【本編完結】番殺しの黒オメガが背負う愛は

小池 月

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Ⅰ 黒のオメガ

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「何だよ! ふざけんな!」
 そう叫ばないと、気持ちを落ち着けることなど、到底できなかった。

 テーブルの上の食事を全てひっくり返したい気分だったが、食べ物を粗末にしない方針の黒国育ちとしては、嫌々ながらも口に運ぼうと考えた。

 気持を落ち着かせるため、ジリスは数回大きく深呼吸した。そうして、ゆっくりと椅子に座り、食べる気もしない白い食事を口に運んだ。

「あぁ、味は良いじゃないか。けど、冷めてるし、これは配慮の問題じゃないのか? 白国はもてなすってことを知らないのかよ」

 モグモグと鶏肉の白煮込みを咀嚼して、ジリスはため息を吐いた。白野菜のサラダを食べると、怒りに満ちていたはずのジリスの目からポロリと涙が零れた。

 寝る前にも泣いたのに、涙は止まることなくジリスの頬を伝った。泣いても誰も慰めない。

 黒国なら、どこで泣いても、誰かが気が付いて、優しさを与えてくれた。そんな事を思い、白い部屋でジリスは嗚咽を漏らした。

 静かな部屋に自分の声が響くのが耳障りだった。テーブルに突っ伏して顔を隠した。見ている者などいないけれど、弱っている自分を隠したかった。

 ジリスは寒気がするほどの孤独を初めて味わった。


 昼間に寝すぎたのか、その夜は朝方まで眠れなかった。窓の外の暗闇を見るとジリスは少し癒された。

(黒の国に、帰りたいな……)

 絶対に叶わない願いを、何度も心で呟いた。白国に来た一日だけで、ジリスはネモスと白の国が嫌になった。


 翌日。それでも知らない国で一人きりは辛いから、部屋に出入りする侍女と侍従にジリスから話しかけてみた。

 苛立つ気持ちと傷つく心を隠して、何とか仲良く出来ないかとジリスなりに頑張った。

 その結果、何か変わるわけではなく、ただ自分の孤独が深くなっただけだった。

 相変わらずの白ばかりの生活に、さすがにジリスの体調が悪くなった。現状を改善しないと生きていくのが大変だ。

 侍女がダメなら、ネモスと直接対話してみるしかない。ジリスは、百歩譲って自分からネモスの元を訪れることとした。本来は歓迎の意を込めて、ネモスがこちらに来るべきなのだが。

 侍女を通じて、ネモスにお茶の誘いをしたところ、想定外にすんなり受諾された。会いたくない、と言われることを覚悟していたジリスは驚いた。

(けど、これはチャンスだ! どうしてネモス殿下が僕を嫌うのか、聞きたいことは沢山だ!)

 ジリスは気合いを入れた。
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