長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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開始 四

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 「朝は手が掛からないから、パンを食べる事が多いんだ」

 勇一郎の集中力も失われたらしく、パンが手から落ちた。

「寝るなら俺の部屋を使え。あっちはもう、彼の部屋だから」

「寝れりゃ、どこでも良い」

「じゃあ、廊下で寝ろ」

「訂正。人の寝る場所なら、どこでも良い」

 食べ終えると食器を片付けて、勇一郎は湯殿に向かった。汗を流す為に、水をかぶるのは忘れない。よく目が冴えないものだと感心するが、生半可な眠気では無いのだろう。

 一方で二人は、支度をすると家を出た。勇一郎がいるのなら置いて行こうかとも考えたが、眠っている間は一人でいるも同然な事、助手と紹介した時に圭が嬉しそうな表情をした事を考えて、連れて行くことにした。

 足手まといになるなら、高林家に預ければいい。

 道道、仕事の内容を話す。現在関わっている高林家の事件、有朋との関係。

 屋敷では相変わらず、警察官が偉そうにのさばっていた。隼人は、気に入らない人物として既に記憶されているらしく、用件は分かっているくせに、素直に通してもらえない。

「また、相馬君を呼んで貰えませんか? あぁ、こうして何度も何度も彼の手を煩わせては、気の毒だな、忙しい身なのに」

 大袈裟に、皮肉たっぷりに言うと、警察官が少なからず動揺しているのが理解できた。

 平民とはいえ、権力も財力も持つ高林家で大事にされている人間を煩わせるのは、得策ではない。俗っぽい権力主義、金権主義には堪える言葉に違いあるまい。

「その子供はなんだ」

 どうにか文句を言いたいらしく、大して目敏いとは言いかねるが、圭に目をつけた。

「素性の知れぬ者は入れられんからな」

「それを決めるのは、高林家の人でしょう。とにかく、相馬君を呼んで下さい。

 言っておきますが、俺は彼の依頼を受けて訪ねているのですよ」

 警察官の顔が、茹で蛸のように赤くなる。

「長瀬さん、待っていたのですよ」

 背後からの声に、警察官は飛び上がらんばかりに驚いた後、敬礼をした。 

「俺も早く行きたかったのだけど、邪魔が入ってね」

「邪魔とは失敬な! この男は知らぬ子供を連れていたから」

「僕の友人がおかしな子供を連れて来たと、疑っていたと?」
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