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Ⅴ リバウンド対策☆
⑤
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「てゆーか、十一月なのにぃ、暑いし」
「あ、じゃあ、僕が見てくるから、学校に戻って良い、けど」
できれば理香子とは一緒に居たくなくて必死になってしまった。
「はぁ? せっかくここまで歩いたのにぃ?」
反論されて凛太朗は俯いた。もう何も言えないと思った。十五分ほど歩けば到着するはずの百均がとても遠くに思えた。
「あのさぁ」
「……はい」
「つーか、固いし」
「……は、はい」
「だから、ごめん、ね」
思いがけない理香子の言葉に凛太朗は立ち止まった。
「あん時ぃ、風見君が、ちょっと羨ましいとか思ったわけ。酒井君といつも一緒だし。ちょっとテンション上がってぇ、言い過ぎたしって思ってて」
斜め前を歩く理香子の表情は分からなかった。
「あのあと、酒井君に、めっちゃ怒鳴られて。女怒鳴るとか有りえんし。もう酒井君もクソだって思ったんだけど、こないだのホームルームさぁ、結構感動して」
凛太朗は理香子の話に耳を傾けた。酒井が怒鳴ったとはどういう事だろう。
「高校なんてクソだと思ってたの。けど、なんか青春してんじゃん、とか思って。結構、いいじゃん、とか?」
理香子が大きく呼吸をして、凛太朗を振り向いた。
「外見男ばっか捕まえるのが、ちょっとぉ、アホらしくなって」
理香子が軽く笑った。
「文化祭は、ちゃんと参加してみよっかなって思ったって話しぃ」
理香子の話の落ちがよく分からずに凛太朗は首を傾げた。理香子の気持の変化が掴めないが、文化祭に参加する気が起きたなら良い事だ。
「あ、うん。文化祭楽しいといい、よね」
理香子がコクリと頷いた。
「あとさぁ、酒井君みたいに、ブチ切れる人って初めて会ったんだよね。クソだって思ったのに、けっこう気になってさぁ」
この言葉が槍のように凛太朗の心に刺さった。
――理香子は、酒井を本気で好きになったのではないか?
ゾワリとする不安が凛太朗に生まれた。
「ちな、酒井君って好きな人、いるのかなぁ?」
理香子の言葉にドキッとした。酒井は好きな人がいると夏休みに言っていた。酒井の好きな人って誰なのだろう。
考えるとどうして良いのかわからない不安が押し寄せた。
『凛太朗だけだ』
そう言う酒井の強い視線と言葉が脳裏に過る。
凛太朗は近くを歩く理香子を見た。まさにイマドキ女子高生の風貌だ。
そんな彼女が酒井と歩いたらお似合いのカップルだ。酒井が彼女をお姫様抱っこして、頬を染めた微笑みを向けるのを想像すると心がズンと沈んだ。凛太朗は下を向いて首をフルフルと横に振った。
「そっかぁ。仲良くても、そこまで知らないよね。ねぇ、今度聞いてみてくれない?」
理香子の言葉を断ることができず、凛太朗は快諾できなかった。
「でも、聞けるかわかんない。話してくれないかも、だし」
「それでもいいから、ね?」
理香子は押しが強くて苦手だなぁと凛太朗は思った。
百均では特に買い物はせず物の写真をスマホで撮影した。
「あたしも風見君と同じ買い出しチームに入れてもらお。そうすれば酒井君が近くに来るし」
楽しそうに話す理香子に返す言葉が見付からず、凛太朗は下を向いた。
凛太朗は正直困ってしまった。理香子は積極的な陽キャ女子だ。凛太朗は苦手意識があって緊張する。
マイペースに歩く理香子の後ろを凛太朗はとぼとぼ歩いた。
凛太朗の携帯がブルッと震えて、確認するとラインが来ていた。
『買い出し? お疲れ。もう戻る?』
酒井からのラインに安堵して大きく呼吸をした。
『なんでか、理香子さんと二人なんだ』
返信をすると直ぐに酒井からラインが来た。
『二人? なんで? すぐ迎えに行く! いまどこ?』
ラインから酒井の焦りが見えた。
『もう正門につくよ』
返信をして携帯をしまった。学校内で堂々とスマホをいじっていたら先生に注意される。
「凛太朗!」
下駄箱で息を切らした酒井に会った。一緒に靴を履き替えていた理香子が酒井に反応した。
「あ、酒井君だぁ。あたしたち仲良く百均行ってきたんだぁ。ね」
「は? 何考えてんだ?」
怖い顔をした酒井が理香子を睨んだ。
「まって、本当に仲直りしたの。マジだってぇ。ね、風見君」
「凛太朗?」
二人の視線に凛太朗は困りながらコクリと頷いた。仲直り、と言われると違う気がするが。
酒井が凛太朗の肩をグイッと抱いた。急な接触に凛太朗の心がドキリとする。
「凛太朗は、俺のだから」
それを見て理香子が吹き出したように笑う。
「仲良しだね、可愛い。あたし、風見君には興味ないし」
理香子の『酒井君には興味があるんだ』という心が見えてチクリと凛太朗の胸が痛んだ。
酒井は怪訝な顔をして凛太朗の背を押した。その理香子から守ってくれるような素振りにホワリと安堵感が生まれる。
「教室に行こう。暑かった?」
「まって、あたしも行くし」
校舎内を三人で歩いた。
いつもなら酒井と凛太朗だけの時間なのに、他人がいる事にモヤモヤした。何となく理香子が気になった。
「凛太朗、百均で何か買った?」
酒井の問いに凛太郎が答える前に理香子が反応した。
「それがぁ、買いに行ったんじゃ無くて、下調べ的な?」
酒井が『お前に聞いてない』と言い出しそうな顔をした。険悪な空気になりそうで慌てた。
「そ、そうなんだよ。えと、写真撮ってきた」
酒井は「へぇ」とだけ言った。それ以上会話は続かなかった。
教室に入ると理香子はさすが陽キャと言えるコミュ力で、あっという間に買い出しチームに参加になった。
凛太朗は胸の内がモゾモゾした。買い出しチームから外れたいと思った。
「あ、じゃあ、僕が見てくるから、学校に戻って良い、けど」
できれば理香子とは一緒に居たくなくて必死になってしまった。
「はぁ? せっかくここまで歩いたのにぃ?」
反論されて凛太朗は俯いた。もう何も言えないと思った。十五分ほど歩けば到着するはずの百均がとても遠くに思えた。
「あのさぁ」
「……はい」
「つーか、固いし」
「……は、はい」
「だから、ごめん、ね」
思いがけない理香子の言葉に凛太朗は立ち止まった。
「あん時ぃ、風見君が、ちょっと羨ましいとか思ったわけ。酒井君といつも一緒だし。ちょっとテンション上がってぇ、言い過ぎたしって思ってて」
斜め前を歩く理香子の表情は分からなかった。
「あのあと、酒井君に、めっちゃ怒鳴られて。女怒鳴るとか有りえんし。もう酒井君もクソだって思ったんだけど、こないだのホームルームさぁ、結構感動して」
凛太朗は理香子の話に耳を傾けた。酒井が怒鳴ったとはどういう事だろう。
「高校なんてクソだと思ってたの。けど、なんか青春してんじゃん、とか思って。結構、いいじゃん、とか?」
理香子が大きく呼吸をして、凛太朗を振り向いた。
「外見男ばっか捕まえるのが、ちょっとぉ、アホらしくなって」
理香子が軽く笑った。
「文化祭は、ちゃんと参加してみよっかなって思ったって話しぃ」
理香子の話の落ちがよく分からずに凛太朗は首を傾げた。理香子の気持の変化が掴めないが、文化祭に参加する気が起きたなら良い事だ。
「あ、うん。文化祭楽しいといい、よね」
理香子がコクリと頷いた。
「あとさぁ、酒井君みたいに、ブチ切れる人って初めて会ったんだよね。クソだって思ったのに、けっこう気になってさぁ」
この言葉が槍のように凛太朗の心に刺さった。
――理香子は、酒井を本気で好きになったのではないか?
