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プロローグ
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「王太子殿下が刺された!」
「王太子妃を捕らえよ!」
花冷えの風が抜き抜ける白国王城に怒号が飛び交う。
「黒のオメガ妃がアルファ王太子を刺したぞ!」
「白国への反逆だ!」
「黒国オメガを逃がすな!」
駆け回る人々の足音が響く。
「これで僕は、重罪人、だ」
物陰に隠れたジリスは小さく呟き、震える手を握りしめた。
心臓が破裂しそうなほど存在を主張してくる。肺が痛くなるほど呼吸が速い。恐怖で足がすくみそうになる。
ジリスはそんな自分を必死で鼓舞した。
(立ち止まるな! すぐに逃げなくてはダメだ!)
自分がした事に後悔はない。そう考えても恐怖がひしひしと押し寄せる。
(本当に、これで良かったのか?)
ずっと考えていた不安がジリスの脳裏を過る。
――殺すしか、なかったのだろうか。
とめどなく涙が溢れる。耳元ではバクバクと鼓動が響く。興奮と緊張で全身が熱いのに凍えてしまいそうな、奇妙な感覚に陥っている。
オメガの本能である番喪失の不安感がジリスの心を弱くする。頭が混乱して、自分が何に泣いているのか分からない。
(泣くな! 泣いて見つかったら死罪だ!)
ジリスは悲鳴を上げたくなる口を手で覆った。必死で声を抑え込み、ぐいっと袖で涙を拭う。大きく深呼吸をし、歯を食いしばって前を向いた。
季節外れの冷たい空気を感じながら、ジリスは走った。
(ごめんなさい。どうか、許してください)
神に懺悔をしてジリスは闇の中に逃げ込んだ。
黒の国では神聖とされている闇の世界に。
この先にジリスを抱きとめてくれる人がきっといる。そう信じたい。でも、いなかったら――。頭に過ぎる不安で息が上がる。
「ジリス様!」
愛おしい人の声がジリスの心に届く。堪えていた感情が一気に爆発する。
「アル!」
ジリスはアルの胸に飛び込んだ。彼の腕が震えている。
「ジリス様の罪は、俺の罪です。命尽きるまで、共に……」
ジリスはアルと唇を重ねた。これが幸福から程遠いことは分かっている。
ジリスの頬に涙が伝った――。
「王太子妃を捕らえよ!」
花冷えの風が抜き抜ける白国王城に怒号が飛び交う。
「黒のオメガ妃がアルファ王太子を刺したぞ!」
「白国への反逆だ!」
「黒国オメガを逃がすな!」
駆け回る人々の足音が響く。
「これで僕は、重罪人、だ」
物陰に隠れたジリスは小さく呟き、震える手を握りしめた。
心臓が破裂しそうなほど存在を主張してくる。肺が痛くなるほど呼吸が速い。恐怖で足がすくみそうになる。
ジリスはそんな自分を必死で鼓舞した。
(立ち止まるな! すぐに逃げなくてはダメだ!)
自分がした事に後悔はない。そう考えても恐怖がひしひしと押し寄せる。
(本当に、これで良かったのか?)
ずっと考えていた不安がジリスの脳裏を過る。
――殺すしか、なかったのだろうか。
とめどなく涙が溢れる。耳元ではバクバクと鼓動が響く。興奮と緊張で全身が熱いのに凍えてしまいそうな、奇妙な感覚に陥っている。
オメガの本能である番喪失の不安感がジリスの心を弱くする。頭が混乱して、自分が何に泣いているのか分からない。
(泣くな! 泣いて見つかったら死罪だ!)
ジリスは悲鳴を上げたくなる口を手で覆った。必死で声を抑え込み、ぐいっと袖で涙を拭う。大きく深呼吸をし、歯を食いしばって前を向いた。
季節外れの冷たい空気を感じながら、ジリスは走った。
(ごめんなさい。どうか、許してください)
神に懺悔をしてジリスは闇の中に逃げ込んだ。
黒の国では神聖とされている闇の世界に。
この先にジリスを抱きとめてくれる人がきっといる。そう信じたい。でも、いなかったら――。頭に過ぎる不安で息が上がる。
「ジリス様!」
愛おしい人の声がジリスの心に届く。堪えていた感情が一気に爆発する。
「アル!」
ジリスはアルの胸に飛び込んだ。彼の腕が震えている。
「ジリス様の罪は、俺の罪です。命尽きるまで、共に……」
ジリスはアルと唇を重ねた。これが幸福から程遠いことは分かっている。
ジリスの頬に涙が伝った――。
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