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Ⅳ 白の国と白魔術
⑥
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「だから、黒国では自分の身で代償になりそうな部分は大切にする。術の代償が汚いものでは神様に失礼だ。髪の手入れをするのも、これが捧げ物だからなんだ」
庭園を柔らかな風が抜ける。気持ちの良い秋風だ。
「そうでしたか。お髪が長いまま、ということは、ジリス様はこれまで黒魔術は使われていないのですか?」
「いや、魔術習得のときには、部分的に髪の毛を代償にしたよ。でも十五歳を過ぎてからは魔術を使っていない。黒国では皆そうだよ」
「本当に、白国とは違いますね」
「それは、僕の台詞だよ」
二人で目を見合わせて笑った。
まるで妖精の国に遊びに来たかのように楽しい休憩になった。
カフェの後に物販店に行った。
販売の様子を見て驚いた。
同じ商品が、「焦げ付きにくい白魔術つき」と「美味しく仕上がる白魔術つき」などの仕分けをされていた。
それを見て、一つの商品にひとつの白魔術しか掛けられないと知った。白魔術は重複して使えないようだ。
制限があるのだな、と納得した。
キッチン用品の一つを手に取ってみた。厚手の布で出来た鍋つかみには、「火傷防止白魔術つき」と案内がある。しかし、魔術が掛けられているか、どうやって判断するのだろう。もし魔術がかけられていない場合は、見分けがつくのだろうか。
「アル、聞きたいんだけど」
「はい、ジリス様」
「これって、魔術がかけられていないってこともあり得るの?」
「それは、無いと思います」
「どうして?」
「店の信用問題と言いますか。魔術がかけられていないのに『魔術付き』で売るのは詐欺行為ですね」
「犯罪になるのか」
「はい」
ジリスは白国にとっての白魔術を少し理解した。
「白魔術って、僕には使えないのかな」
ジリスの口から疑問がこぼれ落ちた。言ってみて、自分は何を言っているのだろう、と恥ずかしくなった。黒国の者が言う事ではない。
「やってみますか?」
発言を取り消そうと思ったのに、アルからは楽しそうな声が発せられた。
「過去には、白魔術を学んだ王妃などおりません。これは、ジリス様が初になりますよ」
アルがニコニコ笑った。そんなアルの顔を見るとジリスはヤル気が起きた。
「うん。じゃ、やってみたい! アル、教えてよ」
「もちろんです」
「ジリス様は面白いお方です。黒国の方が白魔術ですか」
クスクス笑うアルの背中をトンと肘で触れる。
「僕がすっごい白魔術使いになったりして」
アルがブハッと吹き出した。笑いが止まらないアルと街を歩くのは楽しかった。
洋菓子店でクッキーとチョコレートを買って、黒茶の茶葉を買い、夕刻にはジリスの部屋に戻った。
帰路につくと気持ちが落ちこんだ。
アルが静かに微笑んで、「毎日でも外出しましょう」と言ってくれた。
――アルがいれば、僕は大丈夫だ。
ジリスはそう思えた。
庭園を柔らかな風が抜ける。気持ちの良い秋風だ。
「そうでしたか。お髪が長いまま、ということは、ジリス様はこれまで黒魔術は使われていないのですか?」
「いや、魔術習得のときには、部分的に髪の毛を代償にしたよ。でも十五歳を過ぎてからは魔術を使っていない。黒国では皆そうだよ」
「本当に、白国とは違いますね」
「それは、僕の台詞だよ」
二人で目を見合わせて笑った。
まるで妖精の国に遊びに来たかのように楽しい休憩になった。
カフェの後に物販店に行った。
販売の様子を見て驚いた。
同じ商品が、「焦げ付きにくい白魔術つき」と「美味しく仕上がる白魔術つき」などの仕分けをされていた。
それを見て、一つの商品にひとつの白魔術しか掛けられないと知った。白魔術は重複して使えないようだ。
制限があるのだな、と納得した。
キッチン用品の一つを手に取ってみた。厚手の布で出来た鍋つかみには、「火傷防止白魔術つき」と案内がある。しかし、魔術が掛けられているか、どうやって判断するのだろう。もし魔術がかけられていない場合は、見分けがつくのだろうか。
「アル、聞きたいんだけど」
「はい、ジリス様」
「これって、魔術がかけられていないってこともあり得るの?」
「それは、無いと思います」
「どうして?」
「店の信用問題と言いますか。魔術がかけられていないのに『魔術付き』で売るのは詐欺行為ですね」
「犯罪になるのか」
「はい」
ジリスは白国にとっての白魔術を少し理解した。
「白魔術って、僕には使えないのかな」
ジリスの口から疑問がこぼれ落ちた。言ってみて、自分は何を言っているのだろう、と恥ずかしくなった。黒国の者が言う事ではない。
「やってみますか?」
発言を取り消そうと思ったのに、アルからは楽しそうな声が発せられた。
「過去には、白魔術を学んだ王妃などおりません。これは、ジリス様が初になりますよ」
アルがニコニコ笑った。そんなアルの顔を見るとジリスはヤル気が起きた。
「うん。じゃ、やってみたい! アル、教えてよ」
「もちろんです」
「ジリス様は面白いお方です。黒国の方が白魔術ですか」
クスクス笑うアルの背中をトンと肘で触れる。
「僕がすっごい白魔術使いになったりして」
アルがブハッと吹き出した。笑いが止まらないアルと街を歩くのは楽しかった。
洋菓子店でクッキーとチョコレートを買って、黒茶の茶葉を買い、夕刻にはジリスの部屋に戻った。
帰路につくと気持ちが落ちこんだ。
アルが静かに微笑んで、「毎日でも外出しましょう」と言ってくれた。
――アルがいれば、僕は大丈夫だ。
ジリスはそう思えた。
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