【本編完結】番殺しの黒オメガが背負う愛は

小池 月

文字の大きさ
14 / 100
Ⅱ 最低な番相手

しおりを挟む
 ジリスをネモスの部屋に招待する、と正式に返事が届いた。自分からお誘いしたのだが、ジリスは自分の居室ではもてなしが出来ないから助かった。

 翌日、侍女に連れられて王太子宮殿を歩いた。ネモスの宮殿は、白国王太子が歴代住むという大きな建物だ。まるで上流貴族の小城のようだ。

 ジリスはその最上階である五階の一室を与えられていると分かった。

 ネモスの居室は三階のワンフロア全て。重厚な玄関ドアを通過し、白を基調とした重厚な室内へ通される。室内を見てジリスは舌打ちをしたくなった。

(なんだよ。白国だって、室内を真っ白になんてしないじゃんか)

 ネモスの部屋は大理石や調度品が差し色になり、白が基本であるが落ち着きのある色調になっている。

 黒国だって、黒が基本だけど真っ黒にするわけではない。やはりジリスの居室は嫌がらせの意味合いが強いのだと納得した。

「こちらにネモス殿下がいらっしゃいます」

 侍女に案内されて中庭の見える明るい部屋に入室した。ネモスはすでに茶を楽しんでいるようだった。

「失礼します。ネモス殿下、ジリスでございます」

 声を掛けると、めんどくさそうにネモスが目線を向けた。そして、ネモスの隣には金髪の女性がいた。

 女性は美しい外見をしているが、まるでジリスを値踏みするような目で見てきた。その目線に敵意が込められていると感じた。

 ネモス殿下は女性の腰に腕を回し密着して座っている。これは、もしかすると、特別な関係ではないだろうか。
 ジリスの心がザワザワした。

「黒オメガ、座るがいい」
 偉そうなネモスの言葉にイラッとしながらも、何とか会釈を返してジリスは席に着いた。

 すぐに侍女がジリスの前に白茶を用意した。

「黒オメガ、紹介する。オレの愛するミーナだ。オレは彼女を伴侶と決めている」

 着座してすぐに衝撃的な言葉を言われて、ジリスは血管がぶち切れそうになった。そんなジリスを、赤い口紅の女性がクスッと笑った。

 その瞬間、言いようのない怒りがジリスに生じた。

「ネモス殿下、それでは僕は番になれません」

 出来るだけ冷静に一言を伝えた。番になり王妃であることは神の掟なのだ。番とは別に伴侶を作るなど、これまでに聞いたことが無い。

「いや、番はお前だ。オレは王になりたいからな。発情期に噛んでやろう。ただ、噛むだけだ。オメガの番を得れば、別に愛さなくても王にはなれる」

「お断りします。そのようなことを言われて、番になるとお思いですか?」

 ジリスは言い放って席を立とうとした。しかし、侍女に行く手を阻まれる。この室内は、侍女侍従が皆ネモスに従っているのが分かる。

 道を開けない侍女をにらむと、ゆっくりとネモスが立ち上がった。ジリスのもとに歩み寄るネモスは、身体が大きい。
 ソファー席では楽しそうにミーナがジリスを見ている。
 不穏な空気にジリスは心臓が冷えるような恐怖を感じた。

「黒オメガ、逃がすと思うか?」

ジリスの腕をネモスの大きな手がつかんだ。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

運命を知らないアルファ

riiko
BL
オメガ嫌いの西条司は女性アルファとしか付き合わない、そんな中やたらと気になるオメガを見つけた。 運命やフェロモンという不確かなモノではなく、初めて本気で惹かれた唯一のオメガにはとんでもない秘密があった!? オメガ嫌い御曹司α×ベータとして育った平凡Ω オメガ主人公がお好きな方は『運命を知っているオメガ』をお読みくださいませ。こちらはその物語のアルファ側のお話です。このお話だけでも物語は完結しますが、両方読まれると答え合わせが楽しめます。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます、ご注意くださいませ。 コメント欄はそのまま載せておりますので、ネタバレ大丈夫な方のみご覧くださいませ。 物語、お楽しみいただけたら幸いです。

【完結】王のための花は獣人騎士に初恋を捧ぐ

トオノ ホカゲ
BL
田舎の貧村で暮らすリオンは、幼い頃からオメガであることを理由に虐げられてきた。唯一の肉親である母親を三か月前に病気で亡くし、途方に暮れていたところを、突然現れたノルツブルク王国の獣人の騎士・クレイドに助けられる。クレイドは王・オースティンの命令でリオンを迎えに来たという。そのままクレイドに連れられノルツブルク王国へ向かったリオンは、優しく寄り添ってくれるクレイドに次第に惹かれていくがーーーー?  心に傷を持つ二人が心を重ね、愛を探す優しいオメガバースの物語。 (登場人物) ・リオン(受け) 心優しいオメガ。頑張り屋だが自分に自信が持てない。元女官で薬師だった母のアナに薬草の知識などを授けられたが、三か月前にその母も病死して独りになってしまう。 ・クレイド(攻め)  ノルツブルク王国第一騎士団の隊長で獣人。幼いころにオースティンの遊び相手に選ばれ、ともにアナから教育を受けた。現在はオースティンの右腕となる。 ・オースティン  ノルツブルク王国の国王でアルファ。

陰日向から愛を馳せるだけで

麻田
BL
 あなたに、愛されたい人生だった…――  政略結婚で旦那様になったのは、幼い頃、王都で一目惚れした美しい銀髪の青年・ローレンだった。  結婚式の日、はじめて知った事実に心躍らせたが、ローレンは望んだ結婚ではなかった。  ローレンには、愛する幼馴染のアルファがいた。  自分は、ローレンの子孫を残すためにたまたま選ばれただけのオメガに過ぎない。 「好きになってもらいたい。」  …そんな願いは、僕の夢でしかなくて、現実には成り得ない。  それでも、一抹の期待が拭えない、哀れなセリ。  いつ、ローレンに捨てられてもいいように、準備はしてある。  結婚後、二年経っても子を成さない夫婦に、新しいオメガが宛がわれることが決まったその日から、ローレンとセリの間に変化が起こり始める…  ―――例え叶わなくても、ずっと傍にいたかった…  陰日向から愛を馳せるだけで、よかった。  よかったはずなのに…  呼ぶことを許されない愛しい人の名前を心の中で何度も囁いて、今夜も僕は一人で眠る。 ◇◇◇  片思いのすれ違い夫婦の話。ふんわり貴族設定。  二人が幸せに愛を伝えあえる日が来る日を願って…。 セリ  (18) 南方育ち・黒髪・はしばみの瞳・オメガ・伯爵 ローレン(24) 北方育ち・銀髪・碧眼・アルファ・侯爵 ◇◇◇  50話で完結となります。  お付き合いありがとうございました!  ♡やエール、ご感想のおかげで最後まではしりきれました。  おまけエピソードをちょっぴり書いてますので、もう少しのんびりお付き合いいただけたら、嬉しいです◎  また次回作のオメガバースでお会いできる日を願っております…!

大嫌いなアルファと結婚しまして

リミル
BL
面倒見のいい隠れSなα×アルファから転化したΩ 久世優生と神崎基城はアルファの幼馴染みで、互いのスペックを競い合うライバル同士でもあった。 パーティーの最中、基城は原因不明の体調不良に襲われ、第二性がアルファからオメガに転化したと告げられる。 オメガになったことで、優生に馬鹿にされるかと思えば、何故かプロポーズを申し込まれてしまい──!?

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った

こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

処理中です...