ゲームオーバー

Act 4. 妄想癖

【生存競争の果て】

　いや、待てよ？
私は過去に一度似たような体験をしたことがある。

数年前のことだ、
私の部屋から決まって同じ時間に何か音がする、
家族の一人がそんなことをが言い始めた。

まさか、そんなことが？
最初は全くその話を真に受けなかった。

するとある日の明け方、私が眠っていると
微かに何かの音楽が聴こえる。

聞き覚えのある着信音、

その発信源は戸棚の引き出しの中
私が昔使っていた古い携帯電話からだった。

確認するとこの時間にアラーム設定をしていたが
これまでこんな現象はなかった、
これは何かの前触れでは…とも考えた。

そんな現象を体験した数日後、妻の叔父が急死した。

数日前から突然同じ時間に携帯から流れた曲は
叔父の家を訪問する時にいつも車で流れていた、
娘のお気に入りの曲だった。

この時、こう言った不可解な出来事は何かしら
不吉な出来事と関連してしていると感じた。


　そんなことを思い出しながら
この現象も何かの前兆なのでは？そう考えてみた。

"あの曲" が直結しているのは
ヒトミとミサキ、二人の推しメン。

やはりこれは私の揺れる想いに対しての
どちらか二人からの何かしらのメッセージ？

最終的な推しメンはヒトミ？
それともミサキ…？

　実は恥ずかしながらこの日のイベントでも
まだ私の気持ちは微妙に揺れていた。

グループ内に存在する一推しと二推し…

人気や支持率がまだまだこれから、のグループにおいては
熾烈なファン獲得は例え仲間内、親友であっても
そこは下剋上である。

そのことを理解しつつも、これまでは
非常にフラットな感情で同じステージに立つ
二人のパフォーマンスを観ることが出来ていた。

何故かと言えば当時、僕をファンとして認知していたのは
ミサキだけだったからだ。

それが今やイベントやSNSを通じて
ヒトミとの会話やコンタクトが増えるにつれ

そのバランスが微妙に崩れ始めた。

　実はこの日の番組収録中も私は
ミサキからの視線をいつも以上に感じていた…
ような気がした。

私の席は1階27列目でほぼ最後列

そこからステージに立つメンバーの視線を感じるなど
自意識過剰にもほどがある、と普通なら笑われるだろう。

しかし以前聞いたことがある、

メンバーの名前が書かれた応援グッズなどを持っていると
ステージから客席は想像以上によく見えるのだと。