【本編完結】番殺しの黒オメガが背負う愛は

小池 月

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Ⅳ 白の国と白魔術

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「そうだね。アル、いろいろ案内してよ」
「もちろんでございます」

 アルが内側からコンとノックを返すと侍従がドアを開けた。アルにエスコートされて馬車を降りると、そこは噴水と水アートが美しい公園だった。

「わぁ、綺麗……」
 二か月を閉じ込められて過ごしていたジリスにとって、久しぶりの外気だ。陽の光が気持ちいい。黒が好きとはいっても、自然の恩恵は別格だ。頬に当たる秋風でさえ愛おしくてたまらない。

「あぁ、気持ちいぃなぁ……」

 深呼吸して胸いっぱいに秋を吸い込むと、感動で目の奥がジンとする。ジリスはそっと目を閉じた。

 風を抱き締めたくて手を広げた。目の前の事に必死で、季節の移り変わりにも気づかなかった。優しい風を肌に感じると、ホロリと涙が流れる。

 すると、ジリスが影に覆われた。目を閉じていても、それが分った。そっと目を開けると、ジリスを周囲から隠すようにしているアルの姿が目に入る。その優しさにジリスの頬が緩んだ。

(アル、ありがとう)
 感謝の言葉がジリスにわきあがる。

 身体接触はないけれど、アルの優しさに包み込まれていると実感する。

 アルの青い瞳がジリスを捕らえている。優しさに飢えていたジリスの心は、アルの逞しい体躯に抱きつきたい、と思ってしまう。

 だが、アルとは絶対に恋仲になどなってはいけない。ネモスの思惑通りになど進みたくない。そう考えてジリスはキュッと唇を噛んだ。

「ジリス様」
 低い声がジリスの心に届く。

「お勧めのカフェがありますが、行ってみませんか?」
「うん。ずっとアルに隠してもらうのも申し訳ないしね。久しぶりの外だから、ちょっと感無量になっちゃったよ。そのカフェは、朝食も食べれるところ?」
「はい。もちろんです」

 ジリスは気持ちを切り替えて、アルの提案に乗ることにした。今日は楽しむと決めたのだ。感傷に浸っている暇はない。

 一呼吸をして、ジリスはアルにとびっきりの笑顔を向けた。

「じゃ、連れてって!」

 アルが目を見開いて動きを止めた。息をするのも忘れたのではないかと思う、妙な間があった。

「アル?」
 何かあったのだろうか。ジリスは首を傾げた。アルはクルリと背を向けると、数回咳をした。

「あ、調子悪いなら、今日はやめてもいいよ?」

「いえ! 体調は良好です! 何でもありません。少し、その、むせただけで」

 アルは背を向けたままゴニョゴニョと呟いた。少ししてジリスに向いたアルの顔は、赤かった。
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