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本編
11 袋の中身を使いました
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* * *
両者一歩も引かず、と言ったところか。
俺が桃山と合流してからしばらく──ようやく食事を終えたカボチャ頭と華鈴は、同じ場所でずっと談笑(と言っても、笑っているのは華鈴だけだが)をしていた。チラリ、と買ってきた袋を見やる。これを使うには、まだだ。タイミングが大事なのだ。
「なぁ……ソレ、本当に使うの」
同じく買い物袋を見やった桃山に尋ねられる。愚問だ。使うつもりじゃなかったら、こんなもの買ってこない。やけになったのか、と聞かれたら、答えられない。そうなのかもしれないし、実はずっとそうしたかったのかもしれないし。
「当たり前。じゃなかったらこんなもん買わん」
「だろうな。……いつ?」
「そうだな……カボチャ頭が、席を外したら」
華鈴が一人になった時でないと、この道具は意味がない。だから早く席を外してもらわないと困るんだが。
「しかし、楽しそうだな、かりんちゃん。何話してるんだろ」
華鈴はにこにことしながらカボチャ頭にいろいろ語りかけている。画面を向けている様子がないから、おそらくカボチャ頭は話を聞いているだけだろう。時折、でかい頭をグラグラさせながら頷いて見せている。
「さぁな……。あいつのことだから、カボチャのこと質問責めにしてるんじゃねぇの」
あいつらが座っているのは、見通しのいいベンチだ。ここから動けば多分見つかってしまう。でも、会話の内容が聞けないのは悔しい。くそ、楽しそうにしやがって。普段から華鈴はおしゃべり好きで、俺といる時も話しっぱなしになることは多いけど、あんなに楽しそうな顔をしてたっけ。してなかった気もする。
ちょっとでも気分が沈むと、抜け出せないもんなんだな。少しでも希望を見出したいのに、底なし沼みたいに、足をとられて溺れて行くような。楽しかったはずの思い出も、暗く、深い底に沈んでしまうような。
「あ……あいつ、立ち上がったぞ」
桃山の声に、慌てて双眼鏡を構える。華鈴に向けて見せた画面には、『少し席を外す。』とだけ、書いてあった。華鈴はそれを見て頷いた。
そして、カボチャ頭はスタスタと歩き出した。向かった先には、確か公衆トイレがあったはずだ。多分、用を足すつもりなのだろう。
──今だ……!
俺は袋から慌てて例のものを取り出した。
「これは友人として言いたいんだけどさ」
「何!?」
「警察のお世話になるようなことはしないでくれよな」
そしたら全力で他人のふりするからな、という桃山の呟きを有難く受け止めながら、俺は手にしたソレを頭から被る。一気に視界が悪くなったが、気にしていられない。
「……努力はする!」
そして、俺は走り出した。
走るたびにガポガポと揺れる、カボチャ頭を煩わしく感じながら。
両者一歩も引かず、と言ったところか。
俺が桃山と合流してからしばらく──ようやく食事を終えたカボチャ頭と華鈴は、同じ場所でずっと談笑(と言っても、笑っているのは華鈴だけだが)をしていた。チラリ、と買ってきた袋を見やる。これを使うには、まだだ。タイミングが大事なのだ。
「なぁ……ソレ、本当に使うの」
同じく買い物袋を見やった桃山に尋ねられる。愚問だ。使うつもりじゃなかったら、こんなもの買ってこない。やけになったのか、と聞かれたら、答えられない。そうなのかもしれないし、実はずっとそうしたかったのかもしれないし。
「当たり前。じゃなかったらこんなもん買わん」
「だろうな。……いつ?」
「そうだな……カボチャ頭が、席を外したら」
華鈴が一人になった時でないと、この道具は意味がない。だから早く席を外してもらわないと困るんだが。
「しかし、楽しそうだな、かりんちゃん。何話してるんだろ」
華鈴はにこにことしながらカボチャ頭にいろいろ語りかけている。画面を向けている様子がないから、おそらくカボチャ頭は話を聞いているだけだろう。時折、でかい頭をグラグラさせながら頷いて見せている。
「さぁな……。あいつのことだから、カボチャのこと質問責めにしてるんじゃねぇの」
あいつらが座っているのは、見通しのいいベンチだ。ここから動けば多分見つかってしまう。でも、会話の内容が聞けないのは悔しい。くそ、楽しそうにしやがって。普段から華鈴はおしゃべり好きで、俺といる時も話しっぱなしになることは多いけど、あんなに楽しそうな顔をしてたっけ。してなかった気もする。
ちょっとでも気分が沈むと、抜け出せないもんなんだな。少しでも希望を見出したいのに、底なし沼みたいに、足をとられて溺れて行くような。楽しかったはずの思い出も、暗く、深い底に沈んでしまうような。
「あ……あいつ、立ち上がったぞ」
桃山の声に、慌てて双眼鏡を構える。華鈴に向けて見せた画面には、『少し席を外す。』とだけ、書いてあった。華鈴はそれを見て頷いた。
そして、カボチャ頭はスタスタと歩き出した。向かった先には、確か公衆トイレがあったはずだ。多分、用を足すつもりなのだろう。
──今だ……!
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「これは友人として言いたいんだけどさ」
「何!?」
「警察のお世話になるようなことはしないでくれよな」
そしたら全力で他人のふりするからな、という桃山の呟きを有難く受け止めながら、俺は手にしたソレを頭から被る。一気に視界が悪くなったが、気にしていられない。
「……努力はする!」
そして、俺は走り出した。
走るたびにガポガポと揺れる、カボチャ頭を煩わしく感じながら。
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