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桃太郎 番外編②
好きかも、しれない《祐樹目線》
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「祐樹さー、桃に告白とかしないの?」
親友の唐突な発言に、俺は思わず飲んでいたジュースを吹き出した。部活が終わって一緒に帰っていたときだ。
本当に、一真の発言は意味が分からない。「うわっ、汚いな」と不満そうな声を漏らす一真に、俺はむせながらも何をいきなり、と聞き返した。
「いきなりじゃないよ? 前から気になってた」
「……何で、俺が」
告白とか、何で俺があいつにしなきゃいけないんだ。俺はあいつに苦労をかけられてる身であって。あいつからしたら、俺はただの“お供”であって。……ただの、お供で。
「まーいいけどね。お前がそれでいいなら」
そう言ってわざとらしく笑う一真に、胸がチクリと痛む。いや、騒つく。こいつは──何が言いたい。
「……お前、何なわけ?」
「言ったじゃん? お供その一」
「……そういうことじゃ……あーもういいよ」
俺はイライラしながら頭を掻くと、前を歩く一真に並ぶ。こいつは、そうやっていつも俺が欲しい答えをよこさない。わけがわからない。数学みたいに公式を当てはめれば答えが出ればいいのに。
「好きでしょ? 桃のこと」
ぐ、と喉が鳴る。答えづらい質問ばかりしてくる。俺はどう答えればいいんだよ。──好きだ、と?
「……お前はどうなんだよ」
うまく自分から話題をそらしたつもりだった。しかし、言ってから気がつく。一真が、「桃を好きだ」と言ったら、俺はどうするんだ……?
「俺? うん、好きだよ?」
あっさりと返されて、俺は眉間に皺を寄せた。だから、その“好き”は。
イラついて、ふと思う。何で俺はイラついてるんだろう。
「で、告白しないの?」
戻った話題に、肩を落とす。何で戻った。お前は、何がしたいんだ。
「見ててもどかしいから、お前。さっさとどうにかなってほしい。うまくいくにしても、玉砕するにしても」
そう言って、一真は笑った。玉砕……その一言にドキリとした。いや、玉砕も何も、俺は──。
もんもんと考えているうちに、一真はすたすたと歩いていってしまっていた。俺の、桃に対する気持ちの答えは──?
* * *
ある日のことだ。自販機の前で、桃にばったりとあった。桃は一真に買ってもらったジュースを片手に、ご機嫌だ。……ジュースぐらいで、大げさな。俺は会話をする二人を放って、呆れながら自分の飲み物を買っていた。また下らない会話してやがるな。
あぁ、そうだ。一真の分の、お茶──。
「じゃあ」
「何?」
「桃を拘束して、離したくない」
──っ!
耳を疑った。思わず弾けるように二人を見ると、愛しそうに桃を見ながら、指先に髪を絡める一真が目に入った。
──やめろ!
俺はとっさに、持っていたお茶を突き出した。
見ていたくなかった。二人を引き剥がしたかった。
「……あぁ、買ってくれたの? ありがとう」
何とも淡々とした声で言う一真を、ずるずると引きずっていく。
畜生。畜生。畜生。あぁもう、わかった。わかってしまった。答えは出た。
一真が桃に触れているのはムカつく。一真が桃を好きだと言うのがムカつく。他の奴にへらへらしてる桃がムカつく。さっき──俺が一真だったらと、一真が羨ましいと思った俺がムカつく。
今、こんなにも苛立っているのは、やっぱり。俺は、桃が好き。……かも、しれない。
(C)確かに恋だった
親友の唐突な発言に、俺は思わず飲んでいたジュースを吹き出した。部活が終わって一緒に帰っていたときだ。
本当に、一真の発言は意味が分からない。「うわっ、汚いな」と不満そうな声を漏らす一真に、俺はむせながらも何をいきなり、と聞き返した。
「いきなりじゃないよ? 前から気になってた」
「……何で、俺が」
告白とか、何で俺があいつにしなきゃいけないんだ。俺はあいつに苦労をかけられてる身であって。あいつからしたら、俺はただの“お供”であって。……ただの、お供で。
「まーいいけどね。お前がそれでいいなら」
そう言ってわざとらしく笑う一真に、胸がチクリと痛む。いや、騒つく。こいつは──何が言いたい。
「……お前、何なわけ?」
「言ったじゃん? お供その一」
「……そういうことじゃ……あーもういいよ」
俺はイライラしながら頭を掻くと、前を歩く一真に並ぶ。こいつは、そうやっていつも俺が欲しい答えをよこさない。わけがわからない。数学みたいに公式を当てはめれば答えが出ればいいのに。
「好きでしょ? 桃のこと」
ぐ、と喉が鳴る。答えづらい質問ばかりしてくる。俺はどう答えればいいんだよ。──好きだ、と?
「……お前はどうなんだよ」
うまく自分から話題をそらしたつもりだった。しかし、言ってから気がつく。一真が、「桃を好きだ」と言ったら、俺はどうするんだ……?
「俺? うん、好きだよ?」
あっさりと返されて、俺は眉間に皺を寄せた。だから、その“好き”は。
イラついて、ふと思う。何で俺はイラついてるんだろう。
「で、告白しないの?」
戻った話題に、肩を落とす。何で戻った。お前は、何がしたいんだ。
「見ててもどかしいから、お前。さっさとどうにかなってほしい。うまくいくにしても、玉砕するにしても」
そう言って、一真は笑った。玉砕……その一言にドキリとした。いや、玉砕も何も、俺は──。
もんもんと考えているうちに、一真はすたすたと歩いていってしまっていた。俺の、桃に対する気持ちの答えは──?
* * *
ある日のことだ。自販機の前で、桃にばったりとあった。桃は一真に買ってもらったジュースを片手に、ご機嫌だ。……ジュースぐらいで、大げさな。俺は会話をする二人を放って、呆れながら自分の飲み物を買っていた。また下らない会話してやがるな。
あぁ、そうだ。一真の分の、お茶──。
「じゃあ」
「何?」
「桃を拘束して、離したくない」
──っ!
耳を疑った。思わず弾けるように二人を見ると、愛しそうに桃を見ながら、指先に髪を絡める一真が目に入った。
──やめろ!
俺はとっさに、持っていたお茶を突き出した。
見ていたくなかった。二人を引き剥がしたかった。
「……あぁ、買ってくれたの? ありがとう」
何とも淡々とした声で言う一真を、ずるずると引きずっていく。
畜生。畜生。畜生。あぁもう、わかった。わかってしまった。答えは出た。
一真が桃に触れているのはムカつく。一真が桃を好きだと言うのがムカつく。他の奴にへらへらしてる桃がムカつく。さっき──俺が一真だったらと、一真が羨ましいと思った俺がムカつく。
今、こんなにも苛立っているのは、やっぱり。俺は、桃が好き。……かも、しれない。
(C)確かに恋だった
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