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草履 三
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「聞いたことがある。
英雄の叡智や超人的な肉体を受け継ぐ為に、血肉を体内にしまい込むってことだろう? 確か、一番地位の高い奴が、心臓を食うんだとか」
「良く知ってるな。
それだって、現代日本から見れば、死体損壊罪だ。
俺が今気になっているのは、ある事件だ。罪状はざっと、誘拐、殺人、死体損壊。
中世の欧州で、ある貴族女性が、若い娘を惨殺する事件が起きた。被害は三桁に上ったそうだ」
「そりゃすげぇな。女ってことは、英雄信仰は関係ないか」
「関係ない。私利私欲の為だ。
この女性は、喰らったりはしなかった。若い娘たちから血を搾り取り、体に塗っていたそうだ。そうすることで、肌が若々しく、美しくなったらしい。
本当かどうかはわからないがな。本人がそう感じただけで、効能があったかどうかなんて、わかりゃしない。
英雄信仰とはちょっと違うけど、自ら欲するものを取り込むって点に置いては、同じだとは思わないか?」
「そうかもしれないな。しかし、けったいなもの読んでるな」
「相馬が貸してくれたんだ」
「お前の好みを覚えてるってことか。
お、圭ちゃん、起きたみたいだな」
小さな足音が聞こえ、台所の扉が開いた。薄暗くて顔色はわからないけれど、表情は少し明るくなっている。
「調子はどう?」
「熱は、下がったと思います。喉が渇いてしまって」
隼人は席を立ち、台所へ向かう。
「自分でできます」
「いいよいいよ。隼人はやりたくてやってんだからさ。末っ子って、兄ちゃん振りたがる傾向があるよな」
実に、反論のしようがない。
自分自身、体調が悪い時、母に過保護にされるのが嬉しかったのだから、仕方はあるまい。体や心が弱っている時は、思い切り甘やかしても良いはずだ。
湯呑に汲んだ水を渡すと、圭は丁寧に礼を言い、一気に飲み干した。
眠っていても汗はかく。熱があればなおさらだ。空になった湯呑を受け取り、もう一杯汲んであげる。
「聞きたいことがある。もし嫌なら、答えなくてもいいから」
「なんでしょう?」
「実家は、どんな屋敷だった?」
屋敷。と、圭は苦笑した。
「屋敷だなんて、とんでもない。小さな家です。表の庭は、そこそこの広さはありましたけれど。
華族とは言っても、父は勤め人でしたし、家事は婆やの手を借りて母がしておりましたし」
「お父さんの仕事は?」
英雄の叡智や超人的な肉体を受け継ぐ為に、血肉を体内にしまい込むってことだろう? 確か、一番地位の高い奴が、心臓を食うんだとか」
「良く知ってるな。
それだって、現代日本から見れば、死体損壊罪だ。
俺が今気になっているのは、ある事件だ。罪状はざっと、誘拐、殺人、死体損壊。
中世の欧州で、ある貴族女性が、若い娘を惨殺する事件が起きた。被害は三桁に上ったそうだ」
「そりゃすげぇな。女ってことは、英雄信仰は関係ないか」
「関係ない。私利私欲の為だ。
この女性は、喰らったりはしなかった。若い娘たちから血を搾り取り、体に塗っていたそうだ。そうすることで、肌が若々しく、美しくなったらしい。
本当かどうかはわからないがな。本人がそう感じただけで、効能があったかどうかなんて、わかりゃしない。
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「そうかもしれないな。しかし、けったいなもの読んでるな」
「相馬が貸してくれたんだ」
「お前の好みを覚えてるってことか。
お、圭ちゃん、起きたみたいだな」
小さな足音が聞こえ、台所の扉が開いた。薄暗くて顔色はわからないけれど、表情は少し明るくなっている。
「調子はどう?」
「熱は、下がったと思います。喉が渇いてしまって」
隼人は席を立ち、台所へ向かう。
「自分でできます」
「いいよいいよ。隼人はやりたくてやってんだからさ。末っ子って、兄ちゃん振りたがる傾向があるよな」
実に、反論のしようがない。
自分自身、体調が悪い時、母に過保護にされるのが嬉しかったのだから、仕方はあるまい。体や心が弱っている時は、思い切り甘やかしても良いはずだ。
湯呑に汲んだ水を渡すと、圭は丁寧に礼を言い、一気に飲み干した。
眠っていても汗はかく。熱があればなおさらだ。空になった湯呑を受け取り、もう一杯汲んであげる。
「聞きたいことがある。もし嫌なら、答えなくてもいいから」
「なんでしょう?」
「実家は、どんな屋敷だった?」
屋敷。と、圭は苦笑した。
「屋敷だなんて、とんでもない。小さな家です。表の庭は、そこそこの広さはありましたけれど。
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