長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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開始 五

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 昨日の隼人への暴言を、有朋は根に持っているらしい。元々他者への興味は薄い代わりに、認めた相手への執着は激しい。

 いわば、この警察官は、有朋の気に入らない人物として記憶されたのである。

「貴方が余計な事を考える必要はありません。

 長瀬さん、どうぞお入り下さい。そちらの方も」

 唇を噛み締め、悔しげな警察官の前を、勝ち誇った態度で横切った。

 屋敷の中は、しんと静まり返っていた。

「社長の意識は戻りましたが、どうやらここ一週間程の記憶を失ったらしいのです」

 殺されそうになりながら、命を取り留めたのだから、運は良かったと言うべきだろう。

 しかし、意識が戻りさえすれば、事件は簡単に解決すると考えていた周りからしてみれば、残念としか言いようがない。

 一応、念の為に。と、義礼に会わせてもらったが、まだ心も本調子ではないらしく、生気のない表情と、億劫そうに話す様が、二日前に会った時の印象とは正反対だった。

 ふと、義礼の視線が、隼人の陰に隠れていた圭に注がれた。時間短縮の為に紹介を端折ったのだが、見つかってしまった。

「誰?」

 圭が名乗ると、義礼は、あ! と声をあげた。何かを言いかけたのだろうが、言葉は途切れて、続きは発せられなかった。

 目は見開かれ、驚愕にも見える。


 申し訳ありません、今日はここまでで。


 医師が慌てたように言い、脈やら熱やらを測り始めた。まずは療養が第一だけに、反抗するわけにもいかず、夫人である彬子から、話を聞く事にした。

 明るい場所で初めて見たが、彬子は思った以上に若かった。隼人とあまり変わるまい。和装の似合う、品の良い女性だが、愛想が無い、取っ付き難い雰囲気が、第一印象だった。

「皆様に伺っているのですが、犯行があったとされる時刻、どちらにお出ででした?」

 夫が大変な目に遭ったばかりなのに、心配そうな様子も見せなければ、狼狽えた様子もない。
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