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草履 七
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義礼を殺そうとした犯人を、自ら調べたことと、状況の示す証拠と共に伝える。たっぷり三十分掛けて説明し終えると、勇一郎は目を閉じて、考えを纏めているようだった。
「突飛と言えば突飛だが、間違いだろうとは言えないな。辻褄は合う。
問題は証拠が無いってことか」
「今更証拠を探そうとしても、無理だ。
ただ、彼もこれ以上は隠そうとはしないだはずだ。逃げ道がないのは、自身が一番理解しているだろう」
「なら良いけど、やけになってとんでもない行動を起こさないとも限らないな」
「そこまで愚かではないだろう。
こうなった以上、自主的に罪を認めてもらうか、追い詰めるしかない」
「ちょっとばかり話変わるけど、さっき言ってた、麻上男爵夫人を殺した犯人が着物だったって説だけど、書いて良いか? 夕刊なら間に合う」
「なんの為に?」
「もちろん、記事にする価値があるからだ。
それに、新聞に載れば警察だって気にするんじゃないか」
隼人は考えた。勇一郎の考えは一理あるが、決定権を持つのは圭ではなかろうか。
しかし、圭は今、眠っている。起こしてまた、話を蒸し返すのはためらわれる。かと言って、勇一郎の提案を、蹴飛ばすのもためらわれた。
「圭ちゃんには俺が勝手に書いたって言うから、良いだろう?」
「責任の所在は俺でいい。
お前の書いた物なら、圭君だって傷付いたりはしないだろう。お前を信用している」
任しておけ。と、答えながら既に腰は椅子から離れていた。いつにも増して、瞳が輝いている。
やり甲斐のある仕事に出会うと、人は目を輝かせるのだと、隼人は勇一郎に教えられた。この目を見れば、信頼できると感じられる。
着物を着替え、激しい風雨をものともせず、勇一郎は飛び出した。仕事場に着いた頃には恐らく、ずぶ濡れになっているだろう。
鍵をしっかりと閉めると、圭の様子を確認する。息が少し乱れている。一度は落ち着いたらしいが、また、熱は上がっていた。
たらいに水を張って、濡らした手拭いを額に載せて部屋を出る。
眠りの妨げにならぬよう、食堂で本を読んだり、時々はうつらうつらと居眠りをしながら、温もった手拭いを取り替えていた。
「突飛と言えば突飛だが、間違いだろうとは言えないな。辻褄は合う。
問題は証拠が無いってことか」
「今更証拠を探そうとしても、無理だ。
ただ、彼もこれ以上は隠そうとはしないだはずだ。逃げ道がないのは、自身が一番理解しているだろう」
「なら良いけど、やけになってとんでもない行動を起こさないとも限らないな」
「そこまで愚かではないだろう。
こうなった以上、自主的に罪を認めてもらうか、追い詰めるしかない」
「ちょっとばかり話変わるけど、さっき言ってた、麻上男爵夫人を殺した犯人が着物だったって説だけど、書いて良いか? 夕刊なら間に合う」
「なんの為に?」
「もちろん、記事にする価値があるからだ。
それに、新聞に載れば警察だって気にするんじゃないか」
隼人は考えた。勇一郎の考えは一理あるが、決定権を持つのは圭ではなかろうか。
しかし、圭は今、眠っている。起こしてまた、話を蒸し返すのはためらわれる。かと言って、勇一郎の提案を、蹴飛ばすのもためらわれた。
「圭ちゃんには俺が勝手に書いたって言うから、良いだろう?」
「責任の所在は俺でいい。
お前の書いた物なら、圭君だって傷付いたりはしないだろう。お前を信用している」
任しておけ。と、答えながら既に腰は椅子から離れていた。いつにも増して、瞳が輝いている。
やり甲斐のある仕事に出会うと、人は目を輝かせるのだと、隼人は勇一郎に教えられた。この目を見れば、信頼できると感じられる。
着物を着替え、激しい風雨をものともせず、勇一郎は飛び出した。仕事場に着いた頃には恐らく、ずぶ濡れになっているだろう。
鍵をしっかりと閉めると、圭の様子を確認する。息が少し乱れている。一度は落ち着いたらしいが、また、熱は上がっていた。
たらいに水を張って、濡らした手拭いを額に載せて部屋を出る。
眠りの妨げにならぬよう、食堂で本を読んだり、時々はうつらうつらと居眠りをしながら、温もった手拭いを取り替えていた。
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