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Ⅴ リバウンド対策☆
③
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放課後になり凛太朗は酒井のもとに駆け寄った。なぜか一秒でも早く一緒に居たいと思ったから。
「酒井! 一緒に帰ろう」
「うん。凛太が学級委員の仕事終わったし、もう俺もリレー練習ないし、俺たち放課後何もなし、だな」
ははは、と笑う酒井と一緒に教室を出た。酒井が楽しそうに笑うから凛太朗も口を開けて笑った。酒井が嬉しいと凛太朗も嬉しい。
体育祭前の苦しかった全てが嘘のようだ。酒井の隣に並ぶだけで顔が綻ぶ。
「凛太朗、ご機嫌」
「まぁね。そうだ、酒井。ありがとう」
「何が?」
しらばっくれているが、きっと分かっているはずだ。チラリと酒井を見上げれば頬が赤くなっている。
酒井らしいと思い凛太朗はプハッと吹き出してしまった。
「何だよ!」
紅い顔のままで恥ずかしそうに凄んでも更に笑いを誘うだけだ。
「いや、あはは。だって。分かってんじゃん。ホームルーム」
「あ~~、いや、あれは当然と言うか……」
あんなに堂々とホームルームで発言したくせに、凛太朗には赤い顔でしどろもどろの説明をする。そんな酒井に胸の奥がまたキュンとする。
凛太朗は周囲をキョロキョロみた。廊下には生徒がいない。今なら、このキュンキュンする気持ちのままに動いても許される気がした。
「えいっ!」
凛太朗は酒井の脇から抱き着いた。
「は、はぁ⁉ 凛太朗?」
大きな酒井がビクリと震えた。その震えが抱き着いている凛太朗に伝わる。
シャツに染み込んだ酒井の匂いを吸いこんだ。涙が滲みそうなほど満足する自分がいる。本当はホームルームの時もこうしたかった。ずっと我慢していた。
「酒井ぃ……」
酒井に顔を埋めたまま呼んでみた。幸せで溶けてしまいそうだと思った。
酒井が凛太朗に腕を回す。包み込まれる感覚に頭がクラリとした。
「甘えんぼかよ、凛太朗」
小さな優しい声が耳に届く。
密着した身体から酒井の熱が侵入する。凛太朗の耳元に酒井の息が入り込む。身体の中に酒井が染み込むような錯覚がする。
――気持ちがイイ。もうちょっと、もうちょっとだけ、このままで……。
幸福感に酔いしれる満たされた時間だった。
「もう先輩の人使いの荒さよ!」
「マジ、それね~~」
突然、廊下に女子の声が響いて凛太朗は一気に目が覚めた。
バッと酒井から離れると、酒井は名残惜しそうに凛太朗を解放した。その切ない表情にドキリとする。最近の凛太朗はキュンやらドキリやら、感情が忙しい。
自分は情緒不安定なのかなぁ、と凛太朗は首を傾げた。
酒井と二人で下駄箱に行き、何となくこのまま帰るのは勿体ない気がした。帰りたくなくてソワソワする。わざとゆっくり靴を履いて、駅の本屋に行こうと誘おうかと考えていた。
「凛太朗、その、ミマツ文具いかね?」
同じようにゆっくり靴を履いていた酒井から声がかかった。
「あ、行こう! そうだ、えっと。消しゴム買いたいと思ったんだ」
内心の(やったぁ)という思いを抑えて平常心を心がけた。
それなのに酒井が「全てお見通し」と言わんばかりに下を向いて小さく笑った。凛太朗に悔しさと恥ずかしさが渦巻く。
「なん、何なんだよ!」
ムキになると酒井の笑いが大きくなった。
「いや、凛太朗が可愛くて」
「か、可愛い? おい、僕の事をバカにするな」
「違うって。幸せって事。もう、二度とこんな時間は過ごせないと思っていたから」
凛太朗はハッとした。酒井を突き放した時期は、きっと酒井を苦しめた。途端に心のキュンもワクワクも消え去っていく。
「うん、ごめん」
真剣に謝った。謝る以外にどうにも出来ないと思ったから。
「あ、違う、そんなつもりじゃなかったんだ。今が幸せって事を言いたかっただけで。凛太朗、ごめん」
焦る酒井に申し訳なくて凛太朗は微笑んだ。
(もう二度と酒井を苦しめないように、酒井を大切にしよう)
凛太朗は心に誓った。
ミマツ文具で酒井とゆっくり高級シャープペンを眺めた。
消しゴムを買うと自分で言ったのに、買い忘れた事に帰宅してから気が付いた。
「酒井! 一緒に帰ろう」
「うん。凛太が学級委員の仕事終わったし、もう俺もリレー練習ないし、俺たち放課後何もなし、だな」
ははは、と笑う酒井と一緒に教室を出た。酒井が楽しそうに笑うから凛太朗も口を開けて笑った。酒井が嬉しいと凛太朗も嬉しい。
体育祭前の苦しかった全てが嘘のようだ。酒井の隣に並ぶだけで顔が綻ぶ。
「凛太朗、ご機嫌」
「まぁね。そうだ、酒井。ありがとう」
「何が?」
しらばっくれているが、きっと分かっているはずだ。チラリと酒井を見上げれば頬が赤くなっている。
酒井らしいと思い凛太朗はプハッと吹き出してしまった。
「何だよ!」
紅い顔のままで恥ずかしそうに凄んでも更に笑いを誘うだけだ。
「いや、あはは。だって。分かってんじゃん。ホームルーム」
「あ~~、いや、あれは当然と言うか……」
あんなに堂々とホームルームで発言したくせに、凛太朗には赤い顔でしどろもどろの説明をする。そんな酒井に胸の奥がまたキュンとする。
凛太朗は周囲をキョロキョロみた。廊下には生徒がいない。今なら、このキュンキュンする気持ちのままに動いても許される気がした。
「えいっ!」
凛太朗は酒井の脇から抱き着いた。
「は、はぁ⁉ 凛太朗?」
大きな酒井がビクリと震えた。その震えが抱き着いている凛太朗に伝わる。
シャツに染み込んだ酒井の匂いを吸いこんだ。涙が滲みそうなほど満足する自分がいる。本当はホームルームの時もこうしたかった。ずっと我慢していた。
「酒井ぃ……」
酒井に顔を埋めたまま呼んでみた。幸せで溶けてしまいそうだと思った。
酒井が凛太朗に腕を回す。包み込まれる感覚に頭がクラリとした。
「甘えんぼかよ、凛太朗」
小さな優しい声が耳に届く。
密着した身体から酒井の熱が侵入する。凛太朗の耳元に酒井の息が入り込む。身体の中に酒井が染み込むような錯覚がする。
――気持ちがイイ。もうちょっと、もうちょっとだけ、このままで……。
幸福感に酔いしれる満たされた時間だった。
「もう先輩の人使いの荒さよ!」
「マジ、それね~~」
突然、廊下に女子の声が響いて凛太朗は一気に目が覚めた。
バッと酒井から離れると、酒井は名残惜しそうに凛太朗を解放した。その切ない表情にドキリとする。最近の凛太朗はキュンやらドキリやら、感情が忙しい。
自分は情緒不安定なのかなぁ、と凛太朗は首を傾げた。
酒井と二人で下駄箱に行き、何となくこのまま帰るのは勿体ない気がした。帰りたくなくてソワソワする。わざとゆっくり靴を履いて、駅の本屋に行こうと誘おうかと考えていた。
「凛太朗、その、ミマツ文具いかね?」
同じようにゆっくり靴を履いていた酒井から声がかかった。
「あ、行こう! そうだ、えっと。消しゴム買いたいと思ったんだ」
内心の(やったぁ)という思いを抑えて平常心を心がけた。
それなのに酒井が「全てお見通し」と言わんばかりに下を向いて小さく笑った。凛太朗に悔しさと恥ずかしさが渦巻く。
「なん、何なんだよ!」
ムキになると酒井の笑いが大きくなった。
「いや、凛太朗が可愛くて」
「か、可愛い? おい、僕の事をバカにするな」
「違うって。幸せって事。もう、二度とこんな時間は過ごせないと思っていたから」
凛太朗はハッとした。酒井を突き放した時期は、きっと酒井を苦しめた。途端に心のキュンもワクワクも消え去っていく。
「うん、ごめん」
真剣に謝った。謝る以外にどうにも出来ないと思ったから。
「あ、違う、そんなつもりじゃなかったんだ。今が幸せって事を言いたかっただけで。凛太朗、ごめん」
焦る酒井に申し訳なくて凛太朗は微笑んだ。
(もう二度と酒井を苦しめないように、酒井を大切にしよう)
凛太朗は心に誓った。
ミマツ文具で酒井とゆっくり高級シャープペンを眺めた。
消しゴムを買うと自分で言ったのに、買い忘れた事に帰宅してから気が付いた。
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