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Ⅰ 黒のオメガ
⑪
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ジリスの目が覚めると、もう陽が落ちていた。誰もジリスを起こしに来なかった。
部屋に一人にしてもらえて助かった。けれど黒の国では、侍女が定期的に様子をうかがいに来ていたから、一人で寝過ごすなどあり得ない事だった。
侍女の定期的な巡回と入室は、王族の安全確保のためでもある、と黒国では教えられていた。この違いに少し胸がザワついた。
「はぁ、白国は冷たい国ですね、っと」
ゆっくり身体を起こして、頭痛が和らいでいることを確認する。ベッドから起きて、寝室のドアを開けるとテーブルセットには食事が準備されていた。
ジリスの室内に侍女や侍従が立ち入っていたということだ。
黒国王城なら部屋の主に立ち入ることの許可や食事の声かけをする。それは例え部屋の主が寝ていても、だ。
白国のマナーが黒国と違うのか、それともジリスに嫌がらせをしているのか、どちらだろうとジリスはイラついた。
テーブルに近づいて食事を見れば、見事に白一色だ。お茶まで白茶。さすがにジリスは頭にきた。
「主城では黒茶があったよな。ってことは、これはネモス王子の嫌がらせだな」
ため息をついた後、ジリスは侍女呼び出しの呼び鈴を鳴らした。
『リンリン』
美しい音色は魔術が込められている。城の侍女侍従はすぐに反応するはずだ。
一分も待たずにジリスの部屋のドアがノックされた。ガチャリとドアの音がして、侍女数名が頭を下げて入室した。
「お呼びでしょうか」
機械的な声がジリスには嫌味のように聞こえた。
「うん。黒茶をお願いしたい」
怒りを抑えて伝えた。
「できません」
頭を上げずに即答する侍女を睨み、深呼吸をした。一息つかないと怒鳴ってしまいそうだった。
「先刻は黒茶が用意されていた。白国にもあるはずだ。これほど白ばかりでは、僕は疲れる」
ここまで言えば分かるだろうと思ったが。
「できません。主城でお出しした黒茶は現王妃さまのご慈悲によるものです。ここはネモス殿下の離宮です。我々はネモス殿下の侍女です」
固い答えにジリスは頭が痛くなった。
「あぁ、わかったよ。じゃ、王妃殿下に分けてもらって」
「できません」
侍女の態度にさすがに怒鳴りたくなった。しかし、ジリスより先に侍女が口を開いた。
「我々はネモス様の指示に従っております。我々の主人はネモス殿下です。ネモス様からは、黒オメガが白国に早く慣れるよう全て白でお迎えするように、と命がでております。我々はネモス様の命令に従うまでです」
「あのさぁ、黒国では白の国から来たアルファ王妃が過ごしやすいように、白で迎えているんだよ。黒国から来た僕が白ばかりは辛いって分からないのかな?」
「黒オメガ様は白国に慣れる努力はしない、ということでしょうか」
間髪入れない侍女に言葉にジリスは『はぁ?』と言いたくなった。
「我々としては、白国なりのおもてなしをしております。最高の白を揃えてあります。郷に入っては郷に従え、と言いますように、黒オメガ様が早くに白国に慣れますことを願います」
機械的な言葉にイライラした。一度もジリスを見ない侍女たちに怒りが沸いた。だが、それをぶつけるわけに行かず、ジリスは震える拳を握りしめた。
「……もういい。下がって」
精一杯の冷たい声で指示したが、侍女たちは気にする様子はなく「失礼します」と退出していった。
静かになった室内で、ジリスはドンっと強くテーブルを叩いた。テーブル上の食器がガチャンと音を立てた。
部屋に一人にしてもらえて助かった。けれど黒の国では、侍女が定期的に様子をうかがいに来ていたから、一人で寝過ごすなどあり得ない事だった。
侍女の定期的な巡回と入室は、王族の安全確保のためでもある、と黒国では教えられていた。この違いに少し胸がザワついた。
「はぁ、白国は冷たい国ですね、っと」
ゆっくり身体を起こして、頭痛が和らいでいることを確認する。ベッドから起きて、寝室のドアを開けるとテーブルセットには食事が準備されていた。
ジリスの室内に侍女や侍従が立ち入っていたということだ。
黒国王城なら部屋の主に立ち入ることの許可や食事の声かけをする。それは例え部屋の主が寝ていても、だ。
白国のマナーが黒国と違うのか、それともジリスに嫌がらせをしているのか、どちらだろうとジリスはイラついた。
テーブルに近づいて食事を見れば、見事に白一色だ。お茶まで白茶。さすがにジリスは頭にきた。
「主城では黒茶があったよな。ってことは、これはネモス王子の嫌がらせだな」
ため息をついた後、ジリスは侍女呼び出しの呼び鈴を鳴らした。
『リンリン』
美しい音色は魔術が込められている。城の侍女侍従はすぐに反応するはずだ。
一分も待たずにジリスの部屋のドアがノックされた。ガチャリとドアの音がして、侍女数名が頭を下げて入室した。
「お呼びでしょうか」
機械的な声がジリスには嫌味のように聞こえた。
「うん。黒茶をお願いしたい」
怒りを抑えて伝えた。
「できません」
頭を上げずに即答する侍女を睨み、深呼吸をした。一息つかないと怒鳴ってしまいそうだった。
「先刻は黒茶が用意されていた。白国にもあるはずだ。これほど白ばかりでは、僕は疲れる」
ここまで言えば分かるだろうと思ったが。
「できません。主城でお出しした黒茶は現王妃さまのご慈悲によるものです。ここはネモス殿下の離宮です。我々はネモス殿下の侍女です」
固い答えにジリスは頭が痛くなった。
「あぁ、わかったよ。じゃ、王妃殿下に分けてもらって」
「できません」
侍女の態度にさすがに怒鳴りたくなった。しかし、ジリスより先に侍女が口を開いた。
「我々はネモス様の指示に従っております。我々の主人はネモス殿下です。ネモス様からは、黒オメガが白国に早く慣れるよう全て白でお迎えするように、と命がでております。我々はネモス様の命令に従うまでです」
「あのさぁ、黒国では白の国から来たアルファ王妃が過ごしやすいように、白で迎えているんだよ。黒国から来た僕が白ばかりは辛いって分からないのかな?」
「黒オメガ様は白国に慣れる努力はしない、ということでしょうか」
間髪入れない侍女に言葉にジリスは『はぁ?』と言いたくなった。
「我々としては、白国なりのおもてなしをしております。最高の白を揃えてあります。郷に入っては郷に従え、と言いますように、黒オメガ様が早くに白国に慣れますことを願います」
機械的な言葉にイライラした。一度もジリスを見ない侍女たちに怒りが沸いた。だが、それをぶつけるわけに行かず、ジリスは震える拳を握りしめた。
「……もういい。下がって」
精一杯の冷たい声で指示したが、侍女たちは気にする様子はなく「失礼します」と退出していった。
静かになった室内で、ジリスはドンっと強くテーブルを叩いた。テーブル上の食器がガチャンと音を立てた。
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