ゾワリとする不安が凛太朗に生まれた。
「ちな、酒井君って好きな人、いるのかなぁ?」
理香子の言葉にドキッとした。酒井は好きな人がいると夏休みに言っていた。酒井の好きな人って誰なのだろう。
考えるとどうして良いのかわからない不安が押し寄せた。
『凛太朗だけだ』
そう言う酒井の強い視線と言葉が脳裏に過る。
凛太朗は近くを歩く理香子を見た。まさにイマドキ女子高生の風貌だ。
そんな彼女が酒井と歩いたらお似合いのカップルだ。酒井が彼女をお姫様抱っこして、頬を染めた微笑みを向けるのを想像すると心がズンと沈んだ。凛太朗は下を向いて首をフルフルと横に振った。
「そっかぁ。仲良くても、そこまで知らないよね。ねぇ、今度聞いてみてくれない?」
理香子の言葉を断ることができず、凛太朗は快諾できなかった。
「でも、聞けるかわかんない。話してくれないかも、だし」
「それでもいいから、ね?」
理香子は押しが強くて苦手だなぁと凛太朗は思った。
百均では特に買い物はせず物の写真をスマホで撮影した。
「あたしも風見君と同じ買い出しチームに入れてもらお。そうすれば酒井君が近くに来るし」
楽しそうに話す理香子に返す言葉が見付からず、凛太朗は下を向いた。
凛太朗は正直困ってしまった。理香子は積極的な陽キャ女子だ。凛太朗は苦手意識があって緊張する。
マイペースに歩く理香子の後ろを凛太朗はとぼとぼ歩いた。
凛太朗の携帯がブルッと震えて、確認するとラインが来ていた。
『買い出し? お疲れ。もう戻る?』
酒井からのラインに安堵して大きく呼吸をした。
『なんでか、理香子さんと二人なんだ』
返信をすると直ぐに酒井からラインが来た。
『二人? なんで? すぐ迎えに行く! いまどこ?』
ラインから酒井の焦りが見えた。
『もう正門につくよ』
返信をして携帯をしまった。学校内で堂々とスマホをいじっていたら先生に注意される。
「凛太朗!」
下駄箱で息を切らした酒井に会った。一緒に靴を履き替えていた理香子が酒井に反応した。
「あ、酒井君だぁ。あたしたち仲良く百均行ってきたんだぁ。ね」
「は? 何考えてんだ?」
怖い顔をした酒井が理香子を睨んだ。
「まって、本当に仲直りしたの。マジだってぇ。ね、風見君」
「凛太朗?」
二人の視線に凛太朗は困りながらコクリと頷いた。仲直り、と言われると違う気がするが。
酒井が凛太朗の肩をグイッと抱いた。急な接触に凛太朗の心がドキリとする。
「凛太朗は、俺のだから」
それを見て理香子が吹き出したように笑う。
「仲良しだね、可愛い。あたし、風見君には興味ないし」
理香子の『酒井君には興味があるんだ』という心が見えてチクリと凛太朗の胸が痛んだ。
酒井は怪訝な顔をして凛太朗の背を押した。その理香子から守ってくれるような素振りにホワリと安堵感が生まれる。
「教室に行こう。暑かった?」
「まって、あたしも行くし」
校舎内を三人で歩いた。
いつもなら酒井と凛太朗だけの時間なのに、他人がいる事にモヤモヤした。何となく理香子が気になった。
「凛太朗、百均で何か買った?」
酒井の問いに凛太郎が答える前に理香子が反応した。
「それがぁ、買いに行ったんじゃ無くて、下調べ的な?」
酒井が『お前に聞いてない』と言い出しそうな顔をした。険悪な空気になりそうで慌てた。
「そ、そうなんだよ。えと、写真撮ってきた」
酒井は「へぇ」とだけ言った。それ以上会話は続かなかった。
教室に入ると理香子はさすが陽キャと言えるコミュ力で、あっという間に買い出しチームに参加になった。
凛太朗は胸の内がモゾモゾした。買い出しチームから外れたいと思った。
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