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邂逅
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目覚めよ……。
目覚めよ、試練を受けし者よ……。
──なんだ?何か、声が聞こえる。
辺りに威厳のある声が響く。閉じていた目を開く。すると、辺りは壁が存在するかどうかも定かではない純白の空間が広がっていた。
そして俺の正面には荘厳な装飾を施された縁を金色に彩った玉座がある。
目覚めたか……、試練を受けし者よ……。
──試練?何を言っているんだ?
「あの、すみませんがどなたでしょうか?生憎姿を確認できないのでひたすら不気味なだけなのですが」
ふむ…いいだろう……。だが、私は既にお前の目の前にいるのだがな……。
──え?
何時から居たのだろう。いつの間にか俺の正面には厳つい顔の老人が座っていた。
「さて、こうして私の姿も視認できたようだし、少し話をしてやる」
「は、はなし?」
「ふむ、やはり試練の最中では記憶は戻らぬか……。まぁ、分かっていたことではあるが……、ふぅむ」
「すみません、先程から言っているその試練とは何の事ですか?話がさっぱり見えてこないんですが」
「ああ、別にそちらが気にすることではない。だが……。」
「?」
「ふむ。お前、自分の名前は分かっているか?」
「申し訳ないのですが、何も思い出せないんですよ。自分の名前すらも」
「そうか……。ならば流石に己の名が分からぬと言うのは不便であろう。お前の名前を教えてやろう」
目の前の厳つい老人は何事かを呟きこちらにゆっくりと掌を向ける。そして──
「『解放』」
そう唱えた瞬間、掌から小さな鍵を象った仄かに青い光が放たれ俺の頭に吸い込まれるように命中した。その瞬間俺は自分の名前を無意識のうちに呟いた。
「み、どう、しん、いち……?」
「そうだ、それがお前の名前だ」
「俺の…名前…」
今まで思い出せなかったもののうちの1つが当たり前のように脳内に存在していた。
「掟によりこれ以上の干渉は叶わぬ。すまない…」
「い、いえ!ありがとうございます!」
「ふむ、では話を始めるとしよう…」
「は、はい」
「お主はとある理由と特例により、試練を与えられた。そしてそれはお前自身が望んだことでもある。記憶がないのもその為だ。
そしてお前がいるのは私の管轄地ルガニアスである。お前はそこで試練を見事修めなくてはならない。見事試練を果たした暁にはお前にはとある選択肢が与えられる。どちらを選択するかは無論お前次第である。以上だ」
──……え?
あまりにもつらつらと書類か何かを朗々と音読していくような口調で長々と話していたので、俺の頭は絶賛大混乱中でした。
──え~と?俺は今試練を受けていて?それは俺が自ら望んだことで、記憶がないのはそのせい。んで、俺がいた場所はルガニアスという地名?国の名前?まぁよくわからんがそういう名称の場所で、俺はそこで試練をクリアしないといけない……と。
何とかそこまで内容を自分なりにまとめたところで、質問を投げかける。
「あの、試練についてなんですけど、試練て具体的には何をすれば…?」
「それは掟により教えることはできない…。」
──マジかよ。内容分からないまま試練受けたって俺ってバカだろ!超のつくさぁ!
思わず自らの愚行の結果の己の苦労に溜め息が出た。
「ハァ……」
「さぁ、他に質問はないか?無いのならばもといた場所に還すだけなのだが…」
その発言を聞いて俺は慌ててとある事を聞く。
「あ、じゃあこの俺の腕にある紋様が何か教えてください!」
と、自分の右腕を前に出す。すると──
「それはこの世界にきて発現した己の能力だ。それらは全てお前の役に必ずたつ。大事にするがよい…。……む!?」
老人は不思議なものを視たかのような反応を示した。俺は思わず背筋が竦み上がってしまった。
「え、な、なんでしょうか?」
取り敢えずそんな反応を示した理由が気になると言うこともあり、そう質問した。
「すまぬ。どうやら覚醒し損ねた能力があるようなのでな。このままだとお前の生活に何かと支障をきたしてしまうやもしれぬ。少し刺激を感じるだろうが少しの間我慢してくれ」
そういうなりあっという間にこちらに接近し、俺の左腕を掴む。
「『解錠』ッ!」
一際大きな声で唱えた。その瞬間──
ガキッ!バヂンッ!
