猫のハルタと犬のタロウ

小池 月

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大切な存在

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<大切な存在>
 僕の家に行った。僕の部屋に急ぐ。二人きりだ。虎太郎君の胴に腕を巻き付ける。少し汗の滲む首筋を、ペロリと舐める。タロ、生きている。背伸びして、もう一度首から耳を舐め上げる。耳を少し噛んで引っ張る。タロが笑う。
「その癖、ハルだね」
「にゃぁ」
猫の鳴き声を真似てすり寄ると、あはは、と笑う。僕を抱き上げベッドに運ぶタロ。また深いキス。キスしているだけで嬉しくて涙が流れる。僕のタロ。やっと会えた。舌と舌を合わせて、舐めあう。タロ、気持ちいいね。
「ハル、やっとちゃんと触れ合える。戻ってきてくれて、ありがとう。もう二度と離れたくない。ハルも春人も、好きだ。愛してる」
「うん。僕も。虎太郎君が、タロが大好き」
また一緒にいられる幸せ。同じ気持ちを共有できる幸せ。神様ありがとう。僕とタロを会わせてくれて、ありがとう。

 お互いが愛おしくて、存在を確認したくて裸になってあちこち舐めあった。手足の青あざを「痛くない? 可哀そうに」と丹念に舐められる。猫の時と舐められる感覚の違いに戸惑った。優しさがくすぐったい。タロも思ったのと違うねって笑う。特に胸の突起をタロがいじると全身がビクビク小さく反応してしまう。猫の時には眠たくなる気持ちよさだったのに、人間の気持ちいいは心臓がドクドク鳴って背筋がぞくぞくする。
虎太郎君の身体を見る。筋肉質で骨格が大きい。生まれ変わっても僕が小さいサイズなのは変わらない事に笑える。お互いの勃起しているモノ。大人と子供だよ。そんなとこまで猫と犬の頃じゃないか。
そっと虎太郎君のモノを触る。
「ハル……」
吐息のようなタロの声。僕が気持ち良くしてあげる。姿勢を変えてタロのモノを手でこする。太くてそそり立っている。こんなところも男らしい。先端の割れ目が愛おしい。チュウっとキスをすると「んっ」とタロの声。そのまま口で味わう。あぁ、タロだ。全部含めないけれどタロを味わいたくて嘗め回す。犬の時と全然違う。形も味も。ふふっと笑いが漏れる。
 タロに引き上げられて胸に乗せられる。僕の起ってるモノが、タロの腹筋に擦れる。少し腰を動かしてしまう。頬をすり寄せて聞かれる。
「なに楽しんでいたの? 尻尾があったらゆらゆら可愛く揺れていそうだったよ」
「犬のタロのと、ちょっと違うから」
「あ、それ俺も知りたいな」
あっという間に組み敷かれる。僕の身体を大きな手で撫でながら僕の起立をぺろりと舐める。腰がビクリと揺れる。
「腰が細い。色が白くて綺麗な肌。体毛薄いね。確かに猫のハルと違う。ここの毛も茶色。髪の毛も目も同じ色。ココ、ちゃんと剥けているね。可愛いサイズだ。玉もしっかり袋に入っている。うん。いい張り具合。ココは、キュッと閉じている」
舐めていじりながら喋らないで! 息が、口の動きがダイレクトに響く! 腰が揺れてしまう。気持ちよすぎる! 必死で声を押し殺しても時々高い声が漏れてしまう。腰を突き出す動きが止められない。心臓の音が耳元で聞こえる。急に刺激が止まる。 
「ハンドクリームとかオイルないかな? 唾液でもいいけど、油系の方が楽かも」
「え? そうなの? あ、ちょっと待っていて」
冬に手荒れに使ったほぼ油分といっていた半透明の軟膏をとりだす。
「コレ、使えるかな?」
「あ、いいね」
目を合わせて笑いあう。

 裸のまま抱きしめ合う。さっきまで舐めあった起立が肌に触れ合う。温かい。幸せに満たされる。愛しいタロ。伸びあがりタロにキスをする。大きな身体が僕を包み込む。そのまま後ろをほぐされる。快感と期待に全身が震える。身体の中をゆっくり触られる独特の感覚。拓かれていく、ありえない違和感。
 途中一回達してしまって気が緩んでいる間にタロが入ってきた。猫の時と同じ体位。大きさと圧迫に受け入れた場所が限界を訴えて我慢できない悲鳴を上げた。上に逃げをうつ身体を引き寄せられる。混乱と苦痛と快感がごちゃ混ぜになって頭がチカチカ点滅する。何度もタロを呼んだ。受け入れるモノの大きさにタロの思いを感じた。嬉しくて気持ち良くて涙が流れた。
 僕の中に、おいで。全部受け止めるよ。愛おしいタロ。大好きだよ。僕の全てでタロを抱き締めていたい。そう思いながら、いつの間にか意識が飛んでいた。

 「あ、起きた? 大丈夫?」
「うん。何時?」
服、着ている。身体拭いてくれたんだ。綺麗になっている。
「今、十七時。洗面所から勝手にタオル借りちゃったよ。適当に服もだしたけど良かった?」
「うん。大丈夫。ありがとう。十八時過ぎまで親帰ってこないからシャワー浴びちゃおう」
起き上るのに一苦労してタロに支えられながら一緒にシャワーを浴びた。すっきりして部屋に戻って互いの手や腕を撫で合う。タロの膝の上に入り厚い胸板に身を預ける。幸せ。すぐに眠れる。
「おっと、ハル、寝ないでね。さすがにこの姿勢じゃおばさんにビックリされる」
そりゃそうか、と笑う。
「タロは死んだ後も僕の傍にいたんだね」
「うん。ずっと見守っていたよ。見ているだけしかできなくて、ごめん」
「僕、独りじゃなかったね。ありがとう」
涙が流れる。ハルがタロに甘えている姿が見える。寄り添う二人を想い心が熱くなる。
ふと見上げると虎太郎君が泣いていた。その綺麗な涙を舐めとる。虎太郎君が僕の涙を舐めとる。ずっと一緒にいよう。お互いの心の声が聞こえた。


 「そうか。ハルト、思い出したんだな」
雅樹がポツリと言う。雅樹に、雅樹の思いには応えられないと伝えた。雅樹は苦しい時を支えてくれた。雅樹がいなくては乗り越えられない時もあった。伝えることに心が痛んだ。
「あの、雅樹は大切な存在だったんだ。上手く言えないけれど」
「いいよ。ハルトのその気持ちは友達としてなんだよ。薄々分かっていた。それに、ずっと前にもう吹っ切れていたんだ。俺はハルトの親友としてタロとハルを支えたいって思うようになったんだ。二匹の純粋な思いを知ったら張り合おうなんて思わないさ」
雅樹が僕を見て頭を下げる。
「ハルト、悪かった。ごめん」
「え? なんで? 雅樹、やめてよ」
すぐに頭を上げる雅樹。涙が滲んでいる。
「俺の中のケジメだ。お前に謝りたかった。許すとか考えなくていい。ただハルトとハルに心から謝罪したかった」
僕を見てニコリと笑う雅樹。
「ハルト、お前はハルを大切にして生きて行けよ。そして、俺たちは変わらず親友だ」
嬉しかった。友達を失わずにすんだ。雅樹は最高の友達だ。

<卒業>
 雅樹は都内の有名私立大学に合格した。さすが雅樹だった。僕とタロは隣県の公立大学に受かった。僕のレベルでは絶対困難なところだったけどタロとの二人暮らしのため必死に勉強した。
四月から大学生。卒業の悲しさと新生活への期待で感情が目まぐるしく動く。時々遊びに行く、と雅樹が言う。離れることがちょっと寂しい。
僕の横に虎太郎君。深い愛をくれる僕の愛しい存在。友達がいて恋人がいる。猫のハルに毎日話しかける。たくさん辛かったけれど、もう大丈夫だよ。愛のために必死に生きた猫のハルが人間の僕にその愛を託してくれたよね。この尊い愛を大切に繋いでいくよ。ハル、僕と一緒に生きていこうね。
ハルタ、タロウ、素敵な愛をありがとう。

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