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第05章. 海まで行こうよ
【ドライブに】
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6月3日…あの日、有香が舞を僕の部屋に連れてきて
舞の顔を見た時ふと、美波の事が頭に浮かび
ほんの少しだけの罪悪感に襲われた。
実は、舞と久しぶりの再会を果たした1ヶ月ほど前に
僕は美波に誘われてドライブに行った。
少しだけ前に時を戻したいと思う
あれは大学2年になったばかりの4月の終わり頃のこと
僕は風邪をひいて横になっていた。
「ああ、しんどい」なんて言いながら
いつものように隣室のシンちゃんとのん気に昼食をすませ
少し具合もよくなったので
どこかに出かけようかと思いながら
ひと息ついてたら突然の電話。
シンちゃんが
「コウちゃん、女子から電話」
誰だろう?
胸を躍らせて受話器を取ると電話の主は美波だった。
この退屈な時間には絶好のタイミングだな、
なんて思いながら話を聞く
「ムラコウ、今日暇?、私1人でする事ないからどっか遊びに行こう」
僕も暇を持て余し気味だったしシンちゃんと過ごすよりは
美波と遊びに行く方が楽しいに決まってると思い
二つ返事でOKした。
「誰かわかる?」
最初にそう言われて
「いや、女子の声はみんな同じに聞こえるからわからないな」
そう返すと、美波に怒られた。
「美波よ、き・し・だ み・な・み!」
美波と話すのは久しぶりだったから
今から行くって言ってるにも関わらず
ついつい電話で話し込んでしまった。
「もう!誰の声かわかんないくらい、女の子から電話かかってるの?」
「いや、それはものの例えと言うやつで・・・」
口調は強めだったが
美波は決して本気で怒っている様子ではなかった。
美波が下宿にやってきたのは
それから30分くらい経った午後1時半過ぎ。
車のエンジン音がしたのを見計らって腰を上げた。
「ごゆっくり~」
なんてシンちゃんに送り出されて僕は外に出た。
僕は慣れた感じで美波の車に乗り込んだ、
こうして2人だけで出掛けるのは約8ヶ月ぶりだ。
「どこ行く?ムラコウ」
「海か山?やっぱり海かな?」
「前のとこ、行く?」
「おっ、いいね!思い出巡り?」
「何それ?ふふっ」
結局「あの日の海」ではなく
少し遠くの海岸へ行く事になった。
車の中では音楽の話とか大学の話に美波の職場の愚痴や
僕のバンドのことやライブの話など
話題は盛りだくさんだったから
会話が途切れる事はなかった。
そもそも僕にとっては美波のことも
有香同様に「仲のいい友達」イメージだったから
これまでも今日もそんなに「女の子」として
意識してなかったように思う。
ただ美波は仕草や喋り方ひとつを取っても
有香よりも随分「女性的な空気」が
見え隠れしていたのは紛れもない事実だった。
途中で一面に菫が咲いてる花畑を見つけ
「みなみん!ちょっとあれ見て、めっちゃ綺麗だね」
「そんな見た目のムラコウが花を見て感動するなんて何か笑える」
美波はそう言って吹きだした。
「何て失礼な奴だ」
「ははは、怒ってる」
こんなやり取りをしながらも
美波が楽しそうだったので何となくホッとした。
でもその後
「やっぱり音楽やる人はそういう感性が発達してるのかなあ」
そうフォローしてくれた。
僕はいつの頃からか美波のことを
“みなみん”、そう呼んでいた。
他の友人は「みなみちゃん」と呼んでいたので
こう呼ぶのは僕だけだった。
美波もまんざらではない様子だったし
それはまるで僕たちだけしかしない特別な呼び方のようで
ひとり、悦に入っていた。
1時間ほど走っただろうか?
ようやく人気のない海岸に到着して
車を降りると僕たちは
駐車場の自販機でジュースを買った。
「コーラなんて何か子供みたい」
そう言って美波は笑った。
そんな美波の横顔を見て
少しだけ、かわいいと初めて感じた。
二人並んで波打ち際を歩いてると、
どう見てもお似合いのカップルなんだろうけど
それでも僕の中で美波はやっぱり
仲のいい友達のイメージでしかなかった。
舞の顔を見た時ふと、美波の事が頭に浮かび
ほんの少しだけの罪悪感に襲われた。
実は、舞と久しぶりの再会を果たした1ヶ月ほど前に
僕は美波に誘われてドライブに行った。
少しだけ前に時を戻したいと思う
あれは大学2年になったばかりの4月の終わり頃のこと
僕は風邪をひいて横になっていた。
「ああ、しんどい」なんて言いながら
いつものように隣室のシンちゃんとのん気に昼食をすませ
少し具合もよくなったので
どこかに出かけようかと思いながら
ひと息ついてたら突然の電話。
シンちゃんが
「コウちゃん、女子から電話」
誰だろう?
胸を躍らせて受話器を取ると電話の主は美波だった。
この退屈な時間には絶好のタイミングだな、
なんて思いながら話を聞く
「ムラコウ、今日暇?、私1人でする事ないからどっか遊びに行こう」
僕も暇を持て余し気味だったしシンちゃんと過ごすよりは
美波と遊びに行く方が楽しいに決まってると思い
二つ返事でOKした。
「誰かわかる?」
最初にそう言われて
「いや、女子の声はみんな同じに聞こえるからわからないな」
そう返すと、美波に怒られた。
「美波よ、き・し・だ み・な・み!」
美波と話すのは久しぶりだったから
今から行くって言ってるにも関わらず
ついつい電話で話し込んでしまった。
「もう!誰の声かわかんないくらい、女の子から電話かかってるの?」
「いや、それはものの例えと言うやつで・・・」
口調は強めだったが
美波は決して本気で怒っている様子ではなかった。
美波が下宿にやってきたのは
それから30分くらい経った午後1時半過ぎ。
車のエンジン音がしたのを見計らって腰を上げた。
「ごゆっくり~」
なんてシンちゃんに送り出されて僕は外に出た。
僕は慣れた感じで美波の車に乗り込んだ、
こうして2人だけで出掛けるのは約8ヶ月ぶりだ。
「どこ行く?ムラコウ」
「海か山?やっぱり海かな?」
「前のとこ、行く?」
「おっ、いいね!思い出巡り?」
「何それ?ふふっ」
結局「あの日の海」ではなく
少し遠くの海岸へ行く事になった。
車の中では音楽の話とか大学の話に美波の職場の愚痴や
僕のバンドのことやライブの話など
話題は盛りだくさんだったから
会話が途切れる事はなかった。
そもそも僕にとっては美波のことも
有香同様に「仲のいい友達」イメージだったから
これまでも今日もそんなに「女の子」として
意識してなかったように思う。
ただ美波は仕草や喋り方ひとつを取っても
有香よりも随分「女性的な空気」が
見え隠れしていたのは紛れもない事実だった。
途中で一面に菫が咲いてる花畑を見つけ
「みなみん!ちょっとあれ見て、めっちゃ綺麗だね」
「そんな見た目のムラコウが花を見て感動するなんて何か笑える」
美波はそう言って吹きだした。
「何て失礼な奴だ」
「ははは、怒ってる」
こんなやり取りをしながらも
美波が楽しそうだったので何となくホッとした。
でもその後
「やっぱり音楽やる人はそういう感性が発達してるのかなあ」
そうフォローしてくれた。
僕はいつの頃からか美波のことを
“みなみん”、そう呼んでいた。
他の友人は「みなみちゃん」と呼んでいたので
こう呼ぶのは僕だけだった。
美波もまんざらではない様子だったし
それはまるで僕たちだけしかしない特別な呼び方のようで
ひとり、悦に入っていた。
1時間ほど走っただろうか?
ようやく人気のない海岸に到着して
車を降りると僕たちは
駐車場の自販機でジュースを買った。
「コーラなんて何か子供みたい」
そう言って美波は笑った。
そんな美波の横顔を見て
少しだけ、かわいいと初めて感じた。
二人並んで波打ち際を歩いてると、
どう見てもお似合いのカップルなんだろうけど
それでも僕の中で美波はやっぱり
仲のいい友達のイメージでしかなかった。
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