長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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草履 ニ

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 「圭ちゃんの母親の旧姓は戸川と言うんだけど、戸川と高林は親戚で、母親と高林兄弟は又従兄にあたる。

 戸川もそれなりに歴史のある家だが、やはり、裕福とは言いかねる。両親はすでに亡く、母親が嫁いだ後、主だった弟は失踪して、家は絶えている。

 さほど近い縁でもないから、行き来はなかっただろう。少なくとも、圭ちゃんの両親の葬儀には行っていないだろうな」

「圭君は面識が無いと言っていたし、義礼氏も、圭君を知らなかった。名前を言ったら驚いていたからな。

 どうしてそれがわかったんだ?」

「高林調べてて、偶然。

 先代はずいぶんと真面目な人だったらしくて、評判は良かった。義礼は先代と比較すると、ちょいと落ちるな。思い込んだら、一心不乱なたちでもある。亥年生まれじゃないのか?」

「調べたらどうだ?」

「残念ながら、巳年だった」

 返答に困った挙げ句、無視をする。

「例えばだな、実業家なんてのは、猪突猛進型じゃ、上手くいきやしない。その点においては、及第点以上なんだよ。きっちり調べて、粘り強く相手を押し、思い通りの結果を出す」

「どこが猪なのだ?」

「新しい事を始めようとしたら即行動。周りがどんなに止めても、やると決めたら絶対に引かない。今までは成功してるけど、勘が鈍ったらやばいな。

 成長中は義礼がいいんだろうけど、安定したら、義史の方が向いてんだろうな。今を守るには、穏やかな性格が必要だ。几帳面な性格は、父親譲りらしい」

 初めて、義史を褒める言葉を聞いた。

 とかく人は、積極的な人、明るい人、口の上手い人を褒め、評価したがる。しかし、そんな人間ばかりでは伝統はもちろん、今、発展している物も守れはしない。

 守る者と、新しきを求める者。二人は均衡の取れた兄弟と言える。

「そういえば、結婚も突然決心して、その時に来た縁談を進めたんだって聞いたな」

「ほら、そうだろう? 思い立ったが吉日なんだよ。あぁいう人間が人を好きになったら、厄介だったりするんだよな。

 ところで、なんだ? これ」

 隼人がさっきまで読んでいた本を、勇一郎が興味を示しながら開く。

「民俗学に関する本だ。俺は、犯罪学として読んでいるが」

「民俗学に犯罪?」

「英雄信仰の一つに、死体を喰らう儀式があるのを知っているか?」
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