「うあっ!」
ビクッと衝撃により身体を仰け反らせる。しかし、その衝撃による痛みはなかった。
「ふむ、終わったぞ。これがお前の能力だ、見てみるがいい…。」
老人の手が俺の左腕から離れたあと、言われた通り見てみる。そこには──
『肆』 『伍』 『陸』 『Ξ』
新たに記された紋様がそこにあった。しかし、ひとつだけ、完全に意味の分からない羅列の紋様があった。
「ふむ。なるほど、こういうことであったか」
どうやらこの訳の分からない紋様について老人は知っているようだった。試しに聞いてみるものの──
「…………」
無言を貫いていた。
「さぁ、それではそろそろ送ろう…。お前の試練が無事に成功することを祈る……」
そういうと、また何事かを呟き両手を広げ老人がその両目をおもむろに閉じて、天を仰いだ。
「『霊魂瞬還』」
そう老人が唱えた瞬間、俺の周りをぐるりと一周するように光のカーテンが出現した。そのカーテンは段々光を帯び始め、俺の視界がカーテンさえも視認できなくなるほど光で埋め尽くされた頃、俺の意識は暗転した。
「行ったか……」
「ああ」
「どうだった?」
「ふむ。そうだな、どことなく面影が残っていた」
「そうか、俺も会いたかったなぁ」
「ふむ、気持ちは分かるが我慢せい。なにしろ掟だからのぅ」
「っち、わーかってるよ!……まぁ試練が終わればまた会えるしなぁ」
「ふむ、そうじゃなぁ」
「ま、気長に待つとしますかね」
「それがよかろう」
2つの人影が語り合う。いつか来るであろう邂逅の時。それは果たして数十年後なのか、それとも数日後か。例え神であろうと分からぬその時を想像し、二人の神は話を弾ませた。お互いに同じ思いを胸に抱いて──。
目覚めよ、試練を受けし者よ……。
──なんだ?何か、声が聞こえる。
辺りに威厳のある声が響く。閉じていた目を開く。すると、辺りは壁が存在するかどうかも定かではない純白の空間が広がっていた。
そして俺の正面には荘厳な装飾を施された縁を金色に彩った玉座がある。
目覚めたか……、試練を受けし者よ……。
──試練?何を言っているんだ?
「あの、すみませんがどなたでしょうか?生憎姿を確認できないのでひたすら不気味なだけなのですが」
ふむ…いいだろう……。だが、私は既にお前の目の前にいるのだがな……。
──え?
何時から居たのだろう。いつの間にか俺の正面には厳つい顔の老人が座っていた。
「さて、こうして私の姿も視認できたようだし、少し話をしてやる」
「は、はなし?」
「ふむ、やはり試練の最中では記憶は戻らぬか……。まぁ、分かっていたことではあるが……、ふぅむ」
「すみません、先程から言っているその試練とは何の事ですか?話がさっぱり見えてこないんですが」
「ああ、別にそちらが気にすることではない。だが……。」
「?」
「ふむ。お前、自分の名前は分かっているか?」
「申し訳ないのですが、何も思い出せないんですよ。自分の名前すらも」
「そうか……。ならば流石に己の名が分からぬと言うのは不便であろう。お前の名前を教えてやろう」
目の前の厳つい老人は何事かを呟きこちらにゆっくりと掌を向ける。そして──
「『解放』」
そう唱えた瞬間、掌から小さな鍵を象った仄かに青い光が放たれ俺の頭に吸い込まれるように命中した。その瞬間俺は自分の名前を無意識のうちに呟いた。
「み、どう、しん、いち……?」
「そうだ、それがお前の名前だ」
「俺の…名前…」
今まで思い出せなかったもののうちの1つが当たり前のように脳内に存在していた。
「掟によりこれ以上の干渉は叶わぬ。すまない…」
「い、いえ!ありがとうございます!」
「ふむ、では話を始めるとしよう…」
「は、はい」
「お主はとある理由と特例により、試練を与えられた。そしてそれはお前自身が望んだことでもある。記憶がないのもその為だ。
そしてお前がいるのは私の管轄地ルガニアスである。お前はそこで試練を見事修めなくてはならない。見事試練を果たした暁にはお前にはとある選択肢が与えられる。どちらを選択するかは無論お前次第である。以上だ」
──……え?
あまりにもつらつらと書類か何かを朗々と音読していくような口調で長々と話していたので、俺の頭は絶賛大混乱中でした。
──え~と?俺は今試練を受けていて?それは俺が自ら望んだことで、記憶がないのはそのせい。んで、俺がいた場所はルガニアスという地名?国の名前?まぁよくわからんがそういう名称の場所で、俺はそこで試練をクリアしないといけない……と。
何とかそこまで内容を自分なりにまとめたところで、質問を投げかける。
「あの、試練についてなんですけど、試練て具体的には何をすれば…?」
「それは掟により教えることはできない…。」
──マジかよ。内容分からないまま試練受けたって俺ってバカだろ!超のつくさぁ!
思わず自らの愚行の結果の己の苦労に溜め息が出た。
「ハァ……」
「さぁ、他に質問はないか?無いのならばもといた場所に還すだけなのだが…」
その発言を聞いて俺は慌ててとある事を聞く。
「あ、じゃあこの俺の腕にある紋様が何か教えてください!」
と、自分の右腕を前に出す。すると──
「それはこの世界にきて発現した己の能力だ。それらは全てお前の役に必ずたつ。大事にするがよい…。……む!?」
老人は不思議なものを視たかのような反応を示した。俺は思わず背筋が竦み上がってしまった。
「え、な、なんでしょうか?」
取り敢えずそんな反応を示した理由が気になると言うこともあり、そう質問した。
「すまぬ。どうやら覚醒し損ねた能力があるようなのでな。このままだとお前の生活に何かと支障をきたしてしまうやもしれぬ。少し刺激を感じるだろうが少しの間我慢してくれ」
そういうなりあっという間にこちらに接近し、俺の左腕を掴む。
「『解錠』ッ!」
一際大きな声で唱えた。その瞬間──
ガキッ!バヂンッ!
「うあっ!」
ビクッと衝撃により身体を仰け反らせる。しかし、その衝撃による痛みはなかった。
「ふむ、終わったぞ。これがお前の能力だ、見てみるがいい…。」
老人の手が俺の左腕から離れたあと、言われた通り見てみる。そこには──
『肆』 『伍』 『陸』 『Ξ』
新たに記された紋様がそこにあった。しかし、ひとつだけ、完全に意味の分からない羅列の紋様があった。
「ふむ。なるほど、こういうことであったか」
どうやらこの訳の分からない紋様について老人は知っているようだった。試しに聞いてみるものの──
「…………」
無言を貫いていた。
「さぁ、それではそろそろ送ろう…。お前の試練が無事に成功することを祈る……」
そういうと、また何事かを呟き両手を広げ老人がその両目をおもむろに閉じて、天を仰いだ。
「『霊魂瞬還』」
そう老人が唱えた瞬間、俺の周りをぐるりと一周するように光のカーテンが出現した。そのカーテンは段々光を帯び始め、俺の視界がカーテンさえも視認できなくなるほど光で埋め尽くされた頃、俺の意識は暗転した。
「行ったか……」
「ああ」
「どうだった?」
「ふむ。そうだな、どことなく面影が残っていた」
「そうか、俺も会いたかったなぁ」
「ふむ、気持ちは分かるが我慢せい。なにしろ掟だからのぅ」
「っち、わーかってるよ!……まぁ試練が終わればまた会えるしなぁ」
「ふむ、そうじゃなぁ」
「ま、気長に待つとしますかね」
「それがよかろう」
2つの人影が語り合う。いつか来るであろう邂逅の時。それは果たして数十年後なのか、それとも数日後か。例え神であろうと分からぬその時を想像し、二人の神は話を弾ませた。お互いに同じ思いを胸に抱いて──。
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