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Ⅲ 世話係のアルファ
④
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ふと目が覚めると、すでに陽が高かった。いつの間にかベッドで寝ていた。身体がスッキリしている。
「ん~~」
伸びをしてから、上体を起こした。起き上がってもふらつかない。かなり調子がいい。もしかしたらアルがいるかも、と期待したけれど寝室内にはジリスだけだった。
「なんだ。いないじゃん」
つい一言が漏れた。上体を起こせたことに安心して、ベッドから立ち上がろうとした時。コンコンと音がしてドアが開いた。
「おはようございます」
爽やかな笑顔のアルが入って来た。アルを見てジリスの心がホッとする。ちゃんと居てくれた。
「おはよう。寝すぎたかな」
寝起きの照れ隠しのようにアルから顔を背けた。
「今のジリス様には睡眠が一番です。よく眠れるのなら、夕刻まででも寝ていて構いません」
優しい言葉を発しながら、キビキビとアルが動いて、あっという間にジリスを抱き上げてしまう。
入浴後に着せてもらったのだろう、白絹のパジャマを着ている。だからシーツをまとう必要がない。そんな事にジリスは安堵した。
「お寒くないでしょうか」
ジリスを運びながら聞いてくるアルに、コクリと頷きを返した。
「はぁ、なんか、アルが番みたいだ」
つい零れた一言に、アルの身体がビクリとした。妙な緊張感が伝わってきた。もしかしたら、いけないことを言ったのかもしれない。
「……そのような、そのようなことは、お口にしては……」
震える声が聞こえて、ジリスは猛省した。ジリスの不幸にアルを巻き込んではいけない。
「ごめん。聞かなかったことに、して」
申し訳なさからジリスは身体を小さくした。すると、ジリスを抱える腕が、ギュッと強まった。
「いえ。勿体ないお言葉です。俺の胸にしまい込んでおきます」
アルの静かな声がジワリと心に染み込んだ。ジリスは抱き上げられたまま居室に移動した。
居室のダイニングテーブルには食事が並んでいる。美味しそうなパンの香りを吸い込むとジリスの腹がグゥと鳴った。
「あはは。お腹減った」
「はい。沢山ご用意していますよ。温かいスープと煮込み料理を持ってきます。お待ちください」
ジリスが椅子に座ると、肩にストールを掛けてくれる。膝掛けも準備してくれてある。アルの気遣いが心にジンとしみた。
料理を運んでくれるアルの手元を見ると、肉料理は白煮込みではなく、黒シチューだった。ハッとしてお茶を見れば、黒茶。
「アル、これ……」
「はい。わが侯爵家が取り寄せた黒茶です。番いになったことでネモス殿下が警戒を解いたのでしょう。料理は黒系を出す了承が得られました。それに俺と一緒ならば、室外に出ても構わない、と許可もあります」
ネモスの名前が出て、とたんにジリスの気分は最悪になる。そっと首後ろに触れると、ガーゼに覆われた噛み傷がズキリとした。
「なぜ、アルはネモス殿下に従うの?」
アルはネモス殿下の行為を良く思っていない。ジリスはそれを言葉の端々に感じている。
「俺は侯爵家の者なので、臣下として従うのは当然です。しかし、ネモス様のお考えが正しいかと言われれば、困りますね」
アルはスープと温かな料理を運んでくれた。食事を促される。
「アルは食べないの?」
「はい。勤務中です」
「じゃ、いただくね」
懐かしい黒茶をコクリと喉に通すとジリスは大きな息を吐いた。もう、飲めないと思っていた懐かしい味だ。心がホワッとする。
ずっと白ばかりの食事に疲れていた。目の前に並ぶ濃い色の料理を見つめるだけで食欲が出る。ジリスはニコリと微笑んで、黒シチューを口にした。つづけてホッコリ焼き上がっているパンにかぶりついた。
「ん~~」
伸びをしてから、上体を起こした。起き上がってもふらつかない。かなり調子がいい。もしかしたらアルがいるかも、と期待したけれど寝室内にはジリスだけだった。
「なんだ。いないじゃん」
つい一言が漏れた。上体を起こせたことに安心して、ベッドから立ち上がろうとした時。コンコンと音がしてドアが開いた。
「おはようございます」
爽やかな笑顔のアルが入って来た。アルを見てジリスの心がホッとする。ちゃんと居てくれた。
「おはよう。寝すぎたかな」
寝起きの照れ隠しのようにアルから顔を背けた。
「今のジリス様には睡眠が一番です。よく眠れるのなら、夕刻まででも寝ていて構いません」
優しい言葉を発しながら、キビキビとアルが動いて、あっという間にジリスを抱き上げてしまう。
入浴後に着せてもらったのだろう、白絹のパジャマを着ている。だからシーツをまとう必要がない。そんな事にジリスは安堵した。
「お寒くないでしょうか」
ジリスを運びながら聞いてくるアルに、コクリと頷きを返した。
「はぁ、なんか、アルが番みたいだ」
つい零れた一言に、アルの身体がビクリとした。妙な緊張感が伝わってきた。もしかしたら、いけないことを言ったのかもしれない。
「……そのような、そのようなことは、お口にしては……」
震える声が聞こえて、ジリスは猛省した。ジリスの不幸にアルを巻き込んではいけない。
「ごめん。聞かなかったことに、して」
申し訳なさからジリスは身体を小さくした。すると、ジリスを抱える腕が、ギュッと強まった。
「いえ。勿体ないお言葉です。俺の胸にしまい込んでおきます」
アルの静かな声がジワリと心に染み込んだ。ジリスは抱き上げられたまま居室に移動した。
居室のダイニングテーブルには食事が並んでいる。美味しそうなパンの香りを吸い込むとジリスの腹がグゥと鳴った。
「あはは。お腹減った」
「はい。沢山ご用意していますよ。温かいスープと煮込み料理を持ってきます。お待ちください」
ジリスが椅子に座ると、肩にストールを掛けてくれる。膝掛けも準備してくれてある。アルの気遣いが心にジンとしみた。
料理を運んでくれるアルの手元を見ると、肉料理は白煮込みではなく、黒シチューだった。ハッとしてお茶を見れば、黒茶。
「アル、これ……」
「はい。わが侯爵家が取り寄せた黒茶です。番いになったことでネモス殿下が警戒を解いたのでしょう。料理は黒系を出す了承が得られました。それに俺と一緒ならば、室外に出ても構わない、と許可もあります」
ネモスの名前が出て、とたんにジリスの気分は最悪になる。そっと首後ろに触れると、ガーゼに覆われた噛み傷がズキリとした。
「なぜ、アルはネモス殿下に従うの?」
アルはネモス殿下の行為を良く思っていない。ジリスはそれを言葉の端々に感じている。
「俺は侯爵家の者なので、臣下として従うのは当然です。しかし、ネモス様のお考えが正しいかと言われれば、困りますね」
アルはスープと温かな料理を運んでくれた。食事を促される。
「アルは食べないの?」
「はい。勤務中です」
「じゃ、いただくね」
懐かしい黒茶をコクリと喉に通すとジリスは大きな息を吐いた。もう、飲めないと思っていた懐かしい味だ。心がホワッとする。
ずっと白ばかりの食事に疲れていた。目の前に並ぶ濃い色の料理を見つめるだけで食欲が出る。ジリスはニコリと微笑んで、黒シチューを口にした。つづけてホッコリ焼き上がっているパンにかぶりついた。
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