3 / 100
Ⅰ 黒のオメガ
②
しおりを挟む
なぜジリスが白国に嫁いだのかといえば、『神の掟』を守るためだ。
ジリスが生まれた黒の国(黒国)は黒魔術を使う国であり、黒や暗黒を好む。黒を神聖として、黒とともに生きている国だ。
そして黒国にはオメガが生まれる。
オメガは発情期があり、男性でも妊娠ができる特殊な体質を持つ。そしてアルファにうなじを噛まれることで番いになり、番相手にしかフェロモン反応をしなくなる。
一方、白の国(白国)は白魔術を使う国であり、白や明るい輝きを好む。
そして白国にはアルファが生まれる。
アルファは全てにおいて卓越し、あらゆる分野で才を発揮できるが、オメガに惹かれ、オメガを求める体質がある。
そして、この世界には『神の掟』が存在する。そのひとつが、両国ともに王と王妃はアルファとオメガの番であること。これを守らなければ神の怒りに触れ、神の罰を受ける。
黒国、白国ともに神の恩恵を魔術で受ける国であり、『神の掟』を何より重んじている。互いに相容れない二国であるが、王妃を嫁がせ合う風習は途絶えること無く続いている。
そのために黒国の第二王子であるジリスは、白国王家に嫁ぐと幼少期から決められていた。
しかし最近では、オメガでなければ白国に嫁ぐことは無かったのに、と悔しく思うことがある。
(兄様は良いよなぁ。同じオメガでも黒国で生きていけるのだから)
白ばかりの苦しい現実に卑屈な思いが浮かび、ジリスは一人ため息をついた。
そっと目を閉じれば母の明るい笑顔が浮かんだ。
『母様! 母様、見て。ほら、チューリップが咲いたんだよ』
花を母に見せたくて幼いジリスは母に駆け寄った。
黒系の服を着る黒国で白いドレスに身を包む母は際立っている。城内にいれば遠くても母を見つけられた。
ジリスが呼び止めると、いつも母は屈んでくれる。そうしてもらえると、母の瞳が間近に見えてジリスは嬉しい。母が大好きだと思える瞬間だった。
『まぁ、綺麗なピンク。これはジリスが育てたのね』
いい匂いがする、とチューリップの香りを二人で楽しんだ。母の好きなピンク色が笑顔をくれる。
興奮して早口になるジリスの言葉を母は優しく聞いてくれた。
その内に兄も父も来て、一緒になって笑い合った。
毎日が温かさで満ちていた。
幼い頃の無邪気な記憶にジリスの頬が緩んだ。
黒国王妃として白国から嫁いだ母は幸せそうだった。同じアルファでも、ジリスの夫である王太子とは全く違う。
意地悪で傲慢で、最悪な番相手を思い浮かべると、頭痛がひどくなった。
現実逃避をしたくてジリスは再び目を閉じた。そのまま過去の記憶に意識を向けた。
ジリスが生まれた黒の国(黒国)は黒魔術を使う国であり、黒や暗黒を好む。黒を神聖として、黒とともに生きている国だ。
そして黒国にはオメガが生まれる。
オメガは発情期があり、男性でも妊娠ができる特殊な体質を持つ。そしてアルファにうなじを噛まれることで番いになり、番相手にしかフェロモン反応をしなくなる。
一方、白の国(白国)は白魔術を使う国であり、白や明るい輝きを好む。
そして白国にはアルファが生まれる。
アルファは全てにおいて卓越し、あらゆる分野で才を発揮できるが、オメガに惹かれ、オメガを求める体質がある。
そして、この世界には『神の掟』が存在する。そのひとつが、両国ともに王と王妃はアルファとオメガの番であること。これを守らなければ神の怒りに触れ、神の罰を受ける。
黒国、白国ともに神の恩恵を魔術で受ける国であり、『神の掟』を何より重んじている。互いに相容れない二国であるが、王妃を嫁がせ合う風習は途絶えること無く続いている。
そのために黒国の第二王子であるジリスは、白国王家に嫁ぐと幼少期から決められていた。
しかし最近では、オメガでなければ白国に嫁ぐことは無かったのに、と悔しく思うことがある。
(兄様は良いよなぁ。同じオメガでも黒国で生きていけるのだから)
白ばかりの苦しい現実に卑屈な思いが浮かび、ジリスは一人ため息をついた。
そっと目を閉じれば母の明るい笑顔が浮かんだ。
『母様! 母様、見て。ほら、チューリップが咲いたんだよ』
花を母に見せたくて幼いジリスは母に駆け寄った。
黒系の服を着る黒国で白いドレスに身を包む母は際立っている。城内にいれば遠くても母を見つけられた。
ジリスが呼び止めると、いつも母は屈んでくれる。そうしてもらえると、母の瞳が間近に見えてジリスは嬉しい。母が大好きだと思える瞬間だった。
『まぁ、綺麗なピンク。これはジリスが育てたのね』
いい匂いがする、とチューリップの香りを二人で楽しんだ。母の好きなピンク色が笑顔をくれる。
興奮して早口になるジリスの言葉を母は優しく聞いてくれた。
その内に兄も父も来て、一緒になって笑い合った。
毎日が温かさで満ちていた。
幼い頃の無邪気な記憶にジリスの頬が緩んだ。
黒国王妃として白国から嫁いだ母は幸せそうだった。同じアルファでも、ジリスの夫である王太子とは全く違う。
意地悪で傲慢で、最悪な番相手を思い浮かべると、頭痛がひどくなった。
現実逃避をしたくてジリスは再び目を閉じた。そのまま過去の記憶に意識を向けた。
169
あなたにおすすめの小説
運命を知らないアルファ
riiko
BL
オメガ嫌いの西条司は女性アルファとしか付き合わない、そんな中やたらと気になるオメガを見つけた。
運命やフェロモンという不確かなモノではなく、初めて本気で惹かれた唯一のオメガにはとんでもない秘密があった!?
オメガ嫌い御曹司α×ベータとして育った平凡Ω
オメガ主人公がお好きな方は『運命を知っているオメガ』をお読みくださいませ。こちらはその物語のアルファ側のお話です。このお話だけでも物語は完結しますが、両方読まれると答え合わせが楽しめます。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます、ご注意くださいませ。
コメント欄はそのまま載せておりますので、ネタバレ大丈夫な方のみご覧くださいませ。
物語、お楽しみいただけたら幸いです。
陰日向から愛を馳せるだけで
麻田
BL
あなたに、愛されたい人生だった…――
政略結婚で旦那様になったのは、幼い頃、王都で一目惚れした美しい銀髪の青年・ローレンだった。
結婚式の日、はじめて知った事実に心躍らせたが、ローレンは望んだ結婚ではなかった。
ローレンには、愛する幼馴染のアルファがいた。
自分は、ローレンの子孫を残すためにたまたま選ばれただけのオメガに過ぎない。
「好きになってもらいたい。」
…そんな願いは、僕の夢でしかなくて、現実には成り得ない。
それでも、一抹の期待が拭えない、哀れなセリ。
いつ、ローレンに捨てられてもいいように、準備はしてある。
結婚後、二年経っても子を成さない夫婦に、新しいオメガが宛がわれることが決まったその日から、ローレンとセリの間に変化が起こり始める…
―――例え叶わなくても、ずっと傍にいたかった…
陰日向から愛を馳せるだけで、よかった。
よかったはずなのに…
呼ぶことを許されない愛しい人の名前を心の中で何度も囁いて、今夜も僕は一人で眠る。
◇◇◇
片思いのすれ違い夫婦の話。ふんわり貴族設定。
二人が幸せに愛を伝えあえる日が来る日を願って…。
セリ (18)
南方育ち・黒髪・はしばみの瞳・オメガ・伯爵
ローレン(24)
北方育ち・銀髪・碧眼・アルファ・侯爵
◇◇◇
50話で完結となります。
お付き合いありがとうございました!
♡やエール、ご感想のおかげで最後まではしりきれました。
おまけエピソードをちょっぴり書いてますので、もう少しのんびりお付き合いいただけたら、嬉しいです◎
また次回作のオメガバースでお会いできる日を願っております…!
【完結】王のための花は獣人騎士に初恋を捧ぐ
トオノ ホカゲ
BL
田舎の貧村で暮らすリオンは、幼い頃からオメガであることを理由に虐げられてきた。唯一の肉親である母親を三か月前に病気で亡くし、途方に暮れていたところを、突然現れたノルツブルク王国の獣人の騎士・クレイドに助けられる。クレイドは王・オースティンの命令でリオンを迎えに来たという。そのままクレイドに連れられノルツブルク王国へ向かったリオンは、優しく寄り添ってくれるクレイドに次第に惹かれていくがーーーー?
心に傷を持つ二人が心を重ね、愛を探す優しいオメガバースの物語。
(登場人物)
・リオン(受け)
心優しいオメガ。頑張り屋だが自分に自信が持てない。元女官で薬師だった母のアナに薬草の知識などを授けられたが、三か月前にその母も病死して独りになってしまう。
・クレイド(攻め)
ノルツブルク王国第一騎士団の隊長で獣人。幼いころにオースティンの遊び相手に選ばれ、ともにアナから教育を受けた。現在はオースティンの右腕となる。
・オースティン
ノルツブルク王国の国王でアルファ。
大嫌いなアルファと結婚しまして
リミル
BL
面倒見のいい隠れSなα×アルファから転化したΩ
久世優生と神崎基城はアルファの幼馴染みで、互いのスペックを競い合うライバル同士でもあった。
パーティーの最中、基城は原因不明の体調不良に襲われ、第二性がアルファからオメガに転化したと告げられる。
オメガになったことで、優生に馬鹿にされるかと思えば、何故かプロポーズを申し込まれてしまい──!?
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った
こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる