100 / 126
秘密 三
しおりを挟む
「令嬢の部屋に入るなど、とんでもないことだとは思いませんか?」
「そんなに堅苦しく考えることかしら」
「どうして映子さんの部屋に行かなければならないのですか?」
「私が来てほしいと思っているからだわ」
永遠に抜け出せぬ堂々巡りが始まってしまいそうだ。映子の行動に理論は必要ない。大事なのは、自分がどうしたいのか。だけなのである。
映子の言うなりになるのは癪である。しかし、断れば絶対に教えてはくれまい。常識と意地と怒り、ないまぜの気持が胸に渦巻く。
「三時のお茶の後、来て頂戴。絶対よ」
これ以上なにを聞かれようとも答えぬとばかりに、映子は口を閉じ、厭な色気を振り撒きながら、圭の前を横切る。
人工的な花の匂いがした。
お茶の時間は、重苦しいものとなった。彬子はもちろん、圭もほとんど口を開かず、開けば紅茶を啜ることに専念した。
秘密だと言った。なにか目論見があるに違いない。悔しいけれど、乗るしかないのだ。浅はかな映子のこと、嵌められはすまい。と、圭は自分を慰めた。
嵌められたりはしない。自信はあるが、保険はかけておくに限る。
書庫に戻った圭は、一冊の本を取り出すと、目当ての頁を開き、閉まらないように固定した。万が一に備えて、隼人にはわかるように。
本を仕掛けると、圭は、拗ねる自分を宥めながら、扉に向かった。
足音を忍ばせる。
圭の心配は、映子との関係を疑われることだけ。
金目の物を盗みに入ったと疑われるならまだしも、映子を求めて忍び込んだと思われるくらいなら、考えが古風かもしれないが、死んででも潔白を証明してみせる。と、はなはだ飛躍した覚悟を持って階段を下り、左脇に存在する扉に手を掛けた。
圭を待っていた扉は、容易く開いた。
が、外の明るさとは対照的な薄暗さに、圭は更に心が曇るのを感じた。
なにを考えているのだ? この部屋の主は、花も恥じらう乙女ではないのか?
少なくとも、部屋に存在する三面鏡、ニ竿の箪笥等は、部屋の主を乙女だと知らせるのだが……。
寝台に座っていた映子は、静かに立ち上がると、圭を通り過ぎ、扉に近づいた。
「こちらに向いては嫌よ」
頼まれても向いてやるものか。
心の中で毒づく。
苛立ちは募る。
「そんなに堅苦しく考えることかしら」
「どうして映子さんの部屋に行かなければならないのですか?」
「私が来てほしいと思っているからだわ」
永遠に抜け出せぬ堂々巡りが始まってしまいそうだ。映子の行動に理論は必要ない。大事なのは、自分がどうしたいのか。だけなのである。
映子の言うなりになるのは癪である。しかし、断れば絶対に教えてはくれまい。常識と意地と怒り、ないまぜの気持が胸に渦巻く。
「三時のお茶の後、来て頂戴。絶対よ」
これ以上なにを聞かれようとも答えぬとばかりに、映子は口を閉じ、厭な色気を振り撒きながら、圭の前を横切る。
人工的な花の匂いがした。
お茶の時間は、重苦しいものとなった。彬子はもちろん、圭もほとんど口を開かず、開けば紅茶を啜ることに専念した。
秘密だと言った。なにか目論見があるに違いない。悔しいけれど、乗るしかないのだ。浅はかな映子のこと、嵌められはすまい。と、圭は自分を慰めた。
嵌められたりはしない。自信はあるが、保険はかけておくに限る。
書庫に戻った圭は、一冊の本を取り出すと、目当ての頁を開き、閉まらないように固定した。万が一に備えて、隼人にはわかるように。
本を仕掛けると、圭は、拗ねる自分を宥めながら、扉に向かった。
足音を忍ばせる。
圭の心配は、映子との関係を疑われることだけ。
金目の物を盗みに入ったと疑われるならまだしも、映子を求めて忍び込んだと思われるくらいなら、考えが古風かもしれないが、死んででも潔白を証明してみせる。と、はなはだ飛躍した覚悟を持って階段を下り、左脇に存在する扉に手を掛けた。
圭を待っていた扉は、容易く開いた。
が、外の明るさとは対照的な薄暗さに、圭は更に心が曇るのを感じた。
なにを考えているのだ? この部屋の主は、花も恥じらう乙女ではないのか?
少なくとも、部屋に存在する三面鏡、ニ竿の箪笥等は、部屋の主を乙女だと知らせるのだが……。
寝台に座っていた映子は、静かに立ち上がると、圭を通り過ぎ、扉に近づいた。
「こちらに向いては嫌よ」
頼まれても向いてやるものか。
心の中で毒づく。
苛立ちは募る。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる