長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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下町 二

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 有朋と別れると、富岡八幡宮に向かった。深川区のこの辺りは、下町らしい風情があり、賑やかな声に溢れていた。蜻蛉とんぼが、茅の先にとまっているのが、風流である。

 まずは、富岡八幡宮で、事件解決を祈願した。珍しい者に対する、周りの視線が突き刺さる。

 なんと言い表せば良いのだろうか? 珍獣を見るような、妖怪を見るような、好奇と恐怖が入り混じった視線。ここで英國語を話したならば、皆逃げ出すに違いない。

 すみません。と、子供を連れている女性の集まりに向かって、大声を出す。なるべく明るく心がけて。コソコソと近寄って行けば、警戒の末に、逃げられるのがおちである。

 女性達は驚きはしていたが、好奇心が勝ったのであろう、逃げずにいてくれた。

「近所の方ですか?」

 三人の女性達は顔を見合わせながらも、そうだと答えてくれた。三十前後の者ばかりで、内二人は地元に嫁いだ、生まれも育ちもこの辺りなのだとか。

「二十年も前に、相馬という家があったはずなのです。いえ、今もあるかも知れませんが、ご存知ありませんか?」

 地面に丸を書いて、片足で跳ね回っていた子供達が、母親達の周りに集まり、隼人に真っ直ぐ、興味の視線を向けている。大人とは違い、知的好奇心を感じさせた。

「おにさんみたい」

と、素直に口にしたのは、五歳位の女の子だった。兄《あに》さんと聞き間違えたが、鬼であるらしい。つまり、赤鬼と言うことか。

 そうだそうだ。と、他の子供も一緒になって囃し立て始める。言い出した女の子を捕まえて、高い高いをすると、歓声が上がった。女の子は明るい声を出し続ける。

 楽しそうな様子に、次から次に、手が差し出される。順番に高く放り投げ、受け止める事で、子供との距離は縮まった。お陰で、親達の堅かった表情が和らいだ。

「相馬って、どの辺にあったのか、分かる?」

 一人、真剣な表情で考えていた女性が、隼人を見上げた。

「いいえ、相馬本人は五歳だったので、富岡八幡宮を思い出したのが精一杯だったようで」

「まさか、有朋君?」

 五人目は男の子だったので、少々乱暴に振り回していたが、危うく落としそうになった。怯えるどころか男の子は、大喜びしている。まるきり、『花屋敷』状態であった。

「知っているのですか?」
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