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Ⅹ 白の国王と王妃
①
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進軍はしないと約束しているが、国境を挟んで白国軍は待機している。
白国軍が停滞している以上、黒国軍も国境付近に駐留している。二国の軍が膠着状態だ。
白国からはアルを呼ぶ声、懇願する兵士の声が飛んでくる。白国軍は何としてもアルを白国につれて帰ろうと必死だ。その声に背を向けてアルは眉間に皺を寄せている。それを見るたびにジリスは胸が痛くなる。
白の国王は毎日国境越しにアルに声を掛ける。
ネモスは厳罰に処すこと、愛人のミーナも身分剥奪をした上で投獄とし、罪人労働の終身刑を課すことを伝えられた。ネモスに加担した貴族は、下級貴族に降格と、財産のほとんどを没収とするらしい。
ネモスの王太子宮殿の侍女たちは全員解雇とされ、特にジリス付きの者たちは不敬罪として十年の懲役とするそうだ。
鞭打ちなどの罰を望めば全て望み通りに処する、と言われたが、ジリスは皆を苦しめたいとは思わない。白国なりに裁いてくれればいい。
ネモスの暴走を止められなくて申し訳ない、と白国王は頭を下げた。
アルは国王陛下からの言葉を丁寧に聞いているが、白国に戻るとは口にしていない。しかし、その表情からアルが迷って苦しんでいるのは明らかだ。
アルは三日間の思慮時間をもらい、その間をジリスと二人で過ごすことになった。白国への返事は三日後の正午だ。
ジリスはアルと黒国軍の野営テントに二人でこもっている。
「さすが黒国です。テントが良い作りだ。風は通さないし、保温効果があるのですね」
「うん。これは黒国軍というより、災害用とかで開発されたものだよ。黒国は、白国ほど日常生活に魔術が浸透していないんだ。生活の知恵で乗り切っているからね」
「しかし、これは王族用でしょう。内部装飾が美しいから」
「正解。きっと父様と兄様が来たからだよ。兄様たち、大丈夫かな」
「そうですね。ジリス様の時を思い出すと、今は苦しまれているかもしれません」
黒国王である父と兄のカザルは、白国が撤退を約束した直後に黒魔術の反動がきた。左腕の焼けるような痛みに苦しみ、治療と静養のために近くの街に移動した。
「兄様たちの痛みが早く楽になると良いな。今回さ、黒国のみんなが最強に思えたよ」
「最強でしょう。ジリス様を守るために、国を守るために、自分を犠牲にして、あのような黒魔術が展開できてしまうのですから」
あの巨大な黒い風を思い出し、ジリスは身震いした。
「うん。皆の思いが嬉しかったし、黒は凄い国だと思ったよ。でも、そのせいで皆が苦しむのは辛い」
テント内の大きなクッションにボスっと座れば、アルがクスッと笑う。
「ジリス様は皆さんに愛されているのですよ。そして、俺が一番ジリス様を愛しています」
ジリスが座り込んだクッションにアルも覆い被さる。ジリスを自分の身体に閉じ込めるように、アルが見下ろしてくる。優しくアルの唇が触れる。耳元に移動した唇が言葉をこぼす。
「ジリス様が無事で良かった。あなたが、無事で……」
アルの声が揺れる。ジリスの頬にアルの涙が伝う。ジリスはアルの背に腕を回した。アルの逞しさを腕に感じる。お互いに生きていて、戦争にならずにすんで、本当に良かった。
「ジリス様、番の上書きは、出来ないでしょうか。あなたを俺の番にして、白国に一緒に行けませんか?」
ジリスは自分のうなじに触れた。黒国に入ってから番の上書きをしようと試みたのは、国に入った一回だけだ。だが、あの時と違い、ネモスは生きているがアルファではない。もしかしたら成功するかもしれない。
「うん。試して、みようか」
「はい」
白国軍が停滞している以上、黒国軍も国境付近に駐留している。二国の軍が膠着状態だ。
白国からはアルを呼ぶ声、懇願する兵士の声が飛んでくる。白国軍は何としてもアルを白国につれて帰ろうと必死だ。その声に背を向けてアルは眉間に皺を寄せている。それを見るたびにジリスは胸が痛くなる。
白の国王は毎日国境越しにアルに声を掛ける。
ネモスは厳罰に処すこと、愛人のミーナも身分剥奪をした上で投獄とし、罪人労働の終身刑を課すことを伝えられた。ネモスに加担した貴族は、下級貴族に降格と、財産のほとんどを没収とするらしい。
ネモスの王太子宮殿の侍女たちは全員解雇とされ、特にジリス付きの者たちは不敬罪として十年の懲役とするそうだ。
鞭打ちなどの罰を望めば全て望み通りに処する、と言われたが、ジリスは皆を苦しめたいとは思わない。白国なりに裁いてくれればいい。
ネモスの暴走を止められなくて申し訳ない、と白国王は頭を下げた。
アルは国王陛下からの言葉を丁寧に聞いているが、白国に戻るとは口にしていない。しかし、その表情からアルが迷って苦しんでいるのは明らかだ。
アルは三日間の思慮時間をもらい、その間をジリスと二人で過ごすことになった。白国への返事は三日後の正午だ。
ジリスはアルと黒国軍の野営テントに二人でこもっている。
「さすが黒国です。テントが良い作りだ。風は通さないし、保温効果があるのですね」
「うん。これは黒国軍というより、災害用とかで開発されたものだよ。黒国は、白国ほど日常生活に魔術が浸透していないんだ。生活の知恵で乗り切っているからね」
「しかし、これは王族用でしょう。内部装飾が美しいから」
「正解。きっと父様と兄様が来たからだよ。兄様たち、大丈夫かな」
「そうですね。ジリス様の時を思い出すと、今は苦しまれているかもしれません」
黒国王である父と兄のカザルは、白国が撤退を約束した直後に黒魔術の反動がきた。左腕の焼けるような痛みに苦しみ、治療と静養のために近くの街に移動した。
「兄様たちの痛みが早く楽になると良いな。今回さ、黒国のみんなが最強に思えたよ」
「最強でしょう。ジリス様を守るために、国を守るために、自分を犠牲にして、あのような黒魔術が展開できてしまうのですから」
あの巨大な黒い風を思い出し、ジリスは身震いした。
「うん。皆の思いが嬉しかったし、黒は凄い国だと思ったよ。でも、そのせいで皆が苦しむのは辛い」
テント内の大きなクッションにボスっと座れば、アルがクスッと笑う。
「ジリス様は皆さんに愛されているのですよ。そして、俺が一番ジリス様を愛しています」
ジリスが座り込んだクッションにアルも覆い被さる。ジリスを自分の身体に閉じ込めるように、アルが見下ろしてくる。優しくアルの唇が触れる。耳元に移動した唇が言葉をこぼす。
「ジリス様が無事で良かった。あなたが、無事で……」
アルの声が揺れる。ジリスの頬にアルの涙が伝う。ジリスはアルの背に腕を回した。アルの逞しさを腕に感じる。お互いに生きていて、戦争にならずにすんで、本当に良かった。
「ジリス様、番の上書きは、出来ないでしょうか。あなたを俺の番にして、白国に一緒に行けませんか?」
ジリスは自分のうなじに触れた。黒国に入ってから番の上書きをしようと試みたのは、国に入った一回だけだ。だが、あの時と違い、ネモスは生きているがアルファではない。もしかしたら成功するかもしれない。
「うん。試して、みようか」
「はい」
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