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Ⅰ 黒のオメガ
①
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白国王太子妃となった男オメガのジリス・イーリーは、白に統一された美しい部屋にいる。
白いふかふかの上質な寝具は、輝きを放つ絹製だ。肌触りのいい寝具は、さぞ良い眠りを誘うことだろう。
全てが祝福の白光に囲まれた室内を見渡し、ジリスはため息をこぼした。
白国にとって白は最高の色であり、幸福の象徴だ。
だから一見すると、ジリスの置かれた環境は、王太子妃となった自分を歓迎しているかのように思える。
だが、その裏に隠された悪意を知っているからこそ、ジリスは舌打ちをしたくなるほどのイラつきを抱く。
上辺だけの丁重な扱いに頭痛を覚え、眉間に皺を寄せながら、ジリスはゆっくりベッドから起き上がった。
ジリスの長い艶髪が白のシーツに垂れる。白に黒が良く映える。痛いほどの白の中でそこが安息地に思え、ジリスは目を留めた。
その時、ドアをノックする音が響いた。
「失礼します。朝食をお持ちしました」
ジリスの返事を待たずに侍女が入室してくる。まるで起きるのを見張っていたかのようなタイミングだ。
こちらを見ようとしない侍女たちを眺めて、痛む頭に手を添えた。白ばかりの部屋にいることでジリスの体調は絶不調に陥っている。
ふと、部屋の鏡に映る自分を見た。もともと肌は白いのだが、今は青白くなっている。そのせいで大きな黒い瞳が余計に目立つ。
一見しただけで調子が悪そうだと分かる。
そんなジリスを気にせず、侍女たちは機械のように動く。ジリスよりやや背丈の低い侍女たちを静かに見つめた。彼女たちは必要以上に接触するつもりは無い、と態度で示してくる。
カチャカチャと朝食の支度をして、侍女たちは退出した。
ため息をついて食事を見れば、見事に白に統一されている。つい『ははは』と乾いた笑いがこぼれ落ちてしまった。
白いパンに白バター、白い豆スープに白ソーセージが添えられている。お茶まで白茶だ。
「はぁ、食欲が無くなるだろ」
ジリスは小さく文句を言いながら椅子に座った。フォークでグサグサと白ソーセージをぶっ刺して、窓の外を眺めた。
「帰りたいなぁ」
一度口に出すと溢れそうになる涙を堪えて、白いスープを口に運んだ。
「まぁ、上品な味ですね。だけど、一つ言わせてもらうと、配色が足りないんじゃない? 料理のセンスが無いんじゃないのか? こんな白だらけじゃ、味に締まりがないだろうが」
吐き出すように皮肉を言うが、誰もジリスに答えない。白い部屋での孤独がジリスの心をチクリと刺す。堪えようとしても悲しみの波が押し寄せてくる。
「くそう。白の奴らめ。いつか痛い目を見ろ」
小さく文句を言い、ジリスは目尻に浮かぶ涙をグイっと拭いた。真っ白なジリスの服に涙が染みていく。
強がっているけれど、この孤独に悲鳴を上げたくなっている。終わりの見えない生活を考えると絶望に涙が滲む。
(黒が、恋しい……)
叶わない願望を思い浮かべて、ジリスは震える拳を握りしめた。
白いふかふかの上質な寝具は、輝きを放つ絹製だ。肌触りのいい寝具は、さぞ良い眠りを誘うことだろう。
全てが祝福の白光に囲まれた室内を見渡し、ジリスはため息をこぼした。
白国にとって白は最高の色であり、幸福の象徴だ。
だから一見すると、ジリスの置かれた環境は、王太子妃となった自分を歓迎しているかのように思える。
だが、その裏に隠された悪意を知っているからこそ、ジリスは舌打ちをしたくなるほどのイラつきを抱く。
上辺だけの丁重な扱いに頭痛を覚え、眉間に皺を寄せながら、ジリスはゆっくりベッドから起き上がった。
ジリスの長い艶髪が白のシーツに垂れる。白に黒が良く映える。痛いほどの白の中でそこが安息地に思え、ジリスは目を留めた。
その時、ドアをノックする音が響いた。
「失礼します。朝食をお持ちしました」
ジリスの返事を待たずに侍女が入室してくる。まるで起きるのを見張っていたかのようなタイミングだ。
こちらを見ようとしない侍女たちを眺めて、痛む頭に手を添えた。白ばかりの部屋にいることでジリスの体調は絶不調に陥っている。
ふと、部屋の鏡に映る自分を見た。もともと肌は白いのだが、今は青白くなっている。そのせいで大きな黒い瞳が余計に目立つ。
一見しただけで調子が悪そうだと分かる。
そんなジリスを気にせず、侍女たちは機械のように動く。ジリスよりやや背丈の低い侍女たちを静かに見つめた。彼女たちは必要以上に接触するつもりは無い、と態度で示してくる。
カチャカチャと朝食の支度をして、侍女たちは退出した。
ため息をついて食事を見れば、見事に白に統一されている。つい『ははは』と乾いた笑いがこぼれ落ちてしまった。
白いパンに白バター、白い豆スープに白ソーセージが添えられている。お茶まで白茶だ。
「はぁ、食欲が無くなるだろ」
ジリスは小さく文句を言いながら椅子に座った。フォークでグサグサと白ソーセージをぶっ刺して、窓の外を眺めた。
「帰りたいなぁ」
一度口に出すと溢れそうになる涙を堪えて、白いスープを口に運んだ。
「まぁ、上品な味ですね。だけど、一つ言わせてもらうと、配色が足りないんじゃない? 料理のセンスが無いんじゃないのか? こんな白だらけじゃ、味に締まりがないだろうが」
吐き出すように皮肉を言うが、誰もジリスに答えない。白い部屋での孤独がジリスの心をチクリと刺す。堪えようとしても悲しみの波が押し寄せてくる。
「くそう。白の奴らめ。いつか痛い目を見ろ」
小さく文句を言い、ジリスは目尻に浮かぶ涙をグイっと拭いた。真っ白なジリスの服に涙が染みていく。
強がっているけれど、この孤独に悲鳴を上げたくなっている。終わりの見えない生活を考えると絶望に涙が滲む。
(黒が、恋しい……)
叶わない願望を思い浮かべて、ジリスは震える拳を握りしめた。
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