【本編完結】番殺しの黒オメガが背負う愛は

小池 月

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Ⅳ 白の国と白魔術

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 大丈夫かな、とアルを心配して街を歩いた。その後のアルは咳をすることも無く、キリッとした顔だった。

 護衛は離れて付いているらしいが、ジリスには彼らがどこに居るのか分からない。まるでアルと二人だけで歩いているように思える。

「ジリス様、徒歩で大丈夫でしょうか?」
「平気だよ。黒の国では広い城の庭園を駆け回っていたんだ。体力は、ある」

 フン、と自信ありげに大股で歩いた。そんなジリスに、アルがクスクスと笑いをこぼす。

 陽の下を歩くとアルの白銀髪が光をキラキラ反射して美しい。身体が大きくてアルは綺麗だ。ジリスとニ十センチ以上の身長差がある。まるで太陽神のようだ。黒国にはこれほど魅力的な男性はいなかった。

「ここです。ジリス様」
 急に声が掛けられてジリスはハッとした。アルに意識が集中していて、周囲を見ていなかった。

「あ、素敵な店、だね」
 言いながらカフェを見て驚いた。田舎の邸宅風な店だ。この上流貴族街の雰囲気には、合っていない。

「ジリス様、今の貴族の流行りです。庭園の中でお茶を楽しめます」
 ジリスは店内を通り抜けて、美しくガーデニングされた庭のサロンに案内された。

 青いヒメコスモスが綺麗に咲き誇っている。暖色系の秋薔薇も咲いている。石造りに整えられた街中でこのような自然があるのは嬉しい。懐かしい黒国の城庭園を思い出す。

 ジリスはサロンにセットされたソファーに座った。そこから見ると、庭園が絵画のようだ。

 すぐにアフタヌーンティーセットが運び込まれた。セットに用意されたデザート類は白一色では無かった。色とりどりのデザートがある。そんな事にジリスはホッと胸を撫でおろした。

 アフタヌーンティーセットのセイボリー(下段)は、サンドイッチにサラダ、ベーコンエッグが乗っている。盛りすぎだ。ジリスが朝食を食べなかったから、アルが気を利かせたのだと分かった。

 ベーコンは白肉じゃないし、サラダは緑だ。ミニスープは黒トウモロコシのポタージュだ。懐かしくて、ジリスはニカっと笑った。

「うん。食欲が出た!」
「はい。沢山召し上がってください」

 店員が下がり、サロンにアルと二人になる。サロンの解放された空間に秋薔薇の香りが流れていく。

 ――そっか。秋かぁ。

 美しい庭を眺めて、セイボリーの軽食を手にした。アルが準備してくれた黒茶でサンドイッチを流し込む。

「黒国ではさ、僕は兄様と仲良く育ったんだ」
 黒国の城内庭園がジリスの頭を過った。

「はい」
 アルが静かな声を返してくれる。

「白国から来た母様は、花が好きでさ。季節ごとの花を母様にプレゼントして。兄様と競うように、綺麗に咲いたから見てって母様に声を掛けていた。黒国では、母様は白の服を着ていて、キラキラした髪が綺麗で。目立つから遠くても見つけられて」
「……はい」

「母様が、よく言っていたんだ。番になれば、きっと幸せになれるからって。神様が決めた番だから、これは運命の相手なのってさ。母様は父様と幸せそうで」
「……はい」

 苦しそうな返事を聞いて、これ以上話すべきではないと察した。サンドイッチを食べていた手を止める。

 ジリスは込み上げる思いを飲み下したくて、焦げ茶色のスープを手にした。ミニカップから温かさが手に伝わる。静かにスープを口にして、ジリスは一息をついた。

「黒国と白国は、まったく違うのにさ、秋薔薇は変わらないな。ヒメコスモスも。そう言えば植物も、見たことあるのばかりだ」

 気を取り直してアルに微笑んで見せた。
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