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本編
06 宣戦布告をされちゃいました
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「先輩先輩先輩っ!」
昼休みの時間に、嬉々としてこちらに向かってくる華鈴を見て、嫌な予感がしなくもなかった。いや、普段ならそっけない態度を見せつつも内心ウキウキなんだが、今日はそうもならない理由があった。あいつは、スマホを片手にこちらに走ってきたんだ。
「何」
不機嫌さMAXで返事をするも、華鈴に空気を読むことなんていう芸当が出来るわけがない。そのまま突進してきて、「これみてください!」とスマホを突きつけてきた。俺がそれを確認する前に、華鈴は興奮ぎみに言った。
「カボチャさんから連絡が来たんです!」
「……は!?」
──何だと!?
俺は鼻先に突きつけられた華鈴のスマホを奪うと、その画面を食いぎみに見る。LINEかと思ったらメールだった。短いアドレスから、無題のメール。本文はたったの一言──“カボチャです。”のみ。……なんだそりゃ!?
「……こんなの迷惑メールだ!」
「カボチャを名乗る迷惑メールなんて聞いたことがないですっ! 危なそうなURLもないじゃないですかっ! 本物ですよっ」
華鈴は膨れながら、慌てて俺からスマホを取り返した。ちくしょう、そうなる前にあんなメール消してやればよかった。華鈴がカボチャ頭に連絡を渡してから、そんなに日は経っていない。いきなり連絡先を渡されたのに連絡を寄越すって、それって……。
「私、嬉しくって! 早速昨晩お返事をしたためたんですけど、返ってこないんですよね。またお菓子を配ってらっしゃるんでしょうか……」
「知らん!」
華鈴の言葉なんか頭に入ってこない。イライラしながら返事をしたのに、やっぱり華鈴は空気を読んではくれなかった。
* * *
午後9時前近くなって、カボチャ頭──今はあれを被ってないから、宝条さんか──がやっと店から出てきた。クラス女子情報だと今日は閉店まで店にいるみたいだったから、俺はいても立ってもいられず、店の前で待ち伏せをするというストーキング行為に出た。相手が男じゃなかったら捕まってる。
宝条さんは俺の顔を見ても驚かなかった。店の戸締りを確認した後、ようやく俺に向き直った。
「……“サークルの先輩の萩原さん”、どうしたの」
「変な呼び方しないでください。そっちのが年上なんすから」
俺が眉を寄せて言うと、宝条さんは「あぁ」と小さく返事をした。
「メール、送りましたよね。華鈴に」
「……何でも君に筒抜けなんだな」
宝条さんは基本的に無表情な人らしい。今はカボチャ頭を被っていないのに、まるで表情が読めない。表情筋死んでるんじゃねーの、と思うくらいだ。
「宝条さんモテるらしいし、初めてじゃないですよね。連絡先渡されんのなんか。いいっすね、羨ましいっすよ。あれっすか。言い寄ってくる女の子にはみんなそうしてるんすか」
早口でまくし立てる。宝条さんは俺のちっちゃな煽りにまるで動じず、チラリと俺を見た。華鈴のあの喜びようを見たら、悔しくて仕方なかった。あんなイタズラみたいなたった一言の文面であんなに喜ぶのは、相手がこの人だからだ。
「そうなら是非ともやめてほしいっすねー。あいつ世間知らずなところあるから、悪い男に引っかかりやすいというか。遊びと本気の区別ついてないっていうか。だから宝条さんが遊びのつもりなら傷つくのあいつなんでやめてやってくださいよ」
ていうか、そうであれと思った。だったら俺は、あのカボチャはそういう奴だから諦めろって華鈴に言える。あのメールはふざけたお遊びだって。
「──メールを、」
宝条さんは、一語一語を丁寧に、言い聞かせるように言葉を紡ぎ始めた。早口でまくし立てる俺とは対照的に、あくまで冷静に。
「送ったのは、彼女が初めてだよ」
「……は?」
──今、何て。
俺がそう聞き返す前に、宝条さんはまた話し出す。
「確かに、君が言うように、連絡先を渡されるのは彼女が初めてではない。でも、こっちからメールを出したのは彼女が初めてだ」
「……どうして」
「どうしてって言われてもな」
宝条さんは小さく溜息をついて、俺を見下ろした。
「初めてだったんだよ。僕の顔を見て言い寄ってくる人はたくさんいたけど、僕の顔も名前も知らない人に言い寄られるのは」
「……っ!」
華鈴は、宝条さんの目に、どう映った? 顔目当てじゃない、純粋に自分の中身に好意をぶつけてくる、あの女の子が。
「だから、さ。萩原くん」
ドキリ、とした。“サークルの先輩の萩原さん”と呼ばれなくなった。
「僕も、遊びでも何でもないから」
そこで、俺はようやく気がついた。同じ土俵に立てた──否、立たされてしまったことに。
昼休みの時間に、嬉々としてこちらに向かってくる華鈴を見て、嫌な予感がしなくもなかった。いや、普段ならそっけない態度を見せつつも内心ウキウキなんだが、今日はそうもならない理由があった。あいつは、スマホを片手にこちらに走ってきたんだ。
「何」
不機嫌さMAXで返事をするも、華鈴に空気を読むことなんていう芸当が出来るわけがない。そのまま突進してきて、「これみてください!」とスマホを突きつけてきた。俺がそれを確認する前に、華鈴は興奮ぎみに言った。
「カボチャさんから連絡が来たんです!」
「……は!?」
──何だと!?
俺は鼻先に突きつけられた華鈴のスマホを奪うと、その画面を食いぎみに見る。LINEかと思ったらメールだった。短いアドレスから、無題のメール。本文はたったの一言──“カボチャです。”のみ。……なんだそりゃ!?
「……こんなの迷惑メールだ!」
「カボチャを名乗る迷惑メールなんて聞いたことがないですっ! 危なそうなURLもないじゃないですかっ! 本物ですよっ」
華鈴は膨れながら、慌てて俺からスマホを取り返した。ちくしょう、そうなる前にあんなメール消してやればよかった。華鈴がカボチャ頭に連絡を渡してから、そんなに日は経っていない。いきなり連絡先を渡されたのに連絡を寄越すって、それって……。
「私、嬉しくって! 早速昨晩お返事をしたためたんですけど、返ってこないんですよね。またお菓子を配ってらっしゃるんでしょうか……」
「知らん!」
華鈴の言葉なんか頭に入ってこない。イライラしながら返事をしたのに、やっぱり華鈴は空気を読んではくれなかった。
* * *
午後9時前近くなって、カボチャ頭──今はあれを被ってないから、宝条さんか──がやっと店から出てきた。クラス女子情報だと今日は閉店まで店にいるみたいだったから、俺はいても立ってもいられず、店の前で待ち伏せをするというストーキング行為に出た。相手が男じゃなかったら捕まってる。
宝条さんは俺の顔を見ても驚かなかった。店の戸締りを確認した後、ようやく俺に向き直った。
「……“サークルの先輩の萩原さん”、どうしたの」
「変な呼び方しないでください。そっちのが年上なんすから」
俺が眉を寄せて言うと、宝条さんは「あぁ」と小さく返事をした。
「メール、送りましたよね。華鈴に」
「……何でも君に筒抜けなんだな」
宝条さんは基本的に無表情な人らしい。今はカボチャ頭を被っていないのに、まるで表情が読めない。表情筋死んでるんじゃねーの、と思うくらいだ。
「宝条さんモテるらしいし、初めてじゃないですよね。連絡先渡されんのなんか。いいっすね、羨ましいっすよ。あれっすか。言い寄ってくる女の子にはみんなそうしてるんすか」
早口でまくし立てる。宝条さんは俺のちっちゃな煽りにまるで動じず、チラリと俺を見た。華鈴のあの喜びようを見たら、悔しくて仕方なかった。あんなイタズラみたいなたった一言の文面であんなに喜ぶのは、相手がこの人だからだ。
「そうなら是非ともやめてほしいっすねー。あいつ世間知らずなところあるから、悪い男に引っかかりやすいというか。遊びと本気の区別ついてないっていうか。だから宝条さんが遊びのつもりなら傷つくのあいつなんでやめてやってくださいよ」
ていうか、そうであれと思った。だったら俺は、あのカボチャはそういう奴だから諦めろって華鈴に言える。あのメールはふざけたお遊びだって。
「──メールを、」
宝条さんは、一語一語を丁寧に、言い聞かせるように言葉を紡ぎ始めた。早口でまくし立てる俺とは対照的に、あくまで冷静に。
「送ったのは、彼女が初めてだよ」
「……は?」
──今、何て。
俺がそう聞き返す前に、宝条さんはまた話し出す。
「確かに、君が言うように、連絡先を渡されるのは彼女が初めてではない。でも、こっちからメールを出したのは彼女が初めてだ」
「……どうして」
「どうしてって言われてもな」
宝条さんは小さく溜息をついて、俺を見下ろした。
「初めてだったんだよ。僕の顔を見て言い寄ってくる人はたくさんいたけど、僕の顔も名前も知らない人に言い寄られるのは」
「……っ!」
華鈴は、宝条さんの目に、どう映った? 顔目当てじゃない、純粋に自分の中身に好意をぶつけてくる、あの女の子が。
「だから、さ。萩原くん」
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「僕も、遊びでも何でもないから」
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