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Ⅵ 避難路
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「俺は、納得いかない気持ちを、ここで晴らしていました。剣技や筋トレをして、あいつらには負けたくないと過ごしました。おかげで主席卒業できました。先ほどの訓練場は、騎士学生用のものです」
静かに話すアルがいつもより格好良く見えた。
「アルは前を向いたんだね。そこで腐る人もいるだろう。でも、アルは違った」
アルの目線が小川からジリスに向けられた。青い瞳がキラキラと美しい。
「アルが首席で卒業したから王室護衛に選ばれたんだろう? アルが王室護衛隊長でいてくれたから、僕はアルに出会えた。これ、僕の世話係が意地悪貴族だったら、ヤバかったでしょ」
アルが面食らった顔をする。
「いや、それは絶対にダメです! 俺以外の誰にもこの役は渡しません。そうですね。そう考えると、あいつ等が王室護衛に入れなくて良かったです」
「そうだよ。そんな奴らが傍に居たら、僕はグーパンチしちゃいそうだ。だって、ネモス殿下みたいじゃないか」
アルがブハっと吹きだして笑った。
「あはは。パンチですか。それは見たい気もします。ちなみに、騎士学生宿舎から、ここに直接出れたのですよ。だから、勝手に抜け出すなんてこともしてました。貴族坊ちゃんたちは、雑木林を嫌がりましたから。俺専用の逃げ場でしたね」
「宿舎から学生が外に出れるなんて、警備は緩いんだね」
「いえ。俺が偶然、外への避難路を見つけまして。白国では火災が時々あります。多くは白魔術への過信が招くものですが。そのため、室外に逃げるルートが確保されていることが多いのです。歴史ある建物ほど、秘密の避難路があります。照明に火を使っていた時代は、今より火事が多かったので。騎士宿舎は歴史あるものですから」
「なにそれ、古いってことでしょ」
「そういうことです」
二人で笑った。だが、ジリスはアルの言葉に引っ掛かりを覚えた。
古い建物に秘密の避難路があると言うことは、ジリスのいる王太子宮殿にも、それがあるかもしれない。何かの時のために、探してみようと思った。
フワリと風が抜けてジリスの髪がサラリと乱れた。すぐにアルが優しく整えてくれる。大きな手が労わるようにジリスに触れる。少しくすぐったい。
「日が出ていても、冷えるようになりましたね。早めに街に戻って、スイーツを買って帰りましょうか」
「うん」
アルと戻る途中、ふと振り返ると、木々の影から小川が煌いて見えた。この景色がアルを癒していると思うと、目に焼き付けておきたかった。
その夜。ジリスは室内を探索した。
火災が起きた時の避難路ならば、煙を避けるため、低い位置にあるはずだ。
ジリスは床と壁で何か変化のあるところを探った。
注意深く見ていると、寝室の床に一部分だけ他と切れ目が違うところを見つけた。部屋の角で踏むことが無い部分だ。恐る恐るその上を歩いてみた。
ギシっと音が鳴る。他の床を踏んでもこんな音はしない。ジリスは胸が高まった。この床は外せるのだろうか。
「あ! もしかして、これ?」
壁側に細い板がはめ込んであるのに気が付いた。その十センチほどの床板はすぐに外れた。
それを外すと床板に隙間が出来た。溜まったホコリの量から長く外されていないことは明らかだ。
ジリスは段々、ワクワクしてきた。
「すごいや。うっわ、緊張する!」
興奮しながら床板をスライドさせた。床板が十センチずれると、動いた部分が上に開く仕組みだ。
心臓がドキドキした。緊張して手が震える。
ふと、アルに相談しようかと考えた。しかし、もし万が一、逃走するような事態になったら、共犯で疑われるのはアルだ。
できるだけ巻き込みたくない。アルに相談するのはギリギリまで待ったほうがいい。
静かに話すアルがいつもより格好良く見えた。
「アルは前を向いたんだね。そこで腐る人もいるだろう。でも、アルは違った」
アルの目線が小川からジリスに向けられた。青い瞳がキラキラと美しい。
「アルが首席で卒業したから王室護衛に選ばれたんだろう? アルが王室護衛隊長でいてくれたから、僕はアルに出会えた。これ、僕の世話係が意地悪貴族だったら、ヤバかったでしょ」
アルが面食らった顔をする。
「いや、それは絶対にダメです! 俺以外の誰にもこの役は渡しません。そうですね。そう考えると、あいつ等が王室護衛に入れなくて良かったです」
「そうだよ。そんな奴らが傍に居たら、僕はグーパンチしちゃいそうだ。だって、ネモス殿下みたいじゃないか」
アルがブハっと吹きだして笑った。
「あはは。パンチですか。それは見たい気もします。ちなみに、騎士学生宿舎から、ここに直接出れたのですよ。だから、勝手に抜け出すなんてこともしてました。貴族坊ちゃんたちは、雑木林を嫌がりましたから。俺専用の逃げ場でしたね」
「宿舎から学生が外に出れるなんて、警備は緩いんだね」
「いえ。俺が偶然、外への避難路を見つけまして。白国では火災が時々あります。多くは白魔術への過信が招くものですが。そのため、室外に逃げるルートが確保されていることが多いのです。歴史ある建物ほど、秘密の避難路があります。照明に火を使っていた時代は、今より火事が多かったので。騎士宿舎は歴史あるものですから」
「なにそれ、古いってことでしょ」
「そういうことです」
二人で笑った。だが、ジリスはアルの言葉に引っ掛かりを覚えた。
古い建物に秘密の避難路があると言うことは、ジリスのいる王太子宮殿にも、それがあるかもしれない。何かの時のために、探してみようと思った。
フワリと風が抜けてジリスの髪がサラリと乱れた。すぐにアルが優しく整えてくれる。大きな手が労わるようにジリスに触れる。少しくすぐったい。
「日が出ていても、冷えるようになりましたね。早めに街に戻って、スイーツを買って帰りましょうか」
「うん」
アルと戻る途中、ふと振り返ると、木々の影から小川が煌いて見えた。この景色がアルを癒していると思うと、目に焼き付けておきたかった。
その夜。ジリスは室内を探索した。
火災が起きた時の避難路ならば、煙を避けるため、低い位置にあるはずだ。
ジリスは床と壁で何か変化のあるところを探った。
注意深く見ていると、寝室の床に一部分だけ他と切れ目が違うところを見つけた。部屋の角で踏むことが無い部分だ。恐る恐るその上を歩いてみた。
ギシっと音が鳴る。他の床を踏んでもこんな音はしない。ジリスは胸が高まった。この床は外せるのだろうか。
「あ! もしかして、これ?」
壁側に細い板がはめ込んであるのに気が付いた。その十センチほどの床板はすぐに外れた。
それを外すと床板に隙間が出来た。溜まったホコリの量から長く外されていないことは明らかだ。
ジリスは段々、ワクワクしてきた。
「すごいや。うっわ、緊張する!」
興奮しながら床板をスライドさせた。床板が十センチずれると、動いた部分が上に開く仕組みだ。
心臓がドキドキした。緊張して手が震える。
ふと、アルに相談しようかと考えた。しかし、もし万が一、逃走するような事態になったら、共犯で疑われるのはアルだ。
できるだけ巻き込みたくない。アルに相談するのはギリギリまで待ったほうがいい。
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