異世界に行ったら記憶がなくなってここがどこだかわかりません。

シンカイ

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ブチギレ

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 右も左も分からぬ数時間前に出会ったローブの人が俺の目の前に立っていた。出会った頃の俺はローブの人の顔をフードのせいで見ることができなかった。

 ──まぁ余計な詮索をするのもなんだしなぁ。
 とか思っていた。だが、俺は今その事を激しく後悔している。それは──

 「やア、ご機嫌はイカがですカ?」

 「………」

 「おやおヤ何やらかおイろがおかしいデスよ?大丈夫でスか?」

 ──コノヤロウ……!

 思わず拳を固く握りしめる。目の前の奴は結論からいえば人間ではなかった。今まで正面からコイツを見据えることがなく、今まで分からなかった。こんな見ていて気分の悪くなる、暗く、青くぬらぬらとテカっている身体なのにも関わらずに。
 そして目の前の気持ち悪い奴は相変わらずこちらの様子も気にすることはなく、一方的に喋り続ける。

 「──っかしあそコマで簡単についてキテくれる方がいるとハ思いもしまセンでしたよ?普通なラばもっと警戒して然るベキなんですガね?それをこの方は完全ニ好意だト受けとりホイホイとついてキマしたよ!いやぁおかゲさまで笑いヲこらえるのニ必死でしタヨ!」

 クックックと押し殺そうとして漏れ聞こえてくる、笑い声が要所要所で聞こえてくる。

 『何時までも笑ってんじゃねぇ!』

 そう怒鳴りつけたくなる気持ちをグッとこらえる。

──落ち着け。怒るな俺、我慢しろ。

 そう自分に言い聞かせる。しかし──
 俺はふと今までのことを思い出していた。何処とも知れぬ場所に放り出され、自らの記憶をほぼ全て失い、途方に暮れ人里を探しているうちにコイツに出会った。案内をされるがままに付いていき、またもや名前も知らぬ土地に放り出され、入った場所が魔の巣窟という。ホントに踏んだり蹴ったりという言葉が一番ふさわしい目に遭っていた。

 ──おんや?俺コイツに遭遇してから碌な目にあってなくね?

 そう、認識した瞬間怒濤の怒りの荒波が俺の心に、渦を巻いていく。あとで考えればこれは俗にいう八つ当たり・・・・・というヤツだと云うことに気付くが、御覧の通り俺は冷静ではなかった。
 ブルブルと握りしめた拳がいれすぎた力により震える。

 ──目の前のコイツが俺の前に現れさえしなければ、俺はきっとこんな目に遭っていなかった。そうだ!コイツが全て悪いんだ!!

 未だに得意気にベラベラといつの間にか、他の人をどうやって言葉巧みに連れてきたのか等と話している奴を見据える。そして──

 「お前が─の前──れな──ば……!!」

 「おヤ?なんでショウか?」

 「お前が!俺の前に!現れなければなぁ!!」

 「!?」

 俺の右腕が淡く光を放つ。

 『壱の起動条件、憤怒の感情を確認。魂の一撃ソウルスマッシュ発動します。』

 頭の中に感情の起伏のない声が響く。俺はその事に特に疑問もなにも感じなかった。

 ──アイツをぶちのめす。

 それだけを考えて。
 俺が何かしようとしたことに流石に気付いたのだろう、緑の奴等が俺を暴力で屈服させようと各々の得意な武器を振りかぶる。だが──

 「どけぇっ!!」

 「グギャッ!?」

 「ギアッ!?」

 「ゲェッ!?」

 「ギャッ!」

 俺の叫び声を全身に浴びた奴等は短く悲鳴をあげ、その場に武器を振りかざしたままの姿勢で立ち尽くす。そしてそのまま俺は──

 「な、ナンですカこの力は!?ひ、ヒィやめなサイ!やメ──!」

 「くらっとけやくそったれが!!」

  握りしめた拳を全力で奴の醜悪な顔に叩きつける。
 ドゴンッ!
 体の芯にまで響くような音と共に奴の顔が大きく陥没し、文字通り奴の体が飛んでいく。夥しい体液が奴の飛んでいった軌跡を彩る。そして奴の体は薄い土の壁を割り、漸く停止した。

 ──な、なんだ今のは!?

 そこまで見届けて俺は漸く自身に起きた異変に気づいた。いつに間にか右腕が発光している。そして右腕に描かれた『壱』の文字と組み合わせて輪になっていた紋様が複雑な螺旋状の帯になっている。どうやらその部分が強く発光しているみたいだ。だからなのかその部分が少し熱を帯びているらしく、地味に熱い。
 少しすると段々と発光が収まっていき、次の瞬間にはフッと消えていた。俺はその光景をぼけーっと眺めてしまった。だから背後に忍び来る影に気づけなかった。
 次の瞬間、後頭部に強い衝撃が伝わってきた。俺はその痛みを感じながら、

──あれ?何か既視感デジャブ……

 とか考え、その間に襲い来る微睡みにより、俺は再び気を失ったのだった。

 

 

 
 

 

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