カボチャ頭と三角形

天乃 彗

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本編

07 デートの約束をしました

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 華鈴と宝条さんのメールのやりとりはそんなに頻繁ではなく、二、三日に一回くらいらしい。なんでそんなことを俺が知っているのかというと、華鈴が逐一俺に報告をしてきて、挙句アドバイスを求めてくるからだ。

「思うけど」

 昨晩のメールのやりとりの報告をされた後、俺は常々思っていた疑問を口にする。

「恋愛相談なんて、その辺の女友達にすればいいじゃんか。なんで俺なの」

 状況を知れるのはとても好都合だが、かと言ってこの幸せそうな華鈴の顔を見ているとやりきれない。気づいていて見せつけているんだとしたら華鈴は相当小悪魔だけど、その辺はどうなんだろう。

「何を言ってるのですか! 先輩のこと、とても頼りにしているからに決まっているじゃないですか!」
「……はぁ」
「私の知らないことをたくさん知っていて尊敬できるし、私がサークルに入った時からずっと私に親身にしてくださって、私、とっても感謝しているんですよ?」

 前者はたまたまだろうが、後者は下心でしかない。それを「感謝」の二文字で受け取られていたとすると、俺が今までしてきたこととは何だったのか、と思う。

「こんなこと相談できるの、先輩しかいないんです……」
「……」
「迷惑、でしたか……?」

 そんな、うるうるした目で見られたら。そんな言い方されたら。

「……まぁ、いいんだけどさ」
「……! 先輩、ありがとうございます! 大好きです!」

 大概甘いよな、俺も。華鈴にわかるようにわざとらしく溜息をついて、華鈴のことを睨みつけた。こいつは、「好き」を安売りしすぎだと思う。カボチャ頭にもすぐ告白しようとしたし、そんなの、誰だって勘違いする。メールのやりとりだって油断ならん。しばらくはアドバイスのふりをした監視を続けないといけないな、と思った。

「あのな、華鈴。こういうのは時間をかけるものだから」
「はい?」
「間違っても、カボチャに対して“好きです”とかそういう系のこと送るなよ」
「わ、わかりました!」

 あぁ……ハートの絵文字付きで「カボチャさん」と登録されたアドレスが憎らしい。俺のことは普通に「萩原先輩」のくせして。そんな恨み言を言ったところで、なんの解決にもならないことは、重々承知だ。


 * * *


「せせせせせせ先輩!!」

 華鈴の様子が違ったのは、その一週間くらい後だった。華鈴に釘を指してはいたが、カボチャに対しては釘はさせない。

「今度の日曜日、カボチャさんと一緒に出かけることになりました!」
「……はぁぁあ!?」

 思わず華鈴の携帯を奪い取る。そのメールの文面は相変わらず短文で、だがそこには確かに、『今度の日曜日、そこに行かないか』と書かれている。

「そこってどこだ!?」
「駅の東の自然公園ですっ……! あの、えと、休日の過ごし方のお話をしていてですね!?」

 穴があくほどその画面を見たが、その話の流れも、その文面も間違いなく、華鈴をデートに誘っているじゃないか。

「あのカボチャ……!」

 小声で悪態をついたのは、華鈴には聞こえていなかったらしい。

「わ、私っ、嬉しくって……先輩に相談する前に、思わず二つ返事で了承してしまいました……!」
「なんっ……」

 しかも、すでに手遅れときたもんだ。俺は頭を抱えた。その次のメールを見てみると、『じゃあ、日曜午前11時に自然公園の噴水前で』と書かれている。

「私、どうしたらいいのでしょう……!? 意中の方と出掛けるなんて、初めてなんです……!」

 頬をおさえながらオロオロとする華鈴を眺めながら、俺は必死に頭を働かせていた。

 日曜午前11時に自然公園の噴水前。
 日曜午前11時に自然公園の噴水前。
 日曜午前11時に自然公園の噴水前。

 脳内にその情報を叩き込んだ。華鈴が約束を取り付けてしまった以上、断れとも言えない。なら、どうしたらいいか。

「俺の話聞かずにした約束なんだから、たまには俺の力を借りず、やってこい」
「で、でも……!」
「大丈夫だから」

 何も大丈夫じゃない。世間知らずのこいつが普通にデートをするなんて、無理に決まっている。それでもアドバイスをしないのは、あわよくば失敗するように。これは華鈴に対する優しさだ。ほら、何事も失敗から学ぶっていうし、それに可愛い子には旅をさせよというし。──だが、万が一にも、何かが起きてしまわぬように。

「日曜午前11時に自然公園の噴水前だな?」
「はい……」
「遅れないようにしろよ?」

──そのデート、監視するしかないだろ! 

 俺の中の天使と悪魔が、満場一致で囁いた。
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