真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉

小池 月

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Ⅲ ダイエットには運動も!

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 そのままバスで駅前に向かった。想像した通りで、顔がスッキリ出た背の高い酒井には視線が集まってきた。凛太朗は自分事のように鼻が高かった。

「なんか、視界が開けてスゴ」
 酒井の呟きにクスッと笑いが漏れる。

「だよな。前はカーテン越しに世界を見てたようなもんだろ」
「うん。このほうが凛太朗の顔が良く見える」
 酒井がへへっと笑うと、目が優しく細くなった。

 これまでもこんな風に凛太朗を見つめていたのかと思うと胸が熱くなる。凛太朗は頬しか見ていなかった気がする。だから酒井の表情に見とれてしまう。髪型でこんなにも印象が変わるのか、と驚く。顔がポカポカするのを感じた。

「凛太朗、今日は食事だけして家に戻ろう」
「へぉ?」
 急な言葉に変な声を上げてしまった。酒井の隣で意気揚々と歩く事ばかり考えていたから想定外の言葉だった。

「体調が心配だから。凛太朗が大丈夫って言っても、俺が不安」
 優しく見つめる目線が凛太朗の身体の中にまで入ってくる感覚がして、身体の芯がジワリと汗をかく。急に恥ずかしいような気持ちが抑えられなくなる。
 そんな自分に困ってフイっと横を向いた。途端に酒井に肩を抱かれた。突然の接触に驚いて目をキョロキョロさせてしまった。

「な、何だよ」
「ふらついたら、怖い。やっぱ弁当買って戻ろう」

「いや、違うって! 体調じゃないから!」
 そんな押し問答を何度かしたが、結局酒井の意見に従うことになった。酒井は一度決めたら頑固だと知った。凛太朗は酒井の柔らかく穏やかな面しか知らなかった。新たな一面だと思った。

 二人でいつもより高めの弁当を買って凛太朗の家に戻った。


 帰宅して凛太朗が熱を測ると三十七度五分あった。気が付かなかったけれど、ふらつくワケだと納得した。「大変だ! すぐに横になって」と慌てる酒井をなだめた。三十八度まで上がらなければ大してしんどくない。

「ま、大丈夫だと思うから、飯食お」
「うん。凛太朗は座っていて。俺が準備するから」

「おう。任せた」
 酒井は持ってくれていた荷物から弁当と総菜サラダを出した。箸や飲み物の準備をしてくれるのを見守った。

 動く酒井を見て、改めてカッコイイと思った。酒井は十キロほど痩せた。ただ痩せるだけではなく、ぜい肉を落として筋肉をつけている。ぜい肉だけなら十キロ以上分は落ちているはずだ。

「酒井って身長どれくらい?」
「百八十三センチ」

「今の体重は?」
「八十三キロ」

「ってことは、もともと九十三キロくらいか」
「うん。百キロ手前だった」

 凛太朗はスマホで検索した。ダイエットの本でも体重と身長で肥満度が分かると書いてあった。

「あ、すごいぞ。ダイエット前の酒井は肥満だけど、今の体重なら標準体型だ」
「マジ? それは嬉しい。けど、もうちょっと減らしたい。せっかく凛太朗が一緒にやってくれてるし」

 ニコリと笑う酒井の顔が爽やかだ。ベリーショートになった髪で微笑まれると韓国男性アイドルみたいだ。その笑顔を間近で見るとドキッとする。慣れなくて照れくさくなる。中身はいつもの酒井なのに、ドキマギしてしまう自分がおかしい。
 酒井を見ていられなくてフイっと目線を外した。

「熱上った?」
 急に凛太朗の額に大きな手が触れた。少しヒヤリとする感覚に驚いて酒井を見た。

 すぐ上に凛太朗を見下ろす酒井がいる。心配そうな瞳が凛太朗を射貫いている。視線が心臓まで届きそうで背筋に震えが走る。耳元にドクドクと音が響く。

「やっぱ横になろうよ」
 心配する酒井にこの不思議な凛太朗の気持ちがバレたくなくて照れ笑いをした。これは決して熱のせいではない。それは自分でも分かっている。

「いや、腹減っているし。食べよ」
 深呼吸して気持ちを落ち着かせてから酒井に笑いかけた。すると、凛太朗を見ていた酒井の顔にフワリと朱がさした。射貫くように凛太朗に向けられていた瞳が揺れた。

「そうだな」
 自分の席に戻る酒井の耳が紅くなっている。髪が長いときには分からなかった瞳の動きに、凛太朗はクスっと笑いをこぼした。

(頬が染まったときの表情はこんな感じだったのか)
 イケメンの酒井を連れまわして街を歩くのもいいけれど、こうして酒井の表情を独占しているのもいいなぁと思った。
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