カボチャ頭と三角形

天乃 彗

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本編

08 デート当日になりました

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「俺はそろそろ友人がストーキング行為で訴えられないか心配だよ」

 日曜日、時計の針はもうすぐ午前11時をさそうとしている。俺は予定通り、華鈴と宝条さんのデートを監視するべく、植え込みから噴水前を凝視していた。双眼鏡も気分で用意した。俺の横でため息をつきながら桃山が言ったのを、俺は笑ってやり過ごす。

「とか言って、お前もノリノリじゃんかよ。訴えられたら、そんときはお前も道連れだ」

 俺もだけど、桃山も普段はかけない伊達眼鏡をかけて『変装』している。この話を持ちかけた時から桃山はそっけない振りして楽しんでいるのだ。

「にしてもかりんちゃん、気合い入ってるな」
「そうなんだよなー……」

 “意中の方と出かけたことがない”と華鈴は言っていたから、どんなもんかと思っていたけど、やっぱりそれなりにデートに対するイメージはあったらしい。いつもとはちょっと違う髪型で、いつもより可愛い化粧をして、やけに大きな荷物を抱えて、そわそわと辺りを見渡している。待ち合わせの時間より20分も早く、あいつはここに到着していた。

──楽しみにしてたんだろうな、宝条さんと出かけるの。

 華鈴の様子からそれが見て取れて、チクチクと胸が痛んだ。

「あっちから誘ってきたんでしょ? 相当気合い入れて来るんだろうな」
「そうなんだよなー……」

 先日宣戦布告をされた件は、桃山には言っていない。こっちが圧倒的不利なのはわかっているし、そのことを言ったら桃山は冷静に俺に「諦めろ」と言うだろうってわかっている。「カボチャ頭が華鈴をデートに誘った」っていう事実を伝えただけで、桃山は「お前やべぇじゃん」と言っていたから。やべぇのなんかわかってんだよ。だからこうして日曜にのこのことここにいるんじゃないか。
 宝条さんはイケメンだ。女なんかよりどりみどりで、俺なんかよりかっこよくて、女に不自由はしないだろう顔つきをしていて。そんな人が、初めて女に言い寄るんだ。それになびかない女がいるのか。きっと、すげーオシャレをしてきて、すげーデートプランを用意してきて、華鈴なんか一発でメロメロにしちまうんだ。
 華鈴が宝条さんに落とされていく様子を見るんだったら、おとなしく家にいた方が良かったかもしれない。

「なぁ……あの人、だよな」

 桃山が、考え事をしていた俺の肩を揺すった。俺は慌てて桃山が指差す方向を見て──目を丸くする。

「……あれに、間違いないけど」

 間違いない。間違いないけど、間違っている。
 噴水前に向かって歩いてくる、目立つオレンジ。サイズが大きいから、歩くたびにグラグラ揺れる球体。それに気づいた華鈴が、ウキウキした顔で手を振るのが見えた。なんでそんなに普通な顔してるんだあいつは。そんな反応をするのはあいつだけだと、本気で思う。

「「……なぜ被ってきたし……」」

 思わず桃山と声が重なった。宝条さんは──デートに、カボチャを被ってきたのだった。
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