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そこはかとなく強いお方
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月光に映える赤色はサーシャの腕を伝い、指先から地面へと滴り落ちる。
絶句する他に、僕がその光景に対して返せる行動を思い付かなかった。最悪の想定に至らずとも、然として好ましくはない。
手負いのサーシャが対峙しているのは、ウルフと呼ばれる狼の見た目を模した魔物。一般人が群れたウルフを相手にするのは自殺行為に等しい。が、いま見えているウルフは一頭のみ。
最大にして唯一の問題は、他でもないサーシャ。
見たところ損傷箇所は腕だけで、自力で移動を行えるようではあるものの、ウルフとの距離が近く、見るからに怯えきっている様子。
この状況で僕が一番に優先させなければならないのは、他ならぬサーシャの身の安全。驚異の排除は二の次。故に、困難を極める。
ウルフにばかり気を取られればサーシャへのフォローが遅れる。返ってサーシャへの気遣いを過ぎれば僕自身の命が危ぶまれる。ここで僕が命を落とす訳にはいかない。ノースさんの元へサーシャを送り帰すまで、僕は死ぬ訳にはいかない。もっと言えば、戦えない状態に陥る訳にはいかない。
思考を巡らす間を突いて、サーシャの横顔が僕を見てしまった。
「クロ……」
息を飲んだのと同時に、世界が静止した。
サーシャの見せた隙を見逃さなかったウルフは、鋭い牙を剥いてサーシャへ飛び掛かる。
間に合わない――と感じた僕に、僕が杞憂だと知らせてきた。
望めば掴める。欲すれば与えられる。
僕は僕に、この『力』を思い出させた。
腰元の短刀を引き抜き、願う。
願いは不可思議な力に依って叶えられ、僕の身は空間を捻じ曲げたかのようにウルフとサーシャとの間に収まり、抜いた所作のまま短刀を振り抜く。
瞬間、ずっしりとした重みが右腕に伝わる。
次いで聞こえて来るのは、後方でサーシャが息を飲む小さな音。前方から聞こえて来るのは、ウルフの上げた甲高い悲鳴。
永遠のように長いと思えた一瞬は、その一連を経て通常の一瞬へと戻る。瞬間と一瞬の連続を紡いで時間は等間隔に一刻を刻み続ける。
「クロ、どうやって」
短刀での一撃は完全にウルフの喉元を捉えていた。纏う灰色の毛は鮮血に濡れ、止めどもなく滴り落ちる。荒い息遣いは、ウルフの命が残り僅かであるという信号。
驚愕の一声を上げるサーシャへの配慮も最優先事項に挙がるが、今はそれ以上に絶え絶えとなっている驚異へのトドメが先だ。
瀕死に至ってなおウルフの目は鋭さを排しておらず、僕たちを睨む。先とは比べるべくもない驚異に対して、僕の関心は無のそれに近しいものになっていた。
生き物を殺すという行為。命を奪うという行為。
アドレナリンの過剰分泌が麻痺させていた感情は、昂ぶるどころか急速な鎮静をみせる。
ウルフの唸り声は、前足が折れるのと同時に止む。
「クロ、ねえクロ!」
突然、サーシャが僕の身を揺らす。
ハッとして振り返ってみると、サーシャは今にも泣きそうな顔で僕を見ていた。
「違うの、子供を守ろうとして……」
わなわなと溢れ出す月色の涙を見てかた、サーシャの指差す先を見る。
湖の外縁を沿って指の先を見て行くと、少し離れた場所で二匹の小さなウルフがこちらを眺めている姿が見えた。
僕は、誤った行為を犯してしまったのか。
いや、サーシャを守る為だった。
けれど、サーシャの心は今、確かに傷ついてしまっている。
僕は、僕がすべきことは、なんだ。
「ごめんなさい」
サーシャが両手で顔を覆う。
チラと後ろのウルフの様子を確認すると、腹が大きく膨張と収縮を繰り返し始め、もう間も無く、といった具合だ。
それを悟ってか、子ウルフたちが親の元へ駆け寄ってきた。僕たちの存在など意にも介さない様子で。
罪悪感が僕の喉を締める。
呼吸が辛くなる。
