カボチャ頭と三角形

天乃 彗

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本編

03 カボチャの中身を知りました

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 納得なんて、するわけがない。あいつがサークルに入ってきてから俺はずっと、あいつのことが好きだったのだ。お嬢様育ちらしくて世間知らずで、ちょっとアホなとこが可愛くて、先輩先輩って俺のことを頼りにしてくれて。なんだかんだ俺の隣にいてくれるから、あいつも俺のことを実は好きなんだと思っていたのに。
 それをまさか。

「変態カボチャ野郎に負けるなんてっ……!」

 しかもそれが『初めての恋』と来たもんだ。それはつまりいままで俺のことなんとも思ってなかったってことだよな。俺がヘラヘラ勘違いしてただけで、俺は全くアウトオブ眼中だったってわけだよな。そんなことを思い知らされると、辛いとかそんな言葉じゃ言い表せない。

「かりんちゃんって抜けてるとこあるもんなぁ」
「カボチャ頭に恋ができるレベルで抜けてるなんてもんじゃないと思う」
「それな」

 俺の恋路を知っている友達、桃山は適当に相槌を打って笑った。こいつも俺たちと同じサークルに入ってるから、華鈴のこともよく知っている。

「あのふわふわ頭の目を覚まさせるにはどうしたらいいんだ俺は!?」
「仮にも好きな子をふわふわ頭って」

 桃山は苦笑を浮かべながらも否定はしない。あいつは誰もが認めるふわふわ頭なのだ。だから俺はあいつのことが放っておけなくて──いや、また話がそれるところだった。いまはそれどころじゃない。どうやってあいつにカボチャ頭を諦めさせるか! 

「ていうか、なんでそんなに焦ってんの。相手、身元不明の変なカボチャ頭なんでしょ」
「そう、なんだけどさ」

 この間カボチャ頭を見たとき、なんだか胸騒ぎがした。なんでかわかんないけど、なんか行動をおこさないと、「負けるかも」って思ったんだ。

「かりんちゃん、まだそのカボチャの中の人のこと知らないんでしょ?」
「だから困ってるんだろ!」
「いや、だったらさ、ハギがその店行って中の人の素顔見てくれば。お菓子配ってない日は普通に店の仕事してんじゃないの」
「あ」

 そうか。あの仮装集団の目的は客寄せなんだし、毎日毎日同じ奴が仮装してるわけでもないか。だったらカボチャが駅前にいない時を狙って、店に行けば……。

「そんで、不細工だったら、普通に写メ見せれば目が覚めるだろ」
「……ちょっと待て。仮にすげーイケメンだったらどうすんだ」
「そこは頑張れよ」

 頑張れと言われても。アウトオブ眼中代表の俺がどう頑張れと。そうは思ったが、口に出すと余計に凹みそうだからやめておいた。不必要に自分を痛めつけるのはよくない。ドゥ・ムモンの場所は覚えている。だけど、あそこは店の外装がやたらとオシャレで、普通の大学生である俺が気軽に入れるような場所では……。

「……桃山」
「分かったから上目遣いしないでくれる? 俺そういう趣味ないし普通に気持ち悪い」
「傷心の俺の傷を抉るなよ」

 何はともあれ、ついて来てくれるらしい。やはり持つべきものは友達である。


 * * *


 お互い次の時間が空きコマなので、その時間にドゥ・ムモンに潜入することにした。潜入と言っても、普通に買い物するふりをしてカボチャ頭を探すだけなんだけど。この間カボチャ頭がお菓子を配ってたのが夕方。いまは昼。必ずいるという保証はないが、確率は高いはずだ。あの身長だし、カボチャを被ってなくてもすぐに分かるだろうと鷹をくくった。
 駅を抜けて、歩くこと数分。そこにドゥ・ムモンというお菓子屋がある。白を基調とした西洋風の建物だ。大通り側はガラス張りになっていて、そこから少しだけ店内の様子がうかがい知れる。お菓子屋だけど、カフェ席も幾つかあるようだった。普段はちらりと横目で見て「いつ見ても高そうだなぁ」と思う位のその店に、入ろうとしている。外装からオシャレすぎてちょっと緊張する。

「あーあ、イケメンだったらどうしよ。ああ、顔中ニキビだらけのブサメンとかでありますように」
「性格悪すぎだろ! えーと、ほら! とりあえず中覗いてみる?」

 そう言って桃山はガラスを指差した。そうだな、とりあえず、敵を知るには店内の様子を……。桃山に促されるがまま、そっとそのガラス張りから中をそっと覗いてみた。──その瞬間だった。

「……!」

 がっつりと、店の人と目があった。俺は慌てて目をそらした。これは気まずい、かなり気まずい。いや、でも、そもそも、気まずいというか。

──あいつだ……! 

 身長からもう確定できる。体格も、あの時見たのと同じような。一瞬しか見れなかったけど、俺の全神経がそう言っている。あいつがカボチャ頭だ。いきなりターゲットとがっつり目が合うとか、ついてるんだかついてないんだかわかんねーし。ていうか、もう。

「……俺はもう神様なんて信じない」
「急にどうした」

 イケメンとか、反則じゃんかよ……。俺はヘナヘナとその場に座り込むほかなかった。
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