが、人と話せる状態では無いとの答え。敏の件を聞いて、具合を悪くしてしまったのだとか。

 それも仕方あるまいと、思わないでもないのだが。

「どうやら避けられているようですね」

 隼人にだけわかるように、圭が囁く。隼人も同じ意見だった。

 本当ならば、自分を殺そうとした犯人を見つけ出す為に、協力すべき義礼が、一度話をして以来、避けている。犯人を探す気が無いのか、隼人や圭を嫌っているのか。

「申し訳ありませんが、今日はお帰り願えませんか? これから色々と」

「警察も医者も呼ばないのですか?」

 義礼と義史は違う世帯とはいえ、使用人は分けていなかった。映子が勝手に敏を独り占めしていただけで、本来は他の女中と同じく、台所を中心とした家事を受け持っていたはずなのだ。義礼側にも、敏への扱いに口出しする権利はある。

「あちらの方がどうしても、敏の我が儘で屋敷を穢されたのは許せぬと……。

 しかし、警察に伝えぬわけにはいきません。どちらにせよ、警察官は毎日参りますし」

「そうですね。

 では、俺達は、これでお暇します」

「お召し物は、次にいらっしゃるまでに洗っておきますわ」

 濡れた洋服は、遠慮なく預けた。

 このままでは、もう来るなと言われる可能性もある。洋服を預けておけば、受け取りに来た。と、押しかける理由ができる。
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