そんな刹那、再び僕が先程の言葉を復唱した。
「望めば、掴める」
願う。
不可思議なあの力へと願う。
このウルフの命を救いたい、そう願う。
「な、なにっ?!」
サーシャの声を聞いた僕がとっさに目を開くと、背後から眩い光が僕の背を伝って漏れていくのが見えた。
振り返ると、サーシャの左手が光を纏っていた。光は次第に収束して行く。と、
「わたしなら、救える?」
サーシャは唐突に何かを思い至った様子で呟きを漏らし、ゆっくりとした歩みでウルフの方へ向かい始める。
子ウルフたちが警戒した様子で可愛げのある鳴き声でサーシャを威嚇する。
しかしサーシャは落ち着いた口調で告げた。
「大丈夫……わたしが助けるから」
まるでその言葉を子ウルフたちが理解したかのように、二匹の子ウルフたちはサーシャの歩むべき道を空ける。
サーシャがウルフの首元へ手を当てがうと、先程の白いものとは違う淡い緑色の光がその手を中心に広がる。
優しいその緑光は、サーシャらしい色味に思えた。
しばしの発光を続けた後、サーシャの手はゆっくりとウルフの体から離れる。
「もう、大丈夫だよ」
サーシャが子ウルフたちにそう告げると、子ウルフたちはまたしてもその言葉を理解したかのように親ウルフの元へと急いだ。
すると、先まで力なく瞑りがちだった両目はしっかりと見開き始め、未だ体を起こせないまでも、近づいてきた子ウルフたちを優しく舐めて安心させている。
「サーシャ」
「なんでだろう体が勝手に動いて……ううん、違う。わたしなら助けられるって、そう思ったの」
もしかしたら、先程の僕と同じような感覚だったのだろうか。
いや、そもそも僕のこの不可思議な力がサーシャの身に力を与えたのだろうか。
考察は尽きないが、ともあれ大団円の様相を呈してきてくれたのが何よりもだ。
これ以上ウルフたちを刺激したくなかった僕たちは、静かに湖を後にすることにした。
「あの、クロ?」
どことなく喋り辛いと思っていた空気を裂いたのは、遠慮がちなサーシャの声だった。
「その、ね……ありがとう」
「あ、うん」
改まってお礼を言われるとは思っていなかった僕は、少しぎこちない返事をしてしまった。
「ウルフの子供とね、遊んでたんだ」
「うん」
「そしたらね、お母さんが出てきて……」
サーシャの足がふと止まった。
「怖かった。すっごく怖かった」
「うん」
「わたしはただ寂しかっただけなのにって、そう思っちゃった」
少しずつ震えだす声。
「お父さんにもクロにも、分かって貰えなくて」
どう返すべきか迷った僕は、敢えて告げた。
「ノースさんは分かってくれてたと思うよ。サーシャが不安だったこととか、応援してもらいたがってたことも、全部」
サーシャも分かってたはずだ。
分かってはいてもそれを上手く表現できなくて、それでも発しようとした結果、今みたいな物言いになってしまったんだ。
「うん……だからね、余計に嫌になったの」
自分が抱えてしまった理不尽だと思う気持ち。何もかもが上手くいかないもどかしさ、それを感じ得てしまった自分への嫌悪感。
僕の知るサーシャは昔から優しい子だった。それは今も変わらず、むしろ色々なことが分かり始めてきたせいで余計にその優しさは自分への厳しさとなってしまったんだ。
抱えなくていいようなことも全部、抱えてしまう。
「今朝サーシャが僕を誘ってくれた時さ、本当はすごく嬉しかったよ」
「えっ……」
「サーシャってさ、普段からあんまりワガママとか言わないしさ、ああやって頼られたのが素直に嬉しかったんだ」
自分を取り戻してからだいぶ経ち、気持ちの面でも整理がつき始めていた今となり、色々な記憶に実感が伴い始めてきていた。
「なら、どうして……」
「言った通りだよ。サーシャの中でどうしたいかをしっかりと決めてくれないと、この先つまずいた時に辛い思いをするのはサーシャ自身だから。だから、自分の中でしっかりとした目標を決めてもらいたかったんだ」
サーシャは少しだけ目を瞑り、何かを決心したように目を開いた。その二つの翡翠にはもう、曇りも翳りもない。
「わたし――冒険者アイドルになりたい!」
絶句する他に、僕がその光景に対して返せる行動を思い付かなかった。最悪の想定に至らずとも、然として好ましくはない。
手負いのサーシャが対峙しているのは、ウルフと呼ばれる狼の見た目を模した魔物。一般人が群れたウルフを相手にするのは自殺行為に等しい。が、いま見えているウルフは一頭のみ。
最大にして唯一の問題は、他でもないサーシャ。
見たところ損傷箇所は腕だけで、自力で移動を行えるようではあるものの、ウルフとの距離が近く、見るからに怯えきっている様子。
この状況で僕が一番に優先させなければならないのは、他ならぬサーシャの身の安全。驚異の排除は二の次。故に、困難を極める。
ウルフにばかり気を取られればサーシャへのフォローが遅れる。返ってサーシャへの気遣いを過ぎれば僕自身の命が危ぶまれる。ここで僕が命を落とす訳にはいかない。ノースさんの元へサーシャを送り帰すまで、僕は死ぬ訳にはいかない。もっと言えば、戦えない状態に陥る訳にはいかない。
思考を巡らす間を突いて、サーシャの横顔が僕を見てしまった。
「クロ……」
息を飲んだのと同時に、世界が静止した。
サーシャの見せた隙を見逃さなかったウルフは、鋭い牙を剥いてサーシャへ飛び掛かる。
間に合わない――と感じた僕に、僕が杞憂だと知らせてきた。
望めば掴める。欲すれば与えられる。
僕は僕に、この『力』を思い出させた。
腰元の短刀を引き抜き、願う。
願いは不可思議な力に依って叶えられ、僕の身は空間を捻じ曲げたかのようにウルフとサーシャとの間に収まり、抜いた所作のまま短刀を振り抜く。
瞬間、ずっしりとした重みが右腕に伝わる。
次いで聞こえて来るのは、後方でサーシャが息を飲む小さな音。前方から聞こえて来るのは、ウルフの上げた甲高い悲鳴。
永遠のように長いと思えた一瞬は、その一連を経て通常の一瞬へと戻る。瞬間と一瞬の連続を紡いで時間は等間隔に一刻を刻み続ける。
「クロ、どうやって」
短刀での一撃は完全にウルフの喉元を捉えていた。纏う灰色の毛は鮮血に濡れ、止めどもなく滴り落ちる。荒い息遣いは、ウルフの命が残り僅かであるという信号。
驚愕の一声を上げるサーシャへの配慮も最優先事項に挙がるが、今はそれ以上に絶え絶えとなっている驚異へのトドメが先だ。
瀕死に至ってなおウルフの目は鋭さを排しておらず、僕たちを睨む。先とは比べるべくもない驚異に対して、僕の関心は無のそれに近しいものになっていた。
生き物を殺すという行為。命を奪うという行為。
アドレナリンの過剰分泌が麻痺させていた感情は、昂ぶるどころか急速な鎮静をみせる。
ウルフの唸り声は、前足が折れるのと同時に止む。
「クロ、ねえクロ!」
突然、サーシャが僕の身を揺らす。
ハッとして振り返ってみると、サーシャは今にも泣きそうな顔で僕を見ていた。
「違うの、子供を守ろうとして……」
わなわなと溢れ出す月色の涙を見てかた、サーシャの指差す先を見る。
湖の外縁を沿って指の先を見て行くと、少し離れた場所で二匹の小さなウルフがこちらを眺めている姿が見えた。
僕は、誤った行為を犯してしまったのか。
いや、サーシャを守る為だった。
けれど、サーシャの心は今、確かに傷ついてしまっている。
僕は、僕がすべきことは、なんだ。
「ごめんなさい」
サーシャが両手で顔を覆う。
チラと後ろのウルフの様子を確認すると、腹が大きく膨張と収縮を繰り返し始め、もう間も無く、といった具合だ。
それを悟ってか、子ウルフたちが親の元へ駆け寄ってきた。僕たちの存在など意にも介さない様子で。
罪悪感が僕の喉を締める。
呼吸が辛くなる。
そんな刹那、再び僕が先程の言葉を復唱した。
「望めば、掴める」
願う。
不可思議なあの力へと願う。
このウルフの命を救いたい、そう願う。
「な、なにっ?!」
サーシャの声を聞いた僕がとっさに目を開くと、背後から眩い光が僕の背を伝って漏れていくのが見えた。
振り返ると、サーシャの左手が光を纏っていた。光は次第に収束して行く。と、
「わたしなら、救える?」
サーシャは唐突に何かを思い至った様子で呟きを漏らし、ゆっくりとした歩みでウルフの方へ向かい始める。
子ウルフたちが警戒した様子で可愛げのある鳴き声でサーシャを威嚇する。
しかしサーシャは落ち着いた口調で告げた。
「大丈夫……わたしが助けるから」
まるでその言葉を子ウルフたちが理解したかのように、二匹の子ウルフたちはサーシャの歩むべき道を空ける。
サーシャがウルフの首元へ手を当てがうと、先程の白いものとは違う淡い緑色の光がその手を中心に広がる。
優しいその緑光は、サーシャらしい色味に思えた。
しばしの発光を続けた後、サーシャの手はゆっくりとウルフの体から離れる。
「もう、大丈夫だよ」
サーシャが子ウルフたちにそう告げると、子ウルフたちはまたしてもその言葉を理解したかのように親ウルフの元へと急いだ。
すると、先まで力なく瞑りがちだった両目はしっかりと見開き始め、未だ体を起こせないまでも、近づいてきた子ウルフたちを優しく舐めて安心させている。
「サーシャ」
「なんでだろう体が勝手に動いて……ううん、違う。わたしなら助けられるって、そう思ったの」
もしかしたら、先程の僕と同じような感覚だったのだろうか。
いや、そもそも僕のこの不可思議な力がサーシャの身に力を与えたのだろうか。
考察は尽きないが、ともあれ大団円の様相を呈してきてくれたのが何よりもだ。
これ以上ウルフたちを刺激したくなかった僕たちは、静かに湖を後にすることにした。
「あの、クロ?」
どことなく喋り辛いと思っていた空気を裂いたのは、遠慮がちなサーシャの声だった。
「その、ね……ありがとう」
「あ、うん」
改まってお礼を言われるとは思っていなかった僕は、少しぎこちない返事をしてしまった。
「ウルフの子供とね、遊んでたんだ」
「うん」
「そしたらね、お母さんが出てきて……」
サーシャの足がふと止まった。
「怖かった。すっごく怖かった」
「うん」
「わたしはただ寂しかっただけなのにって、そう思っちゃった」
少しずつ震えだす声。
「お父さんにもクロにも、分かって貰えなくて」
どう返すべきか迷った僕は、敢えて告げた。
「ノースさんは分かってくれてたと思うよ。サーシャが不安だったこととか、応援してもらいたがってたことも、全部」
サーシャも分かってたはずだ。
分かってはいてもそれを上手く表現できなくて、それでも発しようとした結果、今みたいな物言いになってしまったんだ。
「うん……だからね、余計に嫌になったの」
自分が抱えてしまった理不尽だと思う気持ち。何もかもが上手くいかないもどかしさ、それを感じ得てしまった自分への嫌悪感。
僕の知るサーシャは昔から優しい子だった。それは今も変わらず、むしろ色々なことが分かり始めてきたせいで余計にその優しさは自分への厳しさとなってしまったんだ。
抱えなくていいようなことも全部、抱えてしまう。
「今朝サーシャが僕を誘ってくれた時さ、本当はすごく嬉しかったよ」
「えっ……」
「サーシャってさ、普段からあんまりワガママとか言わないしさ、ああやって頼られたのが素直に嬉しかったんだ」
自分を取り戻してからだいぶ経ち、気持ちの面でも整理がつき始めていた今となり、色々な記憶に実感が伴い始めてきていた。
「なら、どうして……」
「言った通りだよ。サーシャの中でどうしたいかをしっかりと決めてくれないと、この先つまずいた時に辛い思いをするのはサーシャ自身だから。だから、自分の中でしっかりとした目標を決めてもらいたかったんだ」
サーシャは少しだけ目を瞑り、何かを決心したように目を開いた。その二つの翡翠にはもう、曇りも翳りもない。
「わたし――冒険者アイドルになりたい!」
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