8 / 23
本編
08 デート当日になりました
しおりを挟む
「俺はそろそろ友人がストーキング行為で訴えられないか心配だよ」
日曜日、時計の針はもうすぐ午前11時をさそうとしている。俺は予定通り、華鈴と宝条さんのデートを監視するべく、植え込みから噴水前を凝視していた。双眼鏡も気分で用意した。俺の横でため息をつきながら桃山が言ったのを、俺は笑ってやり過ごす。
「とか言って、お前もノリノリじゃんかよ。訴えられたら、そんときはお前も道連れだ」
俺もだけど、桃山も普段はかけない伊達眼鏡をかけて『変装』している。この話を持ちかけた時から桃山はそっけない振りして楽しんでいるのだ。
「にしてもかりんちゃん、気合い入ってるな」
「そうなんだよなー……」
“意中の方と出かけたことがない”と華鈴は言っていたから、どんなもんかと思っていたけど、やっぱりそれなりにデートに対するイメージはあったらしい。いつもとはちょっと違う髪型で、いつもより可愛い化粧をして、やけに大きな荷物を抱えて、そわそわと辺りを見渡している。待ち合わせの時間より20分も早く、あいつはここに到着していた。
──楽しみにしてたんだろうな、宝条さんと出かけるの。
華鈴の様子からそれが見て取れて、チクチクと胸が痛んだ。
「あっちから誘ってきたんでしょ? 相当気合い入れて来るんだろうな」
「そうなんだよなー……」
先日宣戦布告をされた件は、桃山には言っていない。こっちが圧倒的不利なのはわかっているし、そのことを言ったら桃山は冷静に俺に「諦めろ」と言うだろうってわかっている。「カボチャ頭が華鈴をデートに誘った」っていう事実を伝えただけで、桃山は「お前やべぇじゃん」と言っていたから。やべぇのなんかわかってんだよ。だからこうして日曜にのこのことここにいるんじゃないか。
宝条さんはイケメンだ。女なんかよりどりみどりで、俺なんかよりかっこよくて、女に不自由はしないだろう顔つきをしていて。そんな人が、初めて女に言い寄るんだ。それになびかない女がいるのか。きっと、すげーオシャレをしてきて、すげーデートプランを用意してきて、華鈴なんか一発でメロメロにしちまうんだ。
華鈴が宝条さんに落とされていく様子を見るんだったら、おとなしく家にいた方が良かったかもしれない。
「なぁ……あの人、だよな」
桃山が、考え事をしていた俺の肩を揺すった。俺は慌てて桃山が指差す方向を見て──目を丸くする。
「……あれに、間違いないけど」
間違いない。間違いないけど、間違っている。
噴水前に向かって歩いてくる、目立つオレンジ。サイズが大きいから、歩くたびにグラグラ揺れる球体。それに気づいた華鈴が、ウキウキした顔で手を振るのが見えた。なんでそんなに普通な顔してるんだあいつは。そんな反応をするのはあいつだけだと、本気で思う。
「「……なぜ被ってきたし……」」
思わず桃山と声が重なった。宝条さんは──デートに、カボチャを被ってきたのだった。
日曜日、時計の針はもうすぐ午前11時をさそうとしている。俺は予定通り、華鈴と宝条さんのデートを監視するべく、植え込みから噴水前を凝視していた。双眼鏡も気分で用意した。俺の横でため息をつきながら桃山が言ったのを、俺は笑ってやり過ごす。
「とか言って、お前もノリノリじゃんかよ。訴えられたら、そんときはお前も道連れだ」
俺もだけど、桃山も普段はかけない伊達眼鏡をかけて『変装』している。この話を持ちかけた時から桃山はそっけない振りして楽しんでいるのだ。
「にしてもかりんちゃん、気合い入ってるな」
「そうなんだよなー……」
“意中の方と出かけたことがない”と華鈴は言っていたから、どんなもんかと思っていたけど、やっぱりそれなりにデートに対するイメージはあったらしい。いつもとはちょっと違う髪型で、いつもより可愛い化粧をして、やけに大きな荷物を抱えて、そわそわと辺りを見渡している。待ち合わせの時間より20分も早く、あいつはここに到着していた。
──楽しみにしてたんだろうな、宝条さんと出かけるの。
華鈴の様子からそれが見て取れて、チクチクと胸が痛んだ。
「あっちから誘ってきたんでしょ? 相当気合い入れて来るんだろうな」
「そうなんだよなー……」
先日宣戦布告をされた件は、桃山には言っていない。こっちが圧倒的不利なのはわかっているし、そのことを言ったら桃山は冷静に俺に「諦めろ」と言うだろうってわかっている。「カボチャ頭が華鈴をデートに誘った」っていう事実を伝えただけで、桃山は「お前やべぇじゃん」と言っていたから。やべぇのなんかわかってんだよ。だからこうして日曜にのこのことここにいるんじゃないか。
宝条さんはイケメンだ。女なんかよりどりみどりで、俺なんかよりかっこよくて、女に不自由はしないだろう顔つきをしていて。そんな人が、初めて女に言い寄るんだ。それになびかない女がいるのか。きっと、すげーオシャレをしてきて、すげーデートプランを用意してきて、華鈴なんか一発でメロメロにしちまうんだ。
華鈴が宝条さんに落とされていく様子を見るんだったら、おとなしく家にいた方が良かったかもしれない。
「なぁ……あの人、だよな」
桃山が、考え事をしていた俺の肩を揺すった。俺は慌てて桃山が指差す方向を見て──目を丸くする。
「……あれに、間違いないけど」
間違いない。間違いないけど、間違っている。
噴水前に向かって歩いてくる、目立つオレンジ。サイズが大きいから、歩くたびにグラグラ揺れる球体。それに気づいた華鈴が、ウキウキした顔で手を振るのが見えた。なんでそんなに普通な顔してるんだあいつは。そんな反応をするのはあいつだけだと、本気で思う。
「「……なぜ被ってきたし……」」
思わず桃山と声が重なった。宝条さんは──デートに、カボチャを被ってきたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる