長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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秘密 二

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 「こんなことを言うと、おかしくなったかと思われそうですが、敏が恨んで、出てきたのではないかと思ってしまいます」

「どうして? 敏さんが恨みに思うなら、映子さんではありませんか?

 いえ、敏さんはそんな人ではありません。体は無くなろうと、心は変わりません」

 疲れているのだろうな。と、圭は思った。

 義礼が襲われてから大して経たぬ内に、敏が謎の死を遂げた。さぞかし心を痛めているであろう。

 今、敏の遺体は庭の隅にある納屋に放置されているそうだ。明日にも、田舎から親が引取に来るそうだが、義史の怒りは並大抵ではなく、彬子は口の挟む隙すらないのだとか。

 どんなに慰めたところで、彬子の気持が晴れるとは思えない。どうにかできるならば、助力は厭わないが、圭の力でどうにかなるとは思えない。

 今日の彬子には重い雰囲気が纏わりついていて、圭は逃げるように、書庫に向かった。書庫ならば、しばらくは息がし易いに違いない。

 昼食を終え、再び書庫に上がった時、圭はとんでもない影を見つけ、思わず後退った。

 季節感を無視した、揺れる桜のかんざし。萌黄の地色に、華やかな牡丹をあしらった着物姿の映子が、忍び込んでいたのだ。

 派手派手しい格好は到底、近しい女中が亡くなったとは思えない。

 しかし、どこから忍び込んだのであろうか。階段を上るには、食堂の前を通る必要がある。圭と彬子は食堂におり、絶対に見逃していない自信がある。玄関の開く音も聞いていない。

「どうやって来たのかって、考えているのでしょう?」

 映子は、自分の背後にある両家を分断する壁を指差した。

「あれは壁じゃないのよ」

 よく見れば鍵穴が存在する。映子の手には、二寸ほどの鍵があった。

「ねぇ、敏との約束、教えて上げましょうか?」

 なにを言われようと、心を乱すまい。と思っていたのだが、決心はすぐに破られた。今、最も知りたいことを、教えると言うのだ。

 だが、どこまで信じていいのだろうか。

「この扉を開けておくわ。私の部屋は階段を下りてすぐよ。誰にも内緒で来てくれれば、教えてあげるわ」

「今、教えて下さい」

 映子はさも、嬉しくて堪らないとばかりに笑いながら、体をくねらせた。

「だから、部屋に来てくれれば、教えてあげると言っているでしょう